100物語

リリングミスト @RelyingMist

50ケゾリ. 最初は見間違いかと思ったが、鹿たちの群れの中に、1匹だけ骨だけで動いている鹿が居た。石場を駆け上るたびにカコカコと骨のなる音が響き、こちらを一瞥するとそのまま山中に消えて言った。その年は大変に寒くなったという

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51くまのぬいぐるみ. 娘が「くまのぬいぐるみが破れてしまった」と言うので、縫ってやろうと手に取ったのだが、破れた布の下にまた別の布があり、その布で綿が包んであるようだった。怪しく思って外側の布を全て剥いでみると白い布に赤い糸で縫われた別のぬいぐるみが出てきた

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52筋肉増強剤. 禁止されているステロイドで効果抜群とのことだが、瞼や、心臓、男性器なども筋肉量が増大してしまうため、突如破裂することがあるという

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53自転. 男は「世界で最も深くまで穴を掘った」というのだが、調査員が穴を調べようとすると「やめておけ」と静止した。インタビューの最中も、男はその場でぐるぐると回っていて「私のようになってしまうぞ」と言った。2週間後、男は酸欠になり死んでしまった

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54北極点. 数多くの探検隊が北極を探索したが、北極点につくと必ず何か生き物のようなものを見るらしい。その生き物は白く光っており、自分たちの周りを飛び回り、暖かい気持ちになるが、嵐が来るので一刻も早く帰らなければいけない

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55SNS. SNSで友人を探した。1972年に高校を卒業した私は見覚えのある名前を見つけて話しかけてみるが、どうも反応が良くない。誰も彼も「間違えているのではないか」と言う。丁度同窓会があるというので参加させてもらうことにしたが、級友と同姓同名の他人ばかりが集まっていた

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56ネジ. 筋肉が吊るような感じがしたので、首のあたりを確認すると、なにかネジのようなものが埋まっていた。ネジを引き抜こうとしたが、抜けそうにないので地道にくるくるとまわすと、ネジは30センチほど体に埋まっていた。このようなネジは特注でしか作られていないという

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57ゼンマイ. その竜巻は去年治まった場所から必ず発生し、辺りを巻き込みながら南に向かって移動し消える。そしてまた翌年になると、必ず消えた場所から発生するという。多くの学者が頭を悩ませたが、そのうちの1人は「これは植物ではないか」と主張している

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58上巻. シャーロキアンたちがお気に入りの作品について話していると１人の男性が「ここの文に"彼は怒った"とあるが、いったい誰のことなのか気になっていた。皆さんはどう解釈しているのですか？」と質問をした。しかし彼の本以外にはそんな文は見られなかった

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59下巻. シャーロキアンたちの間で「怒っている男」の存在が囁かれ始めると、ネットを通じて彼の他にも数人「"彼は怒った"という意味不明な文章を読んだことがある」という人が現れた。ただし、その文章が収録されているのは各々違う巻であり、書かれているのも、初版のごく一部だけだったという

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60王女. 王女は美貌で有名だったが、消して人前には出なかった。1度だけメディアの前に現れたことがあるが、人間とは思えないような態度で辺りをひっくり返し、警護人に連れていかれてしまった。噂によると、あの王女は猿の顔を人間に整形したものだという

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61有能な精神科医. ある富豪が「自分の記憶を消して欲しい」と言って来た。心理学者は彼をカウンセリングした後、交友関係を洗い、そのリストに載った人間を１人残らず殺して回った

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62ソフトタイプ. 色覚異常の青年が結膜炎を訴えて眼科にやってきた。眼科医が目玉をのぞくと黒目の隅の部分が膨らんでいた。そこを摘んだところブツリという音がしてめくれた。それ以来、彼は色弱が治ったが、めまいや頭痛を多く覚え、明るい場所を極端に嫌がるようになったという

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63新作. レンタルビデオ屋にはコーナーを分けるために「仕切り札」のような黒いケースが置かれているが、その中にビデオテープのようなものが入っていた。家に持ち帰り再生してみると運動会の映像が入っていたが、出てくる看板などが右から読むものばかりだった

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64ミグチ. 水面にくぼんだ場所を見つけたらそれがミグチである。ミグチは水の口であり、そこから呼吸をしている。呼吸をしているわけだから、くぼみに指などを入れてはいけない

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65人気俳優. それまで整形疑惑など全くなかった彼だが、人気絶頂になるとほぼ同時期に整形を始めた。彼がする整形は少し変わっていて、口を裂いたり、目を片方塞いでしまったりした。そして「そろそろ行かなければならない」と言って芸能界を引退し、その後の行方は家族すら知らないと言う

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66バク転. 突然向こうの方から走ってくる人が居た。皆が注目すると、どうやらバク転をしながらこちらに向かってきているようだった。皆がゲラゲラ笑う中、1人が「おかしくないか」と言ったのでよく見ると、上半身下半身ともに足の生き物が回転しながらこちらに向かってきているようだった

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67ティッシュ. 長野の山奥に言った時、木のうろから小さな紙のようなものが出ているのが見えた。面白半分にそいつを引き抜こうとしたところ、手にペタリと貼り付き、紫色の痣になってしまった。皮膚科に言ったところ、これは刺青のようなもので皮膚を移植しないと消えないらしい

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68百科事典. 古本屋で買った百科事典はページとページが貼り付くほどカビており、いつ頃のものかも分からなかった。奇妙だったのは、６００ページに渡って、ある１人の人物のことしか書かれていなかった。性格や家族構成はもちろんのこと、最後のページにはその人物の死に顔までが載っていた

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69国境. 「きけん。立ち入りきんし」と書かれた看板の後ろは有刺鉄線で囲まれており、中心にガラスのチューブのようなものがまっすぐ刺さっていた。ガラスのチューブの内側と、外側で何かが争っているというが、目には見えないらしい

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70祭囃子. 鉄棒で逆さになっていると祭り囃子が聞こえてきたので、くるりと回って辺りを見回したがどこにもそんな様子はなかった。再び逆さになると今度は先ほどよりも近くで聞こえたので、そのまま待っていると鳥の顔をした人間達が空中を地面のようにして歩き、僕に手を振って通り過ぎた

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71小さなボート. 毎年この時期になると涙が止まらなくなる。眼科にかかったところ「涙の出る原因は分からないが、目の中にボートが浮かんでおり、その上で人が寝ている」と言われた。大抵2週間ほどすると涙は引き、その頃になると彼も休暇を終えどこかへ帰ってしまうのだった

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72深海魚. インドネシア沖の深海から、まるで人間の手のような形をした生物がいくつも上がった。青白く、ウーパールーパーのように少し透けている。他にも人間の頭のようなものが上がることがあるらしく、食べると甘かった

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73シルクロードの住人. そこの人間達は１日中砂を撒いている。旅人達はその砂を踏んづけて進まなければならないのだが、砂を踏んづけた時に地面にめり込む人間が居るらしい。そういった人間は本来生きていてはいけない人間だそうなので、彼らはめり込んだ人間を襲って生活している

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74おりがみ. その神社の境内は鉄格子と金網が７か８重に張り巡らされており、中を伺うことはほとんど出来ない。中心にはおそらく白無垢が飾られており袖の辺りを辛うじて見ることが出来る。来月更にこの周りを鉄格子で囲む工事が行われるそうだ