ストレイトロード:ルート140(71~72周目)

オリジナル短編「ストレイトロード」をベースに、毎日1作ずつ投稿している掌編という名の習作。 今回は3501~3600+おまけ。なお各話の内容は特に連続していません。 次(73周目)が最終回になります。 続きを読む
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Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

「あのとき現場にいた証拠もある。何も見てないはずない」「見たかもね。それが君の望む答えでなくても通報しないでくれるかな」笑顔で勿体ぶる青年に、藍は苛立ちを見せつける態度で応じた。彼が物陰に潜む男達を警戒していることは恐らく彼女も解っている。だが退けない。財布の行方がかかっている。

2023-05-26 20:16:38
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、3535。勿体ぶる。 単に相手を焦らすだけでなく、わざわざ重々しい表現を使うことを言うらしい。

2023-05-26 20:16:39
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

車の後部座席に積んでいた冷蔵ケースが一つ消えた。藍に心当たりを尋ねると目を逸らされた。「何か入ってたの?」「昨日の時点では空でした」「だったら問題ないでしょ」その時座席の陰に隠した物を彼女の就寝後に調べた。可愛らしいラベルの瓶に甘い匂いの菓子。やみつきになって物々交換でもしたか。

2023-05-27 19:51:15
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、3536。やみつき。 魔女と従者の車はワンボックスタイプ。二人で乗るにはちょっと大きいやつ。

2023-05-27 19:51:15
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

曲がり角の前を過ぎようとした藍が足を止めた。服の後ろで揺れるリボンの端を小さな手が掴んでいた。「どうしよう。うごかない」幼い子供が上目遣いのまま後方を指した。誰かが倒れている。藍はまず助けを求めた子供の勇気を褒め、私には矢のような視線だけ飛ばした。通報より事情聴取がしたいようだ。

2023-05-28 18:56:08
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、3537。勇気。 それは特別でない人でも持てるチカラのひとつ。

2023-05-28 18:56:08
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

シェルターの扉に合図の打音を送ってから一分後、それは内側から静かに開いた。最初に顔を出した壮年の男に怪物の退去を伝えた直後、扉の奥から喜びの声が漏れ出た。地下に潜んでいた人々がようやく外へ出ると、目の前に半壊した納屋の上で夕日を浴びる藍の姿がある。束の間の静寂。「おかえりなさい」

2023-05-29 19:05:04
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、3538。喜び。 毎回先にテーマ決めてからその単語使った140文字を書くのですが、たまにテーマから逸れかけたり良くない流れの中に使うことがあります。どうしてだろう。

2023-05-29 19:05:05
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

城壁の見張り台で朝焼けを待つ間、藍が兵士に尋ねた。「なんでこんな危険な仕事が人力なの」「前はエーアイってのが全部やってたけど、壊れちゃって?」彼は朗らかに笑った。怪物が飛び交う高所で空を観察する役が平静を保つのは難しい。強靭な精神の持ち主か余程の楽天家でなければ務まらないだろう。

2023-05-30 19:43:37
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、3539。楽天家。 人間相手の仕事と違うのは、どうせ言葉は通じないと割りきれること、かも。

2023-05-30 19:43:38
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

広い更地に描かれた円形の中心に藍が立つ。「ここにそのクルマが着地したの?」「実験段階ですが」街と町で物資を交換する。人の往来に従って乗り物も集まる。かつての交易地には利便性を集客の足掛かりにした痕跡が幾つもあった。牛馬に頼った頃から自動車の天下を経て次の時代へ飛ぼうとした証拠も。

2023-05-31 19:05:03
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、3540。利便性。 イベント告知などで触れている通り、当シリーズは一応「近未来」の話としています。現代で試されている技術の一部が実用化まで進み、一部は廃れた、そんなイメージ。

2023-05-31 19:05:03
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

車を施錠し、後部座席で客人と向き合った。「パートナーに不満を感じたことは」「全然!」明るい声の割にカーテンの外を気にしている。客人の連れがそこで藍と対話しているはずだ。「気がかりは」「何も」小さな棘が累積して拳を作ることもある。本音の枝先を慎重に探した。風が合図の笛を鳴らすまで。

2023-06-01 18:54:22
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、3541。累積。 自分たちに必要な情報のためなら喧嘩の仲裁もする、旅の二人。

2023-06-01 18:54:23
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

空一面の厚い雲と冷たい空気を烈風が掻き回す。摩天楼が安全な場所だった頃に廊下で聞いた風の音を思い出した。藍の仕業ではない。彼女を抱えて客室に運ぶ間、ずっと目が虚ろで肌と息は心配な程熱かった。体調が悪いのに力を使い過ぎたか。今の天候はむしろ魔女からバトンを受け取ったような荒れ方だ。

2023-06-02 19:04:57
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、3542。烈風。 藍のパワーについてはわかっていないことも多い。

2023-06-02 19:04:57
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

「本当は学校から逃げたいだけじゃないの?」意地の悪い笑みを無視して早歩きを続ける藍に、なおも少年は食い下がる。「有名人なら何したって誰かがかばってくれるもんな」行儀のいい子との違いを欲して、あるいは単に気を引きたい故の露悪なら逆効果だ。しかも大抵この手は大人の指摘に耳を貸さない。

2023-06-03 18:54:05
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、3543。露悪。 わざと欠点などをさらけ出すこと。

2023-06-03 18:54:05
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

賑わう市場の一角が騒がしい。往来の中心で別れ話を始めた二人組に人々は驚き呆れ、当事者を避ける流れが生まれた。「道あけて!」自然発生の一方通行の終点から藍が飛び出してきた。少年の手を掴んでいる。騒ぎに気を取られた人の財布をくすねたのは騒ぐ人物の子だった。「まずあなたが別れるべきね」

2023-06-04 19:23:44
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、3544。別れ話。 日本想定じゃないのといろいろ衰退した世界なので治安のレベルは、と考えればきっとこういうの珍しくないんだろうなと。 ……藍ちゃんの方が危ないと言われると反論できない。

2023-06-04 19:23:45
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

旅路で出会う人々は少なからず魔女を恐れる。今日も恐怖が強風に勝った。藍に手を貸しても罪には問われないと再三説明したが、結局協力を断られたのだ。「悪い子ではないと分かってます、が、その」住民の肩が震えている。周囲の圧力による変心と察して家に帰した後、藍に最近の揉め事の相手を尋ねた。

2023-06-05 18:44:15
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、3545。変心。 心変わりすること。 怖がらせたのが藍のせいなら、謝るのが保護者の仕事になる。

2023-06-05 18:44:18
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

焙じた茶葉の香りを吸っただけで外の喧騒を一瞬忘れた。「いいお店でしょう」藍に続く形で店内を見て回る。棚に並ぶ袋や缶には推薦文や写真が添えてあった。あの王室に奉じたこともあると手書きの紹介。文字に誇らしさが表れている。両親への手土産を選ぶ魔女の横顔はきっとどの媒体も報じないだろう。

2023-06-06 19:00:57
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、3546。ほうじる。 提供: @takuramu_ossan 恒例の同音異義語シリーズ。今回はこんな感じでいかがでしょう。

2023-06-06 19:00:58
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

「何かいる」藍の一言で停車し道の脇を見た。小麦畑の中心にテントが置かれている。刈り入れに追われる農民の作業小屋としても場所がおかしい、等と考える間に天幕が宙に浮いた。空より深海が似合いそうな飛行怪物が一束持ち去っても、人々は背を向けて収穫物を集め続けた。「写真撮った?」「一応は」

2023-06-07 18:46:46
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