それから、 基礎知識は大事
イスラエル/パレスチナのことは、「複雑」という語られ方をしているので「複雑」だと思い込んでしまっていて、基礎的なファクトの確認もしないまま何となくぼんやりと把握している、という人は、非常に多いです。自分だって仕事や人の縁がなければそういうぼやっとした把握しかしてなかったかもしれない。
そして、そういうぼやっとした把握で今回の事態にニュースで接して、義憤というか、人として当たり前の「これはひどい」という感情を覚えたときに、翻訳ができる人ならば翻訳のハッシュタグに参加したくなるのが当然だと思いますが、どうかお願いです。必要最小限の基礎知識を入れてからにしてください。
例えば、パレスチナは「国」と認識されていません。日本政府宛ての署名の請願文で「イスラエルは隣国のパレスチナを攻撃している」という認識のものがあったのですが、とんでもない誤認です。岸田氏を含む外国の政治リーダーたちが口々に言っている "two-state solution" が何なのかを把握していたら、こんな誤認は絶対に出てこない。
ここをわかってない人でも署名を立ち上げることができるのがネット社会ですが、これがわかっていない人がイスラエル/パレスチナについて翻訳ということをするのは、あまりに危なっかしいです。たとえて言えば、ナトリウムなど基本的な物質の性質を知らない人が化学の論文を翻訳できるか、みたいなことです。
基礎知識がない方は、まず、基礎知識を入れるところからです。オスロ合意前に書かれたものですが(だから、話がすっきりしている)、高橋和夫先生の新書『アラブとイスラエル』(講談社現代新書の1085番)の第1章、第6章、第9章くらいはどうか目を通してください。
パレスチナについての書籍のリストは、別のまとめで一覧できるようにしてあります。
高橋先生では下記の本も紙版が復活して入手できるようになりました。こちらもおすすめです。
拙著『なるほどそうだったのか‼パレスチナとイスラエル』(幻冬舎、2010年)が緊急重版になります。長らく電子書籍版しかなかったので、喜んでいます。アマゾンでの古本の価格が1万円を超えていますが、暴落が予測されます。 pic.twitter.com/vTzYEXLdm8
2023-10-27 07:01:11