琵琶湖における漁獲量、外来魚生息状況、環境の経時変化(未完)

滋賀県の統計値に基づき、琵琶湖の総漁獲量、主要魚種漁獲量、外来魚生息状況ならびに環境の経年変化を記述する。
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今井長兵衛 @medanjin

琵琶湖のブルーギルがこの16年間で7分の1に減ったという滋賀県の調査結果が公表された。それにつれて漁獲量がどのように変化したのかを滋賀県の統計価に基づいてグラフ化してみる。

2023-06-18 21:20:25
今井長兵衛 @medanjin

[1]上段は1954~2021年の総漁獲量と4種の漁獲量の推移で、総漁獲量はほぼ一定の速度で約10分の1に、シジミは約100分の1に減少。フナは1980年~1995年にかけて10分の1に減少、モロコは1990~2007年に減少したのち、現在まで回復傾向。アユは1990年ころまで増加したのち総漁獲量と同等の速度で減少。 pic.twitter.com/Q2vVK2Cndb

2023-06-18 21:25:41
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今井長兵衛 @medanjin

[2] 前ツイ中段の図は、データが残された期間で、ブルーギル増加期の(在来魚)漁獲量の推移。図示した中ではモロコだけがこの時期に減少。 前ツイ下段の図は、別の手法でデータがとられた期間で、ブルーギルは減少し、漁獲量を図示した中ではモロコの漁獲量が回復傾向にある。

2023-06-18 21:34:11
今井長兵衛 @medanjin

[3] 琵琶湖への外来魚の導入は、ブルーギルが1965年ころ、ブラックバス(オオクチバス)が1974年ころとされている。 jstage.jst.go.jp/article/jji/60… バス・ギルの導入以前、すなわち1964年以前の漁獲量の推移は、総漁獲量、シジミおよびアユが漸減、フナとモロコが漸増傾向であった。

2023-06-19 15:08:21
今井長兵衛 @medanjin

[4] 大雑把にいえば、[現存量] × [捕獲率] =[漁獲量]。まずは、捕獲率に影響するかもしれない要因の経年変化を見てみよう。

2023-06-19 17:28:19
今井長兵衛 @medanjin

[5] 5年ごとの漁業センサスの結果によると、琵琶湖の漁業者は従事者数、就業者数ともに減少傾向で、両者の合計(漁業者数)は1973年の6720人から2018年の1385人に減少。一方、一人あたり年間漁獲量は2013年と2018年に減少しているものの、2008年以前は0.79~1.06トンの範囲でほぼ一定であった。 pic.twitter.com/zYFiSqzotZ

2023-06-19 17:48:19
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今井長兵衛 @medanjin

[6] 琵琶湖の漁船数の推移。1959~1965年の無動力船数の少なさが気になるが、動力船数は1970年代に急増したのち2000年ころまで減少傾向、その後は1000前後で推移。動力船の増加は1隻あたり漁獲量を高めると思うが、乗員数も増加するためか、前ツイのように、一人あたり漁獲量は増加しないようだ。 pic.twitter.com/2ymfm72JaD

2023-06-19 18:01:18
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今井長兵衛 @medanjin

[7] 上記の結果から、漁業者が経年的に減少した結果として捕獲率の経年的な低下が生じたように見える。捕獲率の低下は現存量を増加させる方向に働く一要因と思われるが、他の要因の影響も考慮せずばなるまい。

2023-06-19 18:18:34
今井長兵衛 @medanjin

[8] 琵琶湖の水質の推移1。0.0 と 0.00 は報告下限値未満を意味する。水質4項目はいずれも北湖が南湖より良い。また、南湖のSSが2010年以降若干増加傾向だが、北湖でも南湖でも1970年代~1980年代と比較してそれ以降に水質が改善している。 pic.twitter.com/I2Vk1MOWpZ

2023-06-19 18:48:42
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今井長兵衛 @medanjin

[9] 琵琶湖の水質の推移2。 全窒素は南湖で減少傾向。北湖では2000年ころまで漸増したのち、以降は減少傾向。 全リンは北湖ではほぼ一定のレベルで推移。南湖では図示した全期間で北湖より高かったが、1970年代にピークに達したのち、2000年代にかけて低下している。 pic.twitter.com/037MW4fy4J

2023-06-19 20:42:16
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今井長兵衛 @medanjin

[10] 琵琶湖の水質の推移3 表層水の溶存酸素飽和度。1960年代後半の南湖で若干低かったようだが、北湖のみならず南湖でも同等レベルの高い値であった。 pic.twitter.com/gvhPjDqKJU

2023-06-19 20:52:15
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今井長兵衛 @medanjin

[11] 琵琶湖岸(彦根)の表層水温の推移。1970年代に年次変動が激しかったが、1950年代後半~2020年の期間に2月平均水温が約2℃、8月平均水温と年平均水温が約1℃上昇しているようだ。 pic.twitter.com/h3ol0DWpJV

2023-06-20 18:24:58
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今井長兵衛 @medanjin

[12] 琵琶湖の平均水位は、1905年に南郷洗堰が運用されて人為的な調節が実施されて以降、現在までに90cm低下したそうだ。PDF文書 water.go.jp/kansai/biwako/…

2023-06-20 18:38:47
今井長兵衛 @medanjin

[13] 琵琶湖の水位の経年変化。2005年以後、年間最低水位が -78~-36cmで管理され、年平均水位も -30~-7cmで安定的に推移している。水位の年間変動幅も1998年以後56~131cmで推移。 pic.twitter.com/2Thz7capO7

2023-06-20 18:48:41
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今井長兵衛 @medanjin

[14] 洗堰による琵琶湖平均水位の低下は、治水対策であるとともに、内湖の干拓事業推進のためでもあった。琵琶湖における魚類の生息場所として重要であった内湖は、1943~1971年の内湖干拓(主に農地化)事業で、面積が1940年の29㎢から4㎢にまで減少したという。 jstage.jst.go.jp/article/report…

2023-06-20 21:10:22
今井長兵衛 @medanjin

[15] 琵琶湖のヨシ群落面積の推移。PDF pref.shiga.lg.jp/file/attachmen… 抽水植物群落は年間にしばしば浸水するエリアで、水ヨシ帯とも呼ばれている。ヤナギ林は水ヨシ帯より浸水頻度の低い岸辺近くに生育するようだ。 ヨシ群落の再生事業で、1979~2020年に33.4haの水ヨシ帯が造成されている。 pic.twitter.com/eWtF7tUK7x

2023-06-21 12:39:31
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今井長兵衛 @medanjin

[16] 琵琶湖における外来魚オオクチバスとブルーギル駆除量(下図中段)。総漁獲量と主要4種漁獲量(下図上段)と外来魚生息指数(南湖定点捕獲量と生息量推定値;下図下段)を再掲。1993年以後、外来魚の増減がモロコ漁獲量の増減と関連している可能性が示唆されるが、断定はできない。 pic.twitter.com/qXdXld2FI8

2023-06-21 13:31:54
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今井長兵衛 @medanjin

[17] 以上から、琵琶湖における主な漁業対象種の現存量に影響を及ぼしているかもしれない要因として、水位、ヨシ原面積、外来魚(特にモロコに対し)などが考えられそうだ。表層の水質はあまり関係がなく、表層の水温は魚種によって影響の方向は異なるのかもしれない。

2023-06-21 16:26:02