三国志こばなし集2023年10月号(上)三国時代編

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張昭「死ぬかと思いました…」 孫権「私たちも死んだと思ったぞ張公」 虞翻「私が賭けた十金で海老を祀った墓を造っていただきたく」 歩騭「頼んでおきますね！」 張「…わしが負けたらその儲けた金で何をしようと思っていた虞翻？」 虞「盛大にあんたの葬式を執り行ってやろうと思っていましたよ？」

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孫「それは良い！」 張「良いわけないでしょうが！」 孫「死ぬ前に葬式をするのもありかもしれんぞ！」 虞「生前葬ですか！」 孫「我らで葬式に革命を起こそう！」 張「曲がった事が大嫌いなこの私に何を言う！」 虞「今更になって酷い自己批判ではございませんか張昭殿？」 孫「全くだ」 張「黙れ！」

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孫「張公の葬式か…今からワクワクするな」 張「わしは生きとる！」 虞「服喪の予行演習も必要では？」 孫「そうだぞ張公。万が一本番でお前が失敗でもしたら大変だ」 張「…ふむ」 虞「だからあなたの葬式の前祝いという事で、一度やってみませんか？」 孫「予算に糸目はつけぬから！」 張「はあ…」

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張昭…わしの葬式の本番とは、本当にわしが死んだ時ではないか！！ 孫権…言われるがままに死体の練習してやがったぞあの爺！ 虞翻…本当に肝心要で異様にちょろくなりますからな！ 歩騭…君臣ともども大真面目に死体の練習をしている張昭が面白くて仕方なかった。

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顧雍「謹んで、丞相の座を孫邵殿よりお引き継ぎさせていただきます」 孫権「頼んだぞ顧雍！」 顧「…」 孫「懸念があるのか？」 顧「…はい。ございます」 孫「言ってみろ」 顧「誰もが私ではなく張昭殿が丞相になると思っていたはず。私自身この大役をお引き受けするにあたり首を傾げざるをえません」

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孫「簡単な事だ」 顧「はて？」 孫「蜀漢の主君が丞相に対して宴の場で意地悪をしたり、毎度毎度大喧嘩していたとしたら？」 顧「間違いなく国難です」 孫「ではそれが私と張公の間だったとしたら？」 顧「誰もがいつものだと思います」 孫「そういう事だ顧雍」 顧「…納得していいのやら悪いのやら」

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顧(殿が言われた事はよく分かったが、張昭殿もそう思われているのだろうか？) 張休「顧雍殿！」 顧「張子布殿はいらっしゃいますかな？」 張「今は絶対お会いにならぬ方が良いかと…」 顧「何故？」 張昭「客か？」 顧「張昭殿その襷は!?」 昭「…見たな」 顧「丞相就任おめでとう…」 昭「笑うな！」

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孫権…後日顧雍から張昭の丞相就任おめでとうパーティーに参加させられた話を聞いて大笑いした。 顧雍…針の筵のような張家のパーティーに無理やり来賓として参加させられた。

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張昭…誰もが二代目丞相になると思っていたし、本人もなる気満々だったが、日頃の大喧嘩を迂闊にする事で対外的な悪影響を鑑みた孫権からあえて丞相候補から外されていたと露知らず…

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張休…不機嫌を超越した親父を腫れ物のように扱う過去最悪な身内のパーティー幹事を任されていた。

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呂蒙「むむむ」 孫権「何がむむむだ？」 呂「どうも昨今の練兵の仕上がりが芳しくなくて…」 孫「ふむ」 呂「将校が手を抜いている訳ではないのですが、物足りず」 孫「そうだ！」 呂「何か？」 孫「私に任せておけ！」 呂「はあ…」 孫「賀斉！お前の職人たちを貸してくれ！」 賀斉「何事ですか！」

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孫「どうだ呂蒙！」 呂「みるみる兵たちの武術の腕前や力が向上しております！」 孫「やはり私が見込んだ通りだ！」 張昭「…おい賀斉」 賀「おや、張昭殿」 張「練兵場から何かが聞こえてこないか？」 賀「ああ。我らお抱えの職人が、練兵で活用する木偶をしこたま作ったんですよ」 張「木偶だと？」

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木偶「この程度で悔しくないのか！」 兵「おのれ張昭！」 木「参った！」 兵「戦が参ったで済む訳無いだろう！」 木「やられた〜」 兵「くたばれ張昭！」 将校「そこまで！」 張「」 兵「木偶が！」 兵「俺の新技を披露させてくれ！」 張「！！」 兵「!?」 兵「みんな！本物だ！」 張「昭来！昭来！」

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孫権…張昭が練兵場で千人斬りだと？ 呂蒙…真の孫呉無双だと叫んだそうです。 賀斉…張昭殿に木偶を全て粉砕されてしまった… 張昭…孫権のアイデア木偶の元ネタとして貢献していたが、本物の強さは兵卒が束になっても到底敵わなかったらしい。

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劉備「俺は盧植先生に鄭玄先生や陳羣の親父の陳紀殿に色々お勉強を習ってきたがな」 孔明「存じております」 劉「ご先祖の葬式やしきたりやらをどうでもいいって言うつもりもねえし、整理できんならしてもらうに越した事はねえと思ってる…」 孔「仰るとおり」 劉「それで任せた学者どもがあの有様だ」

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許慈「お前のしきたり書を貸さぬか！」 胡潜「嫌だ！お前の解釈違いを到底許すわけにいかぬからな！」 許「鞭で引っ叩くぞ！」 胡「やってみろ！」 孟光「あんたの左伝なんざ糞だ！糞糞の糞だ！」 来敏「貴様ら公羊学者の妄言なんざ聞こえんわい！」 劉「そんな大喧嘩することなのかい？」 孔「…」

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劉「葬式のしきたりやら礼儀作法やらの解釈違いでどうしてあんな怒れるのかな？」 孔「迂闊に踏み込むと彼らの逆鱗に触れますよ」 劉「つっても例えば葬式のしきたりだろ？」 孔「…まあ」 劉「亡くなったご先祖様を弔い、悼む気持ちが何より大事なんじゃねえの？」 孔「全く持ってそのとおりですな」

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劉備…学問の解釈違いねえ… 孔明…我らが迂闊に踏み込んでいい議題ではありませんって。

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許慈…胡潜と犬猿の仲。書物の貸し借りもしないし、大喧嘩で鞭を持ち出して叩き合いになった事もあるほど憎み合っている。 胡潜…後日劉備が宴会で彼ら二人の喧嘩をネタにした余興を披露させた。お互いすごく恥ずかしかったらしい。

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孟光…来敏の解釈違いを許せない時はわあわあと喚き立てる厄介な学者。直言癖があり皆の鼻つまみ者だったが、無駄に長生きしやがった。 来敏…蜀一番の厄介学者。絡むしウザいし狷介だしでみんなが迷惑している。そのおかげでノンストレスだったのか、こいつもやたら長生きしやがった。

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孫権「歩騭が士燮を降伏させただと！」 諸葛瑾「大手柄ですな！」 孫「長男と共に面会しに来るそうだ」 諸「途方もない長寿との噂を聞いた事がありますが」 孫「ああ。士燮さえ死ねば交州を我らの手にできるだろう」 諸「ご面会される前にそのような…」 歩騭「殿！士燮殿とご長男士廞殿と参りました」

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士燮「士燮。字を威彦です」 士廞「私は士廞と申します」 孫「よくぞご決断されました。士燮殿。士廞殿」 燮「なんの。歩騭殿のご英断の鋭さに死ぬかと思いましたぞ」 歩「…私が呉巨を斬り捨てた件ですな」 燮「わしらではどうしようもなかった目の上の瘤です。取り除いていただき大変助かり申した」

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孫「ご長男は？」 廞「孫権様のお側でお仕えいたします」 孫「よし」 燮「なんと慈悲深い。有り難さのあまり死ぬかと思いましたぞ」 孫「なに？」 燮「いつ死ぬか分からぬ老い先短い我が身には、あらゆる事柄が死に直結しますでな」 孫「難儀な」 燮「道中も獣の吠え声で死ぬかと思いました」 孫「…」

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孫権…死ぬ死ぬ言ってるわりには到底死ぬように見えん血色の良さじゃないか？ 諸葛瑾…見るからに曲者ですね。 歩騭…あっという間に交州をあげて降伏する見切りの早さを逆に不穏に思った。

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士燮…驚異的長寿な交州の首領。一太守だったはずが、交州の混乱に乗じて自勢力をじわじわ拡大していた食えない男。あらゆる物事で死にかけるらしく、面会時は寝床が気持ち良すぎて死にかけたり、食事が美味しすぎて死にかけたらしい。 士廞…士燮の長男。人質という事で同行し、孫権から厚遇された。