ストレイトロード:ルート140(71~72周目)
- Rista_Bakeya
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怪物の被害拡大は誰も歓迎しないが、退治できる風の魔女も同様に人々から恐れられている。悩んだ市長が藍に持ちかけたのは秘密裏の協力だった。「人も土地も大事な財産じゃ、どうか頼む」市長が藍の手を取ったが、すぐ振り払われた。「大ごとにしたくないのは誰のため?」市長も側近も言葉に詰まった。
2023-05-14 19:48:01訪れた街では廃棄物を覆う植物ばかりが目についた。謎の飛行生物群の存在が公になった頃、つまり藍が生まれる前に襲撃された土地だと聞く。潰れた車の残骸が当時の現実を、その上に根を広げる樹木が悲劇からの年月を象徴するようだった。何も停止していない。藍が得た情報が確かなら近くに住民がいる。
2023-05-15 18:56:51人間の世界が覆る少し前、ある屋敷の地下に当主の子が幽閉された。後の混乱も悲劇も知らず、最低限の世話だけ受けて生き延びたという少年は、覗き窓越しに藍を凝視した。親の立場では不快と心配を抱く視線だ。「あそんでくれるの」舌なめずりの音が身震いを誘う。「そうしたら本をくれる?」「いいよ」
2023-05-16 18:53:57140文字で描く練習、3525。覗き窓。 たとえ巨大飛行クリーチャーが来なくても、世界のどこかでは世界が壊れている。
2023-05-16 18:53:57しばらく運転席から立ち上がれなかった。車は壁と衝突する前に止まり、歩道を塞ぐだけで済んだが、私の手は硬直している。膝が震えている。「安心して。誰も巻き込んでないし、わたしも無事」藍は励ますつもりで言っているのか。ドアを開け外へ出る音を聞いても声が出ない。魔女の報復を止められない。
2023-05-17 18:51:28今では魔女と呼ばれる藍の能力が紛い物と区別され始めたのはいつからか。近年の文献を調べると、やはり当初は冷ややかな論調が多かった。お騒がせの令嬢が世界の異変の象徴へと変わる過程で、ウェンズ達専門家の論文の影響は想定より小さかった。強いのは目撃者の声。認知に至る風も自ら起こしていた。
2023-05-18 18:53:40140文字で描く練習、3527。冷ややか。 ウェンズは藍のパワーを科学の力で調べている研究者の一人。「the first junction」にも登場します。
2023-05-18 18:53:41「翼は風を受ける構造って前に言ったよね」藍の一言を聞き流すところだった。彼女は投影装置を囲むガラスに貼りつき、先日捕獲された怪物の三次元映像を見ている。「このリボンみたいな部分もそうなの?」空を泳ぐように逃げ回っていた個体は今、床に伏し動かないという。不思議の解明は難航しそうだ。
2023-05-19 18:59:43140文字で描く練習、3528。不思議。 空を飛ぶクリーチャーたちにはいろいろな造形のものがいて、藍たちの世界の物理法則を飛び越えてしまう存在も少なくない。
2023-05-19 18:59:44取材というより尋問だった。藍の両親との関わり、研究所からの便宜の有無、立ち寄った街での出来事。記者を名乗る女は私の返答の端から何かを引き出そうとしていた。「本当はわたしにだって興味ないのよ」藍も疲れきった顔を隠せていない。「誰かの足引っ張りたいだけ」あるいは誰かの便宜が絡むのか。
2023-05-20 20:24:51真新しい図書館に案内された。半年で再建したと市長が胸を張る。「あの化け物共にやられましてな」「じゃあ資料は」顔を曇らせた藍に慌てて補足が入った。「職員総出で避難させましたとも」館内中央の吹き抜けに感嘆した。葉の形をしたソファで市民達が読書を楽しんでいる。「みんな本の虫ってわけね」
2023-05-21 19:10:52140文字で描く練習、3530。本の虫。 この毎日ツイノベ習慣では通常、お題を五十音順に決めています。(最近フォローされた方向けの説明) よって「ほ」の回なのは偶然です。この文字から始まる語として今日に相応しいものが未使用でよかった。
2023-05-21 19:10:53「どうして上まで話が通ったかわかった」入院中の重要人物との面会があっさり許された背景に、藍を諦めきれない御曹司の暗躍があったらしい。彼女が直球のアプローチを断り続けたから今度は回りくどい手段で好感度を稼ごうとしている。当然、藍本人は面白くない。「断ればわたしの責任になるの。最悪」
2023-05-22 19:27:47遠くから見た姿は鳥の巣そのものだが、木の枝に見えたものはビルの外壁を囲う資材や用具だった。藍に元の用途を説明しながら現状の写真を撮影していく。正面玄関は養生だらけで、梱包されたままの機材もある。この建物は未完成の状態で翼ある怪物に目をつけられ、勝手に新築の住処へ改造されたようだ。
2023-05-23 18:55:04140文字で描く練習、3532。未完成。 高所を好むクリーチャーの大量発生は突然の出来事だったので、放棄された「現場」はたくさんありそう。
2023-05-23 18:55:04男が一歩踏み込んで私の胸ぐらを掴んだ。私が横へかざした手は藍の突撃を止めた。藍が突き出した傘の先端が男の喉に届いた。「そいつを下ろせ」「あなたが先よ」二人は手を引きそうにない。私が身動きしても円満な解決は難しそうだ。「さっきの発言撤回しろ」「しなくていい」どちらも私を睨んでいる。
2023-05-24 19:12:52名門と呼ばれる家に生まれ、親の背中に憧れ伝統を継いだ。我が子もそうなると思ったのに全員違う道へ。一気に語った酔客は己の不運を嘆いている。「それだけ?」私が彼を泣かせたのではと藍は疑っていたらしい。「で、何の名門」「空軍の某」「そっとしておきなさい」怪物が役目も評価も変えた組織だ。
2023-05-25 20:04:15