差別と闘い続けたウイルス研究者：共生ウイルス学の展開 第二回

ヨゴウヨシアキ @shingonkichi

㉖ さんに譲ってしまいました。さすがの杉本も続けての全長解析で、エネルギーを使い果たしたのでしょうか。閑話休題。近隣結合法で作成された全長系統樹を添付します（図10）。系統樹の特徴は以下の通り。⑴ MY亜型のJCVはproto-MY（祖先MY）から7つの亜系統（MY-a～-g）に分かれた。⑵ 二つの亜系統 pic.twitter.com/GApgjL6mw9

拡大

ヨゴウヨシアキ @shingonkichi

㉗（MY-a、-b）はクラスターを形成したが、他の亜系統は互いにクラスターを形成しなかった。⑶ 亜系統とヒト集団との関連性が認められた。MY-aは日本人由来の株のみを含み、MY-bは日本人と韓国人由来の株を含んだ。MY-c、-d、-e、-f、-gはそれぞれメキシコ先住民、米国先住民（ナバホ族）、グアテマラ

ヨゴウヨシアキ @shingonkichi

㉘ 先住民、ペルー先住民、カナダ先住民に由来する株を主に含んだ。〈MY亜型の分岐年代〉次に、MYの亜系統が分岐した時期を検討しました。日本人・韓国人に特異的なMY-b、ペルー先住民に特異的なMY-f、カナダ先住民に特異的なMY-gを代表として選び、お互いが分岐した時期を計算しました（図11）。 pic.twitter.com/CIf57di6J9

拡大

ヨゴウヨシアキ @shingonkichi

㉙ その結果、日本・韓国の亜系統（MY-b）とアメリカ先住民の亜系統（MY-f、MY-g）は1.9万年前に分岐し、アメリカ先住民のMY亜系統同士（MY-fとMY-g）は1.5万年前に分岐したことが示唆されました。このことから、東北シベリアに居住した、祖先MYを持つヒト集団が二つに分かれ、そのひとつが日本と韓国

ヨゴウヨシアキ @shingonkichi

㉚ に渡来し、他のひとつはベーリング陸橋を渡ってアメリカ大陸に進入したと推定されました。考古学的な研究によると、最初のアメリカ人が渡来した年代は1.5万年前～1.3万年前です。この年代はアメリカ先住民がもつMY亜系統の分岐年代（1.5万年前）とほぼ一致します。このように「最初のアメリカ人は

ヨゴウヨシアキ @shingonkichi

㉛ アメリカ大陸に進入した時点では祖先型MY（proto-MY）に感染していた。アメリカ大陸の各地に拡散し、定住した時から、JCVは各集団で集団特異的な進化が始まった」と推定できます。このような MY亜型の進化の筋書はイヌイットを除くアメリカ先住民に関する単一起源説と一致します。〈アメリカ先住民

ヨゴウヨシアキ @shingonkichi

㉜ に関する単一起源説とMY亜型〉アメリカ先住民に関する単一起源説は以下のシナリオを想定しています。「ベーリング陸橋を通過してアメリカ大陸に進入した最初のアメリカ人は、アメリカ大陸を南下して生活に適した場所に定住するも、集団の中の一部の者たちはより良き環境を求め、さらに南へと移動

ヨゴウヨシアキ @shingonkichi

㉝ した。このように、最初のアメリカ人は移動と定住を繰り返して、わずか数百年の内に南アメリカ南端まで到達した」アメリカ先住民の単一起源説は、彼らが代々受け継いできたJCVから支持を得たと言えます。

ヨゴウヨシアキ @shingonkichi

㉞ 〈文献〉 ⑴ Zheng HY, et al. 2003. Phylogenetic relationships among JC virus strains inJapanese/Koreans and Native Americans speaking Amerind or Na-Dene. J. Mol. Evol. 56:18-27. ⑵ National Geographic 日本語版、2015年1月号。

ヨゴウヨシアキ @shingonkichi

㉟７．東大病院泌尿器科医局時代　私は2003年3月末に医科研を定年退官し、北村唯一教授の好意により東大病院泌尿器科医局内のウイルス研究室にて2008年まで研究を続けました。その後、一年間は院生の学位論文の指導、及び総説論文の執筆のため在籍させてもらいました（教授は本間之夫先生）。泌尿器科

ヨゴウヨシアキ @shingonkichi

㊱ ではJCVに関する研究とBKVに関する研究の両方を行わせてもらい、北村先生には心からお礼申し上げます。JCVに関しては、医科研でやり残したことを全て行うことが出来ました。他方、BKVに関しては泌尿器科に来て初めて本格的に研究することが出来ました。〈講演ツアー〉2008年に泌尿器科教授に着任

ヨゴウヨシアキ @shingonkichi

㊲ された本間先生から、私がどのような研究をやっているかを知りたいから、教室のセミナで話してほしいと頼まれました。私は喜んでお引き受けしました。私は主に泌尿器科医局で行ったJCVとBKVに関する研究を話しましたが、原型仮説に関する私たちとE.O. Major（アメリカ）との論争についても紹介し

ヨゴウヨシアキ @shingonkichi

㊳ ました。私の話が終わったら、本間教授から、「若い人たちに、『俺もやってやる』と発奮させる良い話だった」と、思いがけないお褒めの言葉をいただきました。数日後、私は本間教授にお会いして、「先日、教授にお褒め頂いた私の話を日本各地の大学や研究所で講演しようと思います。旅費は講演先で

ヨゴウヨシアキ @shingonkichi

㊴ いただきますので、ご心配なく」と告げたら、「どうぞ、どうぞ」と許可してくれました。「講演ツアー」の一番は医科研でした。元上司の河岡教授に紹介教官になっていただき、2008年6月末の午後、同研究所の１号館２階会議室で私のセミナが開かれました。演題は「ウイルスと人類：共生関係に基づく

ヨゴウヨシアキ @shingonkichi

㊵ 新しいウイルス学の展開」でした。沢山の所員や院生の出席を得て、講演会は大盛況でした。この後、私は北海道大学、大阪大学と回って東京に戻り、国立感染症研究所で締めの講演をしました。〈謝辞〉続自叙伝の第一回と第二回にご登場いただいた方々に御礼申し上げます。 　　　　　　　　　　　完 pic.twitter.com/cI37R6KoAe

拡大