憲法解釈は暫定的固定点を追い求める営み―― サンスティーン『合衆国憲法をどう解釈するか』(2023.8)

Sunstein, C. R. (2023). How to Interpret the Constitution. Princeton UP を一気読みして的確にまとめる。
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吉良貴之|Kira, T. @tkira26

[お買いもの] Sunstein, C. R. (2023). How to Interpret the Constitution. Princeton UP. https://t.co/cmL7KEDfF8

2023-08-20 02:20:53
リンク press.princeton.edu How to Interpret the Constitution From New York Times bestselling author Cass Sunstein, a timely and powerful argument for rethinking how the U.S. Constitution is interpreted 10
吉良貴之|Kira, T. @tkira26

イントロ:憲法解釈はどうあるべきか。よりよい憲法秩序の実現が目標だ(費用便益分析、帰結主義)。「原意主義」のような大きな理論は役に立たない。反照的均衡で行ったり来たりせざるをえない。しかし手かがりがないわけではない。それは憲法上の「固定点」(完全には理論化されない合意)だ。

2023-08-20 02:24:52
吉良貴之|Kira, T. @tkira26

第1章:解釈の諸理論。憲法解釈理論のサーヴェイ。保守派の原意主義の諸形態(原初意図、原初の公共的意味、テクスト主義)、イリィの民主的解釈、ドゥオーキンの道徳的読解、伝統主義、セイヤー的敬譲論、コモンロー立憲主義、共通善立憲主義、など。

2023-08-20 03:12:13
吉良貴之|Kira, T. @tkira26

第2章:選択の必然性。解釈理論は憲法秩序をよくする目的でもって選ばれなけばならない。テクスト内在的な根拠だけでは無理で、外的な正当化が必要である。これはドゥオーキンの適合/正当化論やソラムの解釈/構築論に親和的な話のようだが、帰結主義的に正当化されるべきなのでそれに限定されない。

2023-08-20 03:41:59
吉良貴之|Kira, T. @tkira26

おおむね教科書的な書き方なので勉強になるのだが、ときどき強い断定が出てきて驚く。たとえば、現代の新しい課題に対応するのは裁判所ではなく立法府の役割だとするスカリアの議論に対し、そんな正統性からの議論は憲法論に混乱をもたらしてきただけだと切って捨てている。

2023-08-20 03:45:48
吉良貴之|Kira, T. @tkira26

「一部の原意主義者、有名どころではジャック・バルキンなどは意味論的原意主義を採用する。合衆国憲法のいくつかの規定が一般的で抽象的な用語で書かれていることをもって、進化する解釈を受け入れる余地があることを強調するのだ」(76)。 →Balkin (2012) 解釈としては強い気もするがどうだろう?

2023-08-20 03:56:12
吉良貴之|Kira, T. @tkira26

第3章:公職者が就任するにあたっての宣誓で「この憲法」を守るというとき、それは原意主義的な解釈論を意味するのではなく、その他の解釈論とも両立する。それだけで章が終わっていてなんか変な感じ。

2023-08-20 04:03:00
吉良貴之|Kira, T. @tkira26

第4章:どう選ぶか。ロールズの反照的均衡を引き合いに出しながら「暫定的固定点」という見方を示す。憲法解釈は手がかりである「固定点」を見出す営みであり、ときにリベラル派が原意主義的主張をするのも不思議ではない。ブラウン判決を固定点としない解釈理論は支持されないだろう。他はどうか?

2023-08-20 04:26:47
吉良貴之|Kira, T. @tkira26

Roe 判決を破棄した Dobbs 判決は単なる保守反動ではなく(あと Students for Fair Admissions 判決も)、自身の解釈を立憲的伝統のなかに位置付けようとしているよ、ということは本書に先駆けて吉良(2023)が述べているのでみんな読んでね。 seidosha.co.jp/book/index.php…

2023-08-20 04:47:20
吉良貴之|Kira, T. @tkira26

第5章:Dobbs判決の伝統主義は、(1) 実体的デュー・プロセス伝統主義であって手続きだけでなく様々な権利を「後ろ向きに」包含する、(2) 既存の判例との適合を図る点ではコモンロー立憲主義的であり、(3) 政治プロセスを強調する点でセイヤー的であり、(4) ひっくるめてドゥオーキン的である!

2023-08-20 04:42:50
吉良貴之|Kira, T. @tkira26

6章:サンスティーン自身の立場。いろいろあるねというだけではつまらんので、最後に強めなことを言って終わりにする。連邦最高裁はこれまでリベラルな判決をたくさん出しているが、それらは熟議民主主義や政治的平等(反カースト原理)によるのであって、憲法はその方向に発展させていくべきだ。終

2023-08-20 04:55:30
吉良貴之|Kira, T. @tkira26

講評:この40年ぐらいのアメリカの憲法解釈理論を単に保守/リベラルに分けるのではなく、暫定的固定点と反照的均衡をめぐる営みとして整理する。こういうきれいな整理はまだあまりないので意義がありそう。翻訳してもいいかも。でも自身の主張はもっとあってもいいかな。

2023-08-20 05:02:52