クソあほ項羽と劉邦こばなし

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蕭「例えばこのほくろは、線からやや内側ですから数えていいかもしれません」 周「ああ」 蕭「しかし、このほくろは境界の外側にある様に見えませんか？」 樊「猟師らの境界破りなんざ殺されて当たり前だからな」 蕭「はい。ですから線の外側のものは数える訳にはいかないのですよ」 周「なるほど…」

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蕭「するとこの問題の論点は、線の太さの問題になるのか…」 盧「もしくは太もも境界線を広くとって数える幅を広げるか」 樊「それは戦だぞ、盧綰」 曹「無闇に戦線を拡大すると収集がつかなくなると思う」 夏(この話も既に収集がつかなくなっている気がするが) 劉「境界線を、俺が決めちゃ駄目か？」

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蕭何「駄目です」 劉邦「なんでだ！」 蕭「信用がないからに決まってるでしょ？」 劉「俺の身体だぞ！」 蕭「あんた一人で数えたほくろの数を、一体誰が信用すると思います？」 劉「！」 曹参「確かにそうだ」 樊噲「客観性がないほくろの数なんざ、聞きたくもねえや」 盧綰「話す奴の気もしれねえな」

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蕭「ああ〜いっそ劉邦の右足を切断させる罪状でっち上げて数えた方が楽かもしれないな」 劉「何恐ろしいこと言ってんだ！」 周勃「その案はいいかもしれんぞ、蕭何！」 劉「周勃!?」 周「実際に切断するのではなく、斬刑を受けると仮定した場合の位置を境界線にするのはどうだろう」 蕭「名案です！」

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曹「…秦の法ではこんな所をぶった斬るのか」 蕭「斬刑のみならず、刑罰のガイドラインが豊富で詳しくて助かります」 樊(…やっぱろくな国じゃねえよな) 盧(誰か滅ぼそうとする奴はいねえもんかね) 周(その後始末を誰がするんだよ) 劉「♪〜」 蕭「臭えんだよ！劉邦！」 劉「反撃ぐらいさせやがれ！」

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蕭何「秦の法を適用した結果、太ももの境界線はここからここまでです」 盧綰「…なあ、蕭何さん」 蕭「どうしました？」 盧「恐ろしい事に今更気づいちまったんだが」 樊噲「なんだよ盧綰！」 盧「ほくろを数える対象が太もも、ということはよ」 蕭「!?」 盧「左太ももも数えなくちゃいけないんじゃ」

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蕭「なぜこんな当たり前な事に気づかなかったのか！」 曹参「右太ももに密集しすぎていたのが裏目に出たな」 夏侯嬰「すると、兄いの両太ももを数えるのは初めてじゃねえか？」 樊「確かに今までは、キモすぎるくらい密集してる右太ももだけだった」 盧「婆が酒のあてに黒豆出しやがったの思い出した」

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周勃「やめろよ盧綰…」 樊「あの婆の黒豆二度と食えなくなっちまったじゃねえか…」 劉邦「どうしようもねえ奴らしか暮らしてねえよな、この界隈」 蕭・曹・樊・盧・夏・周「てめえが言うな」 劉「」 蕭「…思ったよりも、左太ももにほくろはないですね」 曹「体毛が鬱陶しいがな」 樊「もしや…」

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蕭何「どうしたんです？」 樊噲「静かに」 盧綰「？」 樊「！」 曹参「刃物？」 劉邦「何しやがるつもりだ、樊噲！」 樊「動くんじゃねえ！」 劉「」 樊「…」 夏侯嬰「体毛を剃って？」 樊「ほら出てきやがった！恥ずかしがり屋さんがよ！」 蕭「体毛に隠れているとは！」 樊「未開の地の探検隊だな」

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樊「…」 曹(刃物の匠だな) 盧(凄腕の屠殺屋だからな) 蕭(屠殺される家畜の方が穀潰しより役に立つのって皮肉だよ) 周勃(蕭何…) 樊「よし！全部剃った！」 蕭「恥ずかしがり屋さんは？」 劉「おめえまで何言ってやがるんだ…」 蕭「日頃あんたが脱毛しないからこうなったんだろ？」 劉「理不尽だ！」

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樊「これ」 蕭「七十一！」 夏「あと一つないか？」 樊「…」 曹「…もうないんじゃないか」 蕭「七十一か」 夏「中途半端な」 周「割り切れねえ」 蕭「なんかむかつきますから、一個増やしましょう」 劉「蕭何!?」 樊「墨でも注入するか？」 蕭「できます？」 樊「任せろ」 劉「もう勘弁してくれ！」

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劉邦…界隈で下品さにかけてこの男の右に出る者はいない。このアホ中年どもの運命やいかに。 樊噲…幼馴染。凄腕の屠殺屋で肉料理の名手。 盧綰…幼馴染。劉邦と産まれた日は違わないが、死ぬ時は別々でいい。 夏侯嬰…仲良し。御者の名手で評判。 周勃…仲良し。簀織。葬列の笛吹もできる。

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蕭何…凄腕役人のはずが、どうも劉邦らと根っこは同質な気がしてならない。 曹参…蕭何の同僚。やる気はないが仕事はできる。座右の銘は前例主義。 劉太公…劉邦おとん。アホ中年が悩みの種。 劉媼…劉邦おかん。アホ中年に泣かされた事数知れず。 婆…劉邦ズのいきつけ酒場の婆。黒豆が美味い。

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県令…何となくで赴任させられた土地がアホの吹き溜まりみたいな地域で心底うんざりしている気の毒な人。

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張良「…」 爺「！」 張「…」 爺「おい小僧」 張「あ？」 爺「拾え」 張「…」 爺(ほう) 張「ほれ」 爺「履かせろ」 張「あ？」 爺「…」 張「くさっ」 爺「ﾁｯ!」 張「…」 爺「！！」 張「あ？」 爺「拾え」 張「くさっ」 爺「」 張「おらよ」 爺「履かせろ」 張「くっさっ！」 爺「…」 張「…」

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爺「！！！」 張「…」 爺「拾え」 張「あ〜くっさっ！」 爺(野郎…) 張「ほれ」 爺「履かせろ」 張「くせえくせえ」 爺「お前は見どころが…」 張「あ？」 爺「…」 張「やんのか爺？」 爺「…履き物に何を入れた」 張「虫」 爺「…」 張「俺に見どころが何だって？」 爺「…」 張「続けろ」 爺「…」

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張「爺」 爺「足を洗え」 張「…」 爺「お前のではない」 張「来い」 爺「…」 張「おらよ！」 爺「!?」 張「俗世に塗れた汚ねえ身体丸ごと洗ってやる」 爺「小僧！」 張「俺に見どころがなんだって？」 爺「…」 張「あんのか？ねえのか？」 爺「ある」 張「声が小せえ！」 爺「ある！」 張「…で？」

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張良…美女と見間違うほどのイケメンだが、始皇帝暗殺未遂で逃亡中の荒くれ者。 爺…見どころはありそうだとおもったが、心底絡むんじゃなかったと後悔しきり。足が臭すぎる。

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夏侯嬰「兄い！大変だ！」 劉邦「どうした？」 盧綰「胸に七つの傷がある男が大暴れしてやがる」 劉「…それが？」 樊噲「兄いはももに七十二のほくろがあるじゃねえか！」 劉「何言ってやがる…」 周勃「いいからそいつを追い払ってくれ！」 劉「嫌だよ、めんどくせえ」 樊「首に縄くくっていくぞ！」

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男「お前はもう秦でいる」 夏「あいつだ！」 樊「世はまさに世紀末か…」 周「紀元前の世紀末って？」 盧「なんのことだ」 樊「おい！胸に七つの傷のある男！」 雑魚「何だてめえら！」 盧「乱暴狼藉はここまでだ！」 雑「ああ？」 夏「聞いて驚け！」 周「こちとら股に七十二のほくろがある男だ！」

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樊「股じゃねえ！ももだ！」 雑「どうでもいい！」 男「その男とは？」 夏「こいつだ」 劉「…」 男「首を縄で繋がれた奴僕か？」 盧「俺らの兄いだ！」 雑(兄貴分にする仕打ちかよ) 樊「刮目しろ！」 劉「………………………………………………………………」 男「俺の負けだ…」 樊「お前も強敵！」

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樊噲…怒ると着物が破れる筋肉。 盧綰…情に厚い優しい男。 夏侯嬰…黒い荒馬を乗り回す夢を見た。 周勃…無骨だが奏でる笛の音は優しい。 男…戦いの荒野でまた会おう。 雑魚…ヒャッハー酒だ〜 劉邦…てめえらの血は何色だ…

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夏侯嬰「大変だ！兄い！」 劉邦「なんだ？」 盧綰「ももに七十二のほくろがある男に挑戦状が届いた！」 劉「は？」 樊噲「今すぐ行くぞ、兄い！」 劉「嫌だよ、めんどくせえ…」 夏侯嬰「馬車で引き摺っていくぞ！お前ら！」 劉「!?」 蕭何「あなたは？」 男「ももに七十二のほくろがある男を探しに」

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蕭「…なぜ？」 男「これを見て分からぬか？」 蕭「!?」 曹参「蕭何？」 蕭「劉邦の完敗は必至だ」 曹「!?」 男「…では」 男「来たな、劉邦…」 樊「さっさと行け、あにい！」 劉「嫌だ！」 夏「棄てちまえ！」 劉「!?」 夏「馬車から棄てられる子どもの気持ちが分かったか？」 劉「何のことだよ！」

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男「来たな」 劉「誰だよあんた…」 男「俺たちはほくろで語らおう」 劉「狂ってんのか？」 樊「男らしいじゃねえか！」 盧「見せてやれ兄い！」 劉「うるせえ！」 男「お前が語らぬなら俺から語ろう」 劉「!?」 樊「あのほくろ！」 盧「なんと美しい…」 夏「まるで三つ目の乳首のようではないか！」