第二次世界大戦時のアメリカが運用した「軽機関銃(Light Machine Gun)」は一体何なのか?

M1919A4とM1919A6に関する話。BARに関する部分はまた動画にしたときにでも…(未定)
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漢陽造 @Gew88suko

突然ですが、皆さんは第二次世界大戦中の米軍が運用した軽機関銃(Light Machine Gun)は何か、分かりますか? 多くの方はBARを真っ先に思い浮かべたかと思いますが、実はBARは当時の米軍では決して「Light Machine Gun」とは呼ばれていませんでした。 pic.twitter.com/8zUEZhUBIs

2023-11-18 21:25:55
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漢陽造 @Gew88suko

BARはBrowning Automatic Rifleの略ですが、その名の通りあれは小銃の延長線上にある兵器でして… Automatic RifleあるいはMachine Rifleとして扱われていました。 では当時の米軍はいったい何をLight Machine Gunと呼んでいたかというと… 実は、M1919のことをLight Machine Gunと呼んでいたんです。 pic.twitter.com/2diz1dEk1j

2023-11-18 21:30:58
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漢陽造 @Gew88suko

現代においてLight Machine Gunという語は、ショルダーウェポン(ストックを利用して射撃する兵器)であり、個人で運搬可能な機関銃のことを指す語として用いられ 例えば、英語版ウィキペディア曰くBARも現代の定義ではLight Machine Gunに含まれるようですが、 en.wikipedia.org/wiki/Light_mac…

2023-11-18 21:33:12
漢陽造 @Gew88suko

当時の米軍としてはLight Machine Gunという語にそんな含意はなく… M1917やM2などの比較的重い機関銃(Heavy Machine Gun)に対して比較的軽量な機関銃だからLight Machine Gun、というだけの単純な考え方がされていたようなんです。 pic.twitter.com/SswUz8g8VM

2023-11-18 21:34:35
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漢陽造 @Gew88suko

現代の米国では、重機関銃(M2)よりも軽いけど「軽機関銃」ではない…ということで、M1919を指して「中機関銃(Medium Machine Gun)」と呼ぶことが多いみたいですね。 個人的にはあまり好きじゃない呼称ですけど en.wikipedia.org/wiki/Medium_ma…

2023-11-18 21:35:25
漢陽造 @Gew88suko

では、そんなLight Machine GunであるM1919は一体どのようなものだったのでしょうか。 第二次世界大戦中の米陸軍歩兵(ライフル)中隊は三個小銃小隊と一個火器小隊、及び中隊本部からなり、 M1919は火器小隊の軽機関銃班に属し、基本的に二基のM1919が配備されていました。 battleorder.org/post/usa-rifle…

2023-11-18 21:43:08
漢陽造 @Gew88suko

第二次世界大戦中に米陸軍歩兵が運用したM1919にはM1919A4とM1919A6の二種類が存在しています。M1919A6はM1919A4の改良型であり、1944年以降順次代替が進められていきました… 外見からすぐに分かるA6の特徴としては、簡易的なストックとBAR(M1918A2)のモノを元にした二脚の追加があります。 pic.twitter.com/GWKMBz9aPQ

2023-11-18 21:50:42
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漢陽造 @Gew88suko

機関銃を運用する際、当然戦場までの移動には自動車や馬が活用されますが、最前線ではそのような手段に頼ることはできず人力での運搬が求められます。 この際、日本の重機関銃などはハンドルを利用してそのまま運べるようになっているのですが… pic.twitter.com/ha5qLuRZLq

2023-11-18 21:58:08
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漢陽造 @Gew88suko

M1919A4では移動の際いちいち三脚から銃を取り外して二人で分担して運搬する必要があり、迅速な移動と射撃開始、つまり攻撃的な運用が困難でした。 そこで運用側の工夫として、三脚を外した状態で抱えて移動しそのまま射撃する訓練まで行われていたようなんですが… pic.twitter.com/V7iis50sFD

2023-11-18 22:01:54
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漢陽造 @Gew88suko

M1919A6ではストックと二脚を得たことでそのまま移動・射撃できるようになり、より機動的・攻撃的な運用が可能になったんです。 もちろん、機動性が求められない場面では従来通り三脚(tripod mount M2)に乗せて射撃を行うことも可能で、その場合ストックは簡単に取り外すことができました。 pic.twitter.com/AM9A5CEqFR

2023-11-18 22:11:58
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漢陽造 @Gew88suko

そのまま乗っけると1枚目みたいな感じなんだけど、 2枚目のように往々にしてストックと二脚のない状態で運用されたので… ぱっと見区別がつかないんですよね バレルジャケットの穴が少なかったり、よく見るとM1919A6だと分かるんですけど twitter.com/gew88suko/stat… pic.twitter.com/F6Mvqx8Nyn

2023-11-19 07:27:11
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漢陽造 @Gew88suko

元々ある筒状の突起に差し込んで、蝶ネジで固定してるだけなんですよね。 よくM1919A6のことを「M1919A4の軽機関銃(Light Machine Gun)化」と評価する人がいますが、個人的にはこれは的外れだと思っていまして。 だって、M1919A4の時点で米国的にはLight Machine Gunですからね pic.twitter.com/tl5BhEustm

2023-11-18 22:15:35
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漢陽造 @Gew88suko

この誤解を生んでいる原因の一つに、M1919A6の銃身がM1919A4のモノより軽量化されていることがあると思います。 本来の目的はおそらく銃身交換のためだと思うのですが、これについて説明するにはM1919の開発経緯をざっくりとでいいので、把握しておく必要があるでしょう。 pic.twitter.com/OtnwRZy6iA

2023-11-18 22:19:22
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漢陽造 @Gew88suko

元々、M1919は歩兵部隊が持つ水冷式機関銃であるM1917を空冷化し車載するために開発され、歩兵の装備としては運用されていなかったのですが、 水冷式機関銃の持つ様々な欠点が露呈したことで、戦間期には歩兵向け空冷式機関銃の採用が計画され… pic.twitter.com/XeM7WftnUP

2023-11-18 22:24:19
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漢陽造 @Gew88suko

オチキスやルイスガンの導入まで検討されたものの、結果的に国産設計であるM1919に新型三脚(tripod mount M2)を組み合わせた仕様が選択され、M1919A4として1936年末から量産が開始されました。 pic.twitter.com/Qb9f1ojiSQ

2023-11-18 22:29:12
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漢陽造 @Gew88suko

水冷機関銃というのは冷却水の存在を前提に設計するので、往々にして銃身が薄く… M1917を空冷化するためには、銃身を厚くする必要がありました。 ただ、銃身後退式であるためにヘタに銃身の重量を増やすと後退に必要な反動(≒砲尾圧)が足りず、作動不良を起こしてしまうんですね。 pic.twitter.com/faqfViSWft

2023-11-18 22:35:08
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漢陽造 @Gew88suko

この問題に対処するためにM1919(初代)からM1919A2までは銃身の厚さを確保する一方で、長さを犠牲に銃身を軽量化しており… M1917の24インチから18インチに短縮されているんですが M1919A4は歩兵部隊が運用する都合上既存のM1917と同じ射撃能力が求められたため、銃身長を犠牲にする選択は不可能でした pic.twitter.com/JCyuUirMNU

2023-11-18 22:47:42
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漢陽造 @Gew88suko

そこで、M1919A4は銃口にリコイルブースターと呼ばれる部品をつけて作動の安定を図っているのですが、 この部品のせいで銃口側から銃身を取り出すことができず、銃身の交換には機関部の分解が必要になっていました。 要は、戦場での銃身交換が現実的に想定されていなかったんですね。 pic.twitter.com/Cci9prROcq

2023-11-18 22:50:54
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漢陽造 @Gew88suko

(実際、当時のマニュアル等見てみましたがM1919A4の銃身交換については記載がありませんでした) そこでM1919A6はA4に対する「改良」として銃身を軽量化し、これによってリコイルブースターを除去。 戦場での銃身交換を現実的に想定できるようにしたんです。 pic.twitter.com/xar1Z2Dq0H

2023-11-18 22:55:25
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漢陽造 @Gew88suko

訂正:1943年4月発行のM1919A4のフィールドマニュアル(時期的にM1919A6導入前に制作)にはM1919A4の銃身交換のやり方がちゃんと記載されてました ただ、あくまで破損時の交換が許可されているだけで加熱時の交換は想定されていません archive.org/details/FM23-4… (画像間違えてたので張り直し) pic.twitter.com/9yt3m5dOK2

2023-11-19 00:38:39
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漢陽造 @Gew88suko

M1919A6の開発…すなわちM1919A4の改良は運用側からの要望が強く、兵器局側はM1919自体の設計の拡張性の無さから改良には消極的だったらしいんですが… 実際、一応運用側の要望は概ね叶ったものの、さまざまな無理が生じているんですよね。 pic.twitter.com/ziBG7IuCK4

2023-11-18 23:08:56
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漢陽造 @Gew88suko

機動性の面では二脚とストックが加わったことで銃身の軽量化を差し引いても重量が増大しており、個人で運ぶのはなかなか苦労するものでしたし 交換が可能になったとはいえ、軽量化により銃身一本あたりの継続射撃能力は低下していました。 多分、「改良」ではなく新規開発した方がよかったんでしょうね pic.twitter.com/EPJbI7aeCE

2023-11-18 23:16:58
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漢陽造 @Gew88suko

ちなみに1枚目が初期の仕様(WW2中生産)で、後年には2枚目のようにキャリングハンドルの更新やフラッシュハイダーの追加なんかがされてます 余計に重くなった? twitter.com/gew88suko/stat… pic.twitter.com/mXATdfz1sL

2023-11-19 07:54:41
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漢陽造 @Gew88suko

現代でも「重い軽機関銃」とか「不幸な妥協の産物」だとか揶揄され、酷評されるM1919A6ですが 戦争中に限られたリソースの中で既存の設計を極力維持しながら開発し… 実際に戦争中に配備を開始できたことは評価すべきなんじゃないでしょうか。 youtube.com/watch?v=5bg1nA…

2023-11-18 23:19:35