個人メモ:Kawathe先生の「東電原発事故は天変地異で免責なるか」

誰かが纏めてくれるだろうと思ってましたが、今のところ見当たらないようなので、自分の為にKawatheCathand先生のツイートをまとめました。 こちらの 「セシウム無主物神話の法解釈」 http://togetter.com/li/220914 続きを読む
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Jun-ichi_Kawa @KawatheCathand

連ツイ11個御免。原子力損害の賠償に関する法律3条1項ただし書「異常に巨大な天変地異」 http://t.co/pRFQcGg5 に関する覚書。結論だけを先に書けば、現在明らかになってる事実が前提なら免責にならないだろうということに尽き、周回遅れは自覚しているのですが。(1

2011-11-27 14:42:31
Jun-ichi_Kawa @KawatheCathand

法的訓練を受けた者が原賠法3条1項を読むと、同法は民法709条の定める準則を必要な範囲で修正する条文(=特則)であること、なかでも「天変地異云々」は「故意又は過失によって」(=過失責任原則)の部分の修正に関わる文言であること理解します。そう理解することが「業界の掟」です。(続2

2011-11-27 14:43:11
Jun-ichi_Kawa @KawatheCathand

ここで過失責任原則というのは、行為者が行為時に結果の予見が可能であることを前提にして、その結果の回避が可能であるにもかかわらず、結果回避のために適切な行動をしなかったときに責任が生じる原則と理解するのが、現在では一般的です。(続3

2011-11-27 14:43:29
Jun-ichi_Kawa @KawatheCathand

原賠法3条1項本文には過失云々という文言がありません。∴同法は民709条を修正して無過失責任を宣言していると理解します。ただ、無過失責任なら行為者は常に賠償責任を負うのかというと、そこはまだ決まりません。無過失責任の場合でも、不可抗力免責が認められることは往々あるからです。(続4

2011-11-27 14:43:46
Jun-ichi_Kawa @KawatheCathand

ここで不可抗力免責というのは、行為者が結果を予見回避できなかった事象(=無過失)の中でも、特に、人知を越える例外的事象が原因になっている場合には、行為者を免責するというものです。結局、無過失と不可抗力の間には、無過失だけど不可抗力ではない事象が存在することになります。(続5

2011-11-27 14:44:03
Jun-ichi_Kawa @KawatheCathand

この知識を前提にして原賠法の中に不可抗力免責を規定する条文がないか探すと、3条1項ただし書「異常に巨大な天変地異云々」に気がつき、その文言を不可抗力免責を規定した条文と理解します。こうして、「天変地異云々」は不可抗力の問題だということになりるわけです。(続6

2011-11-27 14:44:24
Jun-ichi_Kawa @KawatheCathand

ここで注意すべきは、眼前の事象が字義に照らせば「天変地異」と言えそうなものであっても、その「天変地異」からの結果を行為者が予見・回避できたならば、行為者過失アリとなって、そもそも3条1項ただし書の適用可能性はなくなるということです。(続7

2011-11-27 14:44:47
Jun-ichi_Kawa @KawatheCathand

以上を「理解」して問題を考えると、3条1項ただし書が適用されないと主張する方法は2つだということに気がつきます。第1は眼前の事象が行為者無過失領域にあるが不可抗力によるものではないとの主張、第2は、眼前の事象は行為者に過失ありの事象であるという主張。(続8)

2011-11-27 14:45:07
Jun-ichi_Kawa @KawatheCathand

最初に戻ります。福一の事故は、第2の主張でいけそうに思います。木野龍逸さんや大手の一部記者達が引き出した事実(予想されていた地震規模・津波可能性)、5号6号福2は危機を切り抜けた事実、更にはそもそも予見に基づいて廃炉しておけば結果は回避できたことを根拠にできそうだからです(続9

2011-11-27 14:45:34
Jun-ichi_Kawa @KawatheCathand

長くなりました。今これを書いた理由は、わかりやすい・わかりにくいの例を挙げることに意味がありそうだと思ったこと、大塚先生人見先生の論稿を読んで、多分あってるという心証を持てたこと(私、研究としては専門外です)、もっと早く言うべきだと言われると面目ないのですが(了10

2011-11-27 14:46:07
Jun-ichi_Kawa @KawatheCathand

実はかなり以前に、牧野・早川両先生の会話の中で免責成り立つだろみたいな話になりかけてて、「ちょっと違います」と介入しようとして相手にされなかったことがあって、その凹みから回復するのに時間がかかったというのも少しあります。まあ以前のアイコンでは仕方ないとは思うのですが(汗 (余談

2011-11-27 14:46:50
Scholarly Vicke @Vicke_2011

@KawatheCathand 解説ありがとうございます。一つ質問させて下さい。第2の場合の過失というのは不可抗力免責とはどのような関係にあるのでしょうか?無過失が、不可抗力免責に内包されている要件になっているのか、それとも、民法の不法行為に戻ることを意味しているのでしょうか?

2011-11-27 16:47:29
Jun-ichi_Kawa @KawatheCathand

.@Vicke_2011 条文としては原賠法の解釈適用になるので、答えは前者だと思います。ただ、質問趣旨は過失/無過失の主張立証責任はどうなるのという事にも思え、そうだとすると、実はさっきは「解りやすさ」のために省いた点に関するものということになり、解釈は2つはあると思います。1

2011-11-27 18:20:59
Jun-ichi_Kawa @KawatheCathand

.@Vicke_2011 1つめは免責を主張する側が字義的に「天変地異」に当たる事象の存在だけでなく、当該事象の予見・結果の回避可能性がなかったことの主張立証にも成功してはじめて免責されるという解釈。2続

2011-11-27 18:21:16
Jun-ichi_Kawa @KawatheCathand

.@Vicke_2011 2つめは免責を主張する側が字義的に「天変地異」に当たる事象の存在の主張立証に成功すれば、今度は、免責を否定する側が当該事象の予見・結果回避可能性があったことを主張立証できないかぎり、行為者は免責されるという解釈。3続

2011-11-27 18:21:48
Jun-ichi_Kawa @KawatheCathand

.@Vicke_2011 原賠法は行為者が責任を負うのが原則だということから推せば、1つめの解釈ということになりそうですが、2つめはまったくありえないかというと、そこまでは言えない感じがします。4続

2011-11-27 18:22:02
Jun-ichi_Kawa @KawatheCathand

.@Vicke_2011 ただ、実際の訴訟で相手に主張立証責任があるからと言って重要争点について相手が優勢になっても黙っている弁護士はよほどのヘボなので、主張立証責任だけで勝ち負けが決まることは、考えにくいと思います。さっき主張立証責任の説明を省いたのはそういう理由です。5了

2011-11-27 18:23:41
Scholarly Vicke @Vicke_2011

@KawatheCathand ご回答ありがとうございます。質問の趣旨は法理構成のことでしたが、立証責任の論点もよく分かりました。御礼申し上げます。

2011-11-27 18:36:22
Jun-ichi_Kawa @KawatheCathand

oO(仮処分申立に対する答弁書なんて、どんな勝手書いても、最後に通りやすい法律論書けば構わないものなんだけど、あんな恥知らずなものを目の当たりにすると、「天変地異」も釘刺しといたほうがと思ったんだよね。ここで言うことにどれだけ意味があるかと言われると、まああれなのだけど)

2011-11-27 19:23:39
Jun-ichi_Kawa @KawatheCathand

今日、職場の資料室にもぐって雑誌論稿をチェックしていたのだけど、夏頃に出たものだと原賠法で東電が免責になることを示唆したものは複数あった。判断枠組は最近のものと同じはずだから、違いは前提になる事実の点なんだろう。重要な事実の公表/報道に関わっている人達に感謝、支援を続けたい。

2011-11-28 21:28:34
Jun-ichi_Kawa @KawatheCathand

周回遅れを承知で書くと、原賠法3条の賠償責任が成立するかは、行政主導の補償に期待・依存せずに、裁判の場での権利主張を選択できるかという点で非常に重要。4条1項が賠償義務者を事業者に集中させている&国賠のハードルは、規制権限行使の違法性・過失を争う事になり、低くないから。

2011-11-28 22:03:40
Jun-ichi_Kawa @KawatheCathand

そして、賠償の原資は多分大丈夫なんだよ。支援機構法で税金投入の枠組ができているから。ただ、これ、結局、被災地以外の人にも選択を突きつけているんだよね、ロシアンルーレット的なるものに参加するか、薄く(?)広い金銭負担を引き受けるか。 ごめん、今日はここまでだ。

2011-11-28 22:38:38
Jun-ichi_Kawa @KawatheCathand

まあ、結局とても単純な話だ。原賠法3条の賠償責任は成立しそうだということ&賠償原資への国費投入の枠組が背景にある以上、納税者に現存被曝地と関わりを持たないという選択肢ははない。だったら私は主体的に関わる。(続)

2011-11-29 23:18:44
Jun-ichi_Kawa @KawatheCathand

第一に放射能の拡散がない方に、第二に避難ができる方に、最後に、それでもそこ住むという選択をする人に、第一第二を前提にして出来るだけの安全を提供できる方にお金を使うことを主張し、動く。なんだ、今まで言ったりやったりしてきたことどおりだ。泣こかい、飛ぼかい、泣こよかひっ飛べ、だ。続

2011-11-29 23:19:02
Jun-ichi_Kawa @KawatheCathand

そうすると自分にとって残ってる問題は、被曝を免れた被災地とどう関わるかということだ。これもとりあえずは今までどおり出来る範囲で関わることにしよう。状況が変わったらそのとき考える。今日はもう寝る。おやすみなさい 了

2011-11-29 23:19:27