ASDとADHDの成り立ちが根本的に違う件

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さいこどくたーK💙💛 @psydrk

Atsushi Kashiwa, M.D., Ph.D./ハートクリニック横浜院長/ingress ENL L16(R1) 進化精神医学の視点を大切に、成人期発達障害などで通院中の方々とおつきあいしています/おとなの発達障害 診断・治療・支援の最前線 (光文社新書、共同著者)/個別DMによる医療相談には返答できません

heart-clinic.net/category/yokoh…

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Atsushi Kashiwa, M.D., Ph.D./ハートクリニック横浜院長/ingress ENL L16(R1) 進化精神医学の視点を大切に、成人期発達障害などで通院中の方々とおつきあいしています/おとなの発達障害 診断・治療・支援の最前線 (光文社新書、共同著者)/個別DMによる医療相談には返答できません

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ASDでも成長過程で他者が他者視線を持っていることに後天的に気づき、人工的ではあるが二次的に他者視線をなぞりはじめる。これが早くできるとASD特性も隠しやすくなり(隠し切ることはできず、ASD診断はつく)、二次的ADHD特性も修正される。 16/24

2022-03-20 17:47:34
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ASDとADHDの成り立ちが根本的に違う件。ワイが考えてきたことに本質的に近いと思うので、ここで改めてまとめてみる。少々長いスレッドになります。 1/24 twitter.com/41azusayumi/st…

2022-03-20 17:44:11
あずさ @41azusayumi

ここからは完全に個人的見解。ASDとADHDは成り立ちが根本的に違うように思っている。併発例はいるだろう。でも、ASDの人(あるいはASD/ADHD併発の人)にとっての世界の見え方は、ADHDだけの人にとっての世界の見え方とは違うんじゃないかな。ADHD自体はたぶん、世界の見え方を変えない。

2022-03-20 07:18:36
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ASDの本質は他者視点を持てないこと。ピアジェは脱中心化と言ったが、内海健先生の「母親からこちらに向かう視線に気づけないこと」がより正しく、出生後すぐの段階から起きている質的課題。他者をレファレンスせず育つので、独自の視点、認知行動パターンが形成される。 2/24

2022-03-20 17:44:33
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ADHDの本質は発達の遅れであり、量的課題。注意転導性、衝動性、多動性は乳幼児では普通、むしろ適応的でもある。 3/24

2022-03-20 17:44:50
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脳がまっさらな状態では、注意点をどんどん動かし、思いつくままにどんどん動くほうが早く効率的に環世界を知ることができる。ある程度認識が進んだら、セルフコントロールして注意を集中し、落ち着いて行動したほうが効率的、と変わる。 4/24

2022-03-20 17:45:01
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このようにより効率的に世界を知るには成長に伴い注意、衝動のセットポイントを変える必要があるが、これがうまくできない(遅れる)のがADHD。なので、乳幼児では大多数(これがフツー)、小学生で5%、大人で2.5%となる。 5/24

2022-03-20 17:45:13
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見方を変えると、ADHDの本質は「時間的・空間的近眼性」といえる。「今、ここ」を生きている彼ら、彼女らは近過去、近未来、目の前以外について認識する力が弱い。 6/24 heart-clinic.net/2020/12/no342.…

2022-03-20 17:45:25
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画像研究からも、ASDの子どもでは脳が大きい(刈り込み不全説)こと、ADHDでは逆に脳の各部位が小さいことが知られている。いずれも、成長とともに定型発達者に近づいていく。ここでは、ASDとADHDが逆パターンを取っていることに注目されたい。 7/24

2022-03-20 17:45:40
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ではなぜ、このように正反対と思われるASDとADHDに重複例(ASD+ADHD)が存在するのか。たしかに、DSMで診断すると両方の特徴を併せ持つ人は大人でも多いし、併発例でもADHD治療薬は有効である。 8/24

2022-03-20 17:45:52
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これは私にも10年来の疑問であり、いまだに答えは出ていない。小児精神科医にとっては、併発は周知の事実であり、それが当然のことという。恩師の清水康夫先生もASD, ADHD,LDをブラウン管のRGBに例えて説明されていた。各特性がそのように重なって臨床像ができると。 9/24

2022-03-20 17:46:04
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大人から入った発達障害診療医からは、典型的なASDと典型的なADHDでは佇まいの違いは対照的に見える。加藤進昌先生は草食系と肉食系と例えられた。ハートマンはADHDをハンター、定型をファーマーとしたが、それでいうとASDはスーパーファーマーに見える。 10/24

2022-03-20 17:46:21
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幼少期の脳の大きさも対照的であり、生物学的にも進化精神医学的にも両者の併発には矛盾を感じる。しかし、目の前に併発患者が来院しているのは事実。 11/24

2022-03-20 17:46:32
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DSMの限界は、臨床症状・症候を診断に直結していること。貧血といっても、原因は鉄欠乏からがんまで多種多様で、これらすべてを貧血という診断としても治療にはつながらない。同様に、DSMがADHDと診断した者がすべて同質とは限らない。 12/24

2022-03-20 17:46:44
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というわけで、現時点での私の仮説。本質的に両者は別者であり、DSMでASD+ADHDという診断がつく人には、ASD+二次性ADHDの人と、ADHD+二次性ASDの人がいる。 13/24

2022-03-20 17:46:56
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議論の前提として、DSMが語らないASDの本質は他者視線を持てないこと。ADHDの本質はセルフコントロールの弱さ。後者は滝川先生の図にあります。この図もASDとADHDを二次元展開していますが、症状レベルではこれでいい。 14/24 twitter.com/psydrk/status/…

2022-03-20 17:47:07
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滝川一廣先生による発達の立体構造。 ADHDは自己制御(セルフコントロール)能力の遅れなので、成人では適切な心理教育により一定のコントロールは可能。薬物療法はそれをスムーズに行える手助け(眼鏡)となる。 pic.twitter.com/kSiEUBSrfV

2022-03-09 12:00:52
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幼少から強いASD特性を抱えた場合、こだわりから興味対象にはまるとそれ以外に注意を払えない(不注意)、興味対象のためなら後先考えず動く(多動衝動性)、他者視線を持てないので修正が効きにくく、成長過程でこのパターンが固定化されていく。 15/24

2022-03-20 17:47:20
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この気づく時点がいつなのかによってASDなのかASD+二次的ADHDなのかが分かれるのかも知れない。また、ASD特性の強い人ほどADHDの要素もあることも説明できそう。 17/24

2022-03-20 17:47:44
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ここで一つ補足。定型発達では他者視線に気づく=他者から見た世界の存在に気づく→世の中を知るのに、他者のやり方を真似するのが早道。ASDではそうした世の中との接点(アンカーポイント)がないので、自分でそれを作り出す必要がある。 18/24

2022-03-20 17:47:55
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それがこだわり、独特の認知行動パターン。回るもの、キラキラするものを認知する、ミニカーを並べるなどの行動で形成されるパターンが彼ら、彼女らが世の中と繋がるためのアンカーポイントとなる。 19/24

2022-03-20 17:48:06
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話を戻して、一方のADHD+二次的ASDについて。この方々は、本質的には他者視線に気づく力は持っている。しかし、ADHD特性(注意転導性、衝動性)があまりに強いためその場その場の他者視線を見落としやすい。 20/24

2022-03-20 17:48:18
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よって、成長過程で他者視線による修正が効きにくいために二次的にASD的な状態として、社会コミュニケーションの遅れが生じる。pure ASDのように本質的な困難ではないが、こなすべき成長過程にこなしていない遅れは決定的となりうる。 21/24

2022-03-20 17:48:31
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以上、併発にはASD+二次的ADHDおよびADHD+二次的ASDがあるという仮説を述べた。DSMでは鑑別できず、臨床像、経過を慎重に辿ってどちらがその方の本質なのかを見極めないといけない。エビデンスは弱いが臨床的直感はこれが正しいと言っている。 22/24

2022-03-20 17:48:42
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これは精神病理学というよりは進化心理学、進化精神医学の領域。発達障害や精神障害のraison d'êtreを考える作業は、エビデンスは弱いが治療を考える上で重要なことと信じている。 23/24

2022-03-20 17:48:53