三国志こばなし集2023年10月号(上)三国時代編

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曹丕「…」 司馬懿「陛下が無事にご帰還でされましたことに…」 曹「黙れ」 司「…」 曹「信じられん」 司(何やらかしたんだ？) 曹「賈詡は？」 司「陛下が出征中、お亡くなりに…」 曹「忌々しい！」 司(そんなにしくじったのか？) 曹「辛毗を呼べ」 司「直ちに！」 曹「くそっ！徐盛如きの策略で！」

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辛毗「辛毗只今参りました」 曹「お前と賈詡の進言の通りであったぞ…」 辛「ただ、一戦もされなかったように見受けられますが…」 曹「然りだ」 辛「」 司(…どうして戦わなかったんだ？) 辛「私と賈詡殿は諫言いたしましたが、一戦もなさらずご帰還なさったのは想定外で…」 曹「朕に言わせるのか」

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辛「お聞かせ願います」 曹「…徐盛の偽城の策にかかったのだ」 辛「…え？」 曹「長江の対岸を数百里と城壁が用意されているように見えたのだ」 辛「？」 曹「それらは全てハリボテで、朕や将校全員が騙されみすみす帰還しただけの戦だったのだ！」 司「ええ…」 呉質「だっさ！」 曹「呉質」 呉「」

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曹丕…後日孫権から此度の戦の醜態をからかい放題されたビデオレターが届いた。 司馬懿…偽城に騙されて十万の大軍を戦わせもしないで撤退させただと？ 辛毗…往復だけでどれだけ無駄な物資を使い果たしたことか… 呉質…曹丕直属の近衛兵兵卒として戦働きをするハメになった。

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李儒「呂布！力を貸してくれ！」 呂布「…なぜ俺が」 李「蔡邕殿がお呼びだ！」 呂「…今行く」 蔡邕「すまんな。読み書きどころか、内務の職務もできる軍人となったらお前しかおらんでな」 呂「あんたから頼られるのはやぶさかではないが…」 蔡「董卓様のこの施策をどう思う？」 呂「…改鋳だと？」

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李「銭の素材となる銅が足りんのだ」 呂「足りなければ足りないなりの銭を作るしかあるまい」 蔡「すると今の良銭の価値が暴落しかねん！」 李「悪貨は良貨を駆逐するのだ」 呂「…それで誰が困る？」 蔡「誰がとな？」 呂「俺は并州の武辺者でな。そもそも良い銭と悪い銭があった事すら詳しく知らん」

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李「良貨で蓄財した者が一番困るはずだ」 呂「その輩は董卓に叛旗を翻した輩と大差あるまい」 李「…そいつらから良貨を吐き出させる口実にできそうだ」 蔡「今後に大きな禍根を残す事になるだろうが…」 呂「袁紹らが俺たちに勝てたら食い止められたかもしれん」 李「ろくに戦いもしなかったからな」

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呂布…穀物の値上がりが深刻になろうが、俺らには関係ない。 李儒…良貨を吐き出させて悪貨を押し付けまくるえげつない施策を実行し、郿城を建てる資金調達に大成功。 蔡邕…不正蓄財した輩の因果応報ととるか、今後統治する者らにとんでもない因果を押し付けたととるか…

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夏侯玄「またお前は婚礼を断ったのか？」 荀粲「当たり前だ太初。あの女は自分の見栄えを何一つ分かっていない」 傅嘏「君の面食いも行き過ぎだと思うがな？」 荀「馬鹿を言うな。生涯を共に暮らす男女が双方の想いを一致させずに一生涯共に暮らせると思うか？」 夏「…君のように生きれれば素敵だが」

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荀「その通り！そもそも決まりきった家系の打算があった上での婚姻など、俺は男女共に誤っていると常々思っている！」 夏「…君の想いは分からなくもないが」 傅「それはそれ、これはこれで生きるのが、我らの父上たちではないかな？」 荀「お前はそれを太初の親父に言えるのか？」 傅「…」 夏「…」

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荀「俺は太初の親父を誤っていたと言いたいわけではないぞ？」 傅「じゃあなんと言いたいんだ？」 荀「夏侯尚殿が心の底から愛した女が初めから正室になれていたら、彼の悲劇など起こりようはなかったと言いたいだけさ！」 夏「奉倩！」 荀「悪い！お前は夏侯尚殿の妾の子ではなかったな！」 夏「…」

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荀粲…俺の目にかなう女がいたら、喜んで正妻に迎えて一生涯その女だけ愛しぬいてやるさ。 傅嘏…それが出来るなら妾などいらんだろうが。 夏侯玄…彼の親父は色々複雑な女関係を持った上で死んだ過去があるのであまり女に心を開けない。

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曹仁「豪雨が憎い！」 満寵「…」 曹「あの于禁殿が戦すらままならず降伏するなど酷すぎる天候が理由以外にありえまい！」 満「確かに于禁殿は迂闊に死ぬお役目ではないでしょうけれど…」 曹「もはや我らも関羽に降伏せざるをえぬのか！」 満「山の水は引くのが速く、この状況は長くは続きませぬ！」

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曹「それは于禁殿らも絶対に分かっていた事だと思う」 満「…」 曹「某もその言葉を信じていたが、この天候の有り様な訳だ、満寵」 満「…」 曹「無論某も部下も、みすみす関羽に降伏するくらいならば、喜んで死を選ぶ者しかおらぬのだがな」 満「…」 曹「この劣勢をなおも耐えて死ぬ大義があるか？」

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満「…あなたの愛馬を生贄に捧げていただきたい」 曹「ほう？」 満「あなたが関羽への降伏すら想定していたならば、その退路を断ち切るためにも」 曹「貴様は私が貴様以上に苦楽を共にしたかけがえのない友を、生贄に捧げろと言うのだな？」 満「あなたの決断の助けとなるなら何度でも死んでやります」

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曹仁…満寵の進言を受け、生涯の戦を生き抜いた愛馬を斬り捨ててでも、関羽に降伏しない道を選ぶ決断を示した姿勢を見せてのけた。 満寵…その進言をした上でいい加減に勝ったとしても私は曹仁殿の前で自裁する覚悟くらいありましたからね。