チェルノブイリと「放射線恐怖症」+UNSCEAR報告

“歴史を学ばぬ者は愚かにもそれを繰り返す。正しき歴史を学ばぬ者は単に愚かなだけである” (アケム・ドローム「歴史的事実の錯覚」より) 『チェルノブイリから広島へ』広河隆一著(岩波ジュニア新書) http://amzn.to/vWeknm 『チェルノブイリ報告』広河隆一著(岩波新書) http://amzn.to/uJD7zh   続きを読む
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taka(脱原発に家族で3票) @tak_iii

@quinoppie なるほど…ではなおさら「個人の感想です」などと原発推進に都合の悪い部分は貶めながら、チェルノブイリハートを否定するためだけにあの記事を引用している感がありますね…。

2011-12-27 03:44:18
Kino @quinoppie

@tak_iii しばらく前にも呟きましたが、きくちくんは、自分への批判を科学者への不信感にすりかえたりせずに、なぜ自分だけがこれほどたくさんの人から嫌悪されているのか、反省すべきだと思います。まあ、反省することはけっしてないだろうと思ってますがw

2011-12-27 03:44:35
Kino @quinoppie

@tak_iii だいたい、きくちくんは不誠実です。広河氏をdisっておきながら、自分にとって都合がいいときだけ利用するとは。「広河さんたちが昨日線量計が振り切れたと言ってたやつ、ちゃんと専門家も一緒に検証したほうがいいと思うんだよなあ」http://t.co/ARiJXTbr

2011-12-27 03:46:41
クリエネ(出口戦略なしの緩和がコロナ禍を引き延ばす) @morecleanenergy

【放射能恐怖症とは】1986年にチェルノブイリ事故が起こり、91年にIAEAがウィーンで健康への影響を報告し、「放射能の影響はなく、放射能恐怖症によるストレスの方が問題である」とした。だが、実際には88年ごろから、小児甲状腺がんが急増。http://t.co/bcqNDxl9

2012-06-07 20:36:38
クリエネ(出口戦略なしの緩和がコロナ禍を引き延ばす) @morecleanenergy

ということで、「放射能恐怖症」とはのちに疫学的に有意であると認められた甲状腺がんすら無視した言葉であり、そのウィーン報告の座長は長瀧重信だったことは覚えておこう。

2012-06-07 20:42:47
クリエネ(出口戦略なしの緩和がコロナ禍を引き延ばす) @morecleanenergy

「ラジオフォビア」「放射能恐怖症」という言葉を得々として使っている人を見ると、自分の愚かさをひけらかしたいとしか思えない。

2012-06-07 20:47:59
クリエネ(出口戦略なしの緩和がコロナ禍を引き延ばす) @morecleanenergy

さっきのリンクは今中哲二の文章だが、彼はチェルノブイリ事故時に降下物中の放射性物質を測定するなど、原発事故への関心は並々ならぬものがある。

2012-06-07 20:51:52
クリエネ(出口戦略なしの緩和がコロナ禍を引き延ばす) @morecleanenergy

チェルノブイリと「放射線恐怖症」+UNSCEAR報告 http://t.co/BiDjKrKFPf @waferwaderさんのまとめに収録されている私のツイートで、1991年のウィーン報告座長が長瀧重信とありますが誤りです。正しくは重松逸造です。訂正申し上げます。

2013-03-15 12:58:56
高岡 滋 @st7q

①Evidence based medicine(EBM)は、医学でよく知られた言葉だが、私は水俣病でRumor based medicine(RBM)を長年経験してきた。学会等で個人的に水俣病の話になると、データの話の前に「患者はホンモノなのか?」という言葉が返ってきたりする。

2011-12-27 22:32:25
高岡 滋 @st7q

②まずRumor(噂)に反応する心理的基盤は、「水俣病の実際のデータよりも、ニセ患者の有無が重要」という(個人的または集団的)潜在意識にある。これは差別・偏見であるだけでなく、被害や(水俣病など)疾患に関する情報への専門家のアクセス、科学的解明への道を閉ざしてしまうことになる。

2011-12-27 22:34:33
高岡 滋 @st7q

③今、原発問題で同様な現象が起きている。鼻出血、下痢、咽頭・皮膚症状などが放射線との関連でとりざたされると、それは、非科学的、過敏な、あるいはヒステリックな集団、個人、母親ではないかと医師がまず先に疑うなど。結果として、訴えある人々を診療したり調査したりする道を閉ざすことになる。

2011-12-27 22:42:20
高岡 滋 @st7q

④実際は、このような症状を見た場合、症状の地理的、空間的分布と曝露との関係、症状を起こしている人の特性、症状自体の特性を調査していくことにより、因果関係を推定できる。そして、因果の可能性があれば、そのような症状が被曝のサイン、警告となりうる。これは本来行政が率先してなすべきこと。

2011-12-27 22:43:37
高岡 滋 @st7q

⑤Rumor(噂)の特性は、それが表では語られず、裏で力を持つことにある。今、「風評被害」、「煽るな」等の言葉が裏から広められ、被曝や健康障害の細部に国民や専門家の関心が入り込むことが妨げられている。権力は、差別や偏見を好んで利用する。医師は、住民、患者、被害者に依拠すべき。

2011-12-27 22:49:00
高岡 滋 @st7q

⑥ニセ患者の噂が隆盛していた時期も、先達と私たちは、差別と偏見を恐れずに水俣病患者の話を聞き、診察をおこなってきた。何十年もかかったが、そのような粘り強い過去があって、現在の救済がある。私たちは、放射線被曝に関しても、(特に東日本で)話のできる医師を増やすために引き続き努力する。

2011-12-27 22:50:37
高岡 滋 @st7q

訂正です: 「地理的、空間的分布」→「時間的、空間的分布」 @st7q ④実際は、このような症状を見た場合、症状の地理的、空間的分布と曝露との関係、症状を起こしている人の特性、症状自体の特性を調査していくことにより、因果関係を推定できる。そして、因果の可能性があれば、そのような…

2011-12-28 07:47:45
CAVU @cavu311

「水俣と福島に共通する10の手口」は必読です。例えば,2、被害者や世論を混乱させ、「賛否両論」に持ち込む。3、被害者同士を対立させる。7、被害者を疲弊させ、あきらめさせる,など。アイリーン・美緒子・スミスさんに聞く 毎日新聞 http://t.co/Sv31WC4u

2012-02-27 17:00:14

特集ワイド:かつて水俣を、今福島を追う アイリーン・美緒子・スミスさんに聞く

 ◇共通する「責任逃れ」「曖昧な情報流し」 繰り返してほしくない「被害者の対立」

 「福島第1原発事故は水俣病と似ている」と語るのは、写真家ユージン・スミスさん(78年死去)と共に水俣病を世界に知らしめたアイリーン・美緒子・スミスさん(61)だ。今回の原発事故と「日本の公害の原点」との共通点とは何なのか。京都を拠点に約30年間、脱原発を訴えてきたアイリーンさんに聞いた。【小国綾子】

 「不公平だと思うんです」。原発事故と水俣病との共通点について、アイリーンさんが最初に口にしたのは、国の無策ではなく「不公平」の3文字だった。

 「水俣病は、日本を代表する化学企業・チッソが、石油化学への転換に乗り遅れ、水俣を使い捨てにすることで金もうけした公害でした。被害を水俣に押しつける一方、本社は潤った。福島もそう。東京に原発を造れば送電時のロスもないのに、原発は福島に造り、電力は東京が享受する。得する人と損する人がいる、不公平な構造は同じです」

 都市のため地方に犠牲を強いている、というわけだ。

 「『被害×人口』で考えれば被害量のトータルが大きいのは大都市で、少ないのは過疎地域かもしれない。でもこれ、一人一人の命の価値を否定していませんか。個人にとっては、被害を受けた事実だけで100%なのに……」

   ■

 アイリーンさんの原体験は「外車の中から見た光景」。日本で貿易の仕事をしていた米国人の父と日本人の母との間に育ち、60年安保反対のデモを見たのも、香港やベトナムの街で貧しい子どもたちが食べ物を求めて車の上に飛び乗ってくるのを見たのも、父親の外車の中からだった。こみ上げる罪悪感。「車の外に出たい」と強く感じた。

 両親の離婚後、11歳で祖父母のいる米国へ。日本では「あいのこ」と後ろ指をさされたのに、セントルイスの田舎では「日本人」と見下された。「日本を、アジアを見下す相手は私が許さない」。日本への思慕が募った。満月を見上げ「荒城の月」を口ずさんだ。

 アイリーンさんの「不公平」を嫌う根っこは、加害者と被害者、虐げる者と虐げられる者の両方の立場に揺れた、そんな子ども時代にあった。

 20歳の時、世界的に有名だった写真家ユージン・スミスさん(当時52歳)と出会う。結婚後2人で水俣に移住し、写真を撮った。日本語のできない夫の通訳役でもあった。患者と裁判に出かけ、一緒に寝泊まりもした。ユージンさんの死後は米スリーマイル島原発事故(79年)の現地取材をきっかけに、一貫して脱原発を訴えてきた。

   ■

 大震災後、環境市民団体代表として何度も福島を訪れ、経済産業省前で脱原発を訴えるテント村にも泊まり込んだ。テーブルにA4サイズの紙2枚を並べ、アイリーンさんは切り出した。「水俣病と今回の福島の原発事故の共通点を書いてみました」。題名に<国・県・御用学者・企業の10の手口>=別表=とある。

 「原発事故が誰の責任だったのかも明確にしない。避難指示の基準とする『年間20ミリシーベルト』だって誰が決めたかすらはっきりさせない。『それは文部科学省』『いや、原子力安全委だ』と縦割り行政の仕組みを利用し、責任逃れを繰り返す。被ばく量には『しきい値(安全値)』がないとされているのに『年間100ミリシーベルトでも大丈夫』などと曖昧な情報を意図的に流し、被害者を混乱させる。どれも水俣病で嫌というほど見てきた、国や御用学者らのやり口です」

 福島県が行っている県民健康管理調査についても、「被ばく線量は大したことないという結論先にありきで、被害者に対する補償をできるだけ絞り込むための布石としか思えません」と批判する。

 アイリーンさんが最も胸を痛めているのは、被害者の間に亀裂が広がりつつあることだ。「事故直後、家族を避難させるため、一時的に職場を休んだ福島県の学校の先生は、同僚から『ひきょう者』『逃げるのか』と非難され、机を蹴られたそうです。みんな不安なんです。だから『一緒に頑張ろう』と思うあまり、福島を離れる相手が許せなくなる」

 福島の人々の姿に、水俣で見た光景が重なる。和解か裁判闘争か。「水俣の被害者もいくつもに分断され、傷つけ合わざるをえない状況に追い込まれました。傷は50年たった今も癒えていません」

 だから福島の人たちに伝えたい。「逃げるのか逃げないのか。逃げられるのか逃げられないのか。街に、職場に、家族の中にすら、対立が生まれています。でも、考えて。そもそも被害者を分断したのは国と東電なのです。被害者の対立で得をするのは誰?」

 昨年3月11日、アイリーンさんは娘と2人、久しぶりの休養のため、アメリカにいた。福島の原発事故の映像をテレビで見た瞬間、胸に去来したのはこんな思いだ。「今からまた、何十年もの苦しみが始まる……」。水俣病がそうだったように。

 水俣病の公式確認は1956年。77年の患者認定基準を、最高裁は2004年、「狭すぎる」と事実上否定した。09年成立の水俣病特措法に基づく救済措置申請を7月末で締め切ることに対し、患者団体は今も「被害者切り捨てだ」と批判している。半世紀たってもなお、水俣病は終わっていない。

 「今、水俣の裁判闘争の先頭に立つのは50代の方々です。まだ幼い頃に水銀に汚染された魚を食べた世代です。だから、福島に行くたびに思う。小さな子どもたちに将来、『あなたたち大人は何をしていたの?』と問われた時、謝ることしかできない現実を招きたくないんです」

   ■

 3時間にわたるインタビューの最後、腰を上げかけた記者を押しとどめ、アイリーンさんは「これだけは分かってほしい」と言葉を継いだ。

 「水俣と福島にかかわっていて私自身、被害者と同じ世界にいると錯覚しそうになるけれど、でも違う。被害者の苦しみは、その立場に立たない限り分からない。分かっていないことを自覚しながら、被害者と向かい合い、発言するのは怖いです」

 しばらく黙考した後、「それでも声を上げようと思います。福島に暮らす人、福島から逃げた人の両方が、水俣病との共通点を知り、互いに対立させられてしまった構図をあらためて見つめることで、少しでも癒やされたり救われたりしてほしいから」。かつて水俣を、今は福島も見つめる両目が強い光を放っていた。

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 ■水俣と福島に共通する10の手口■

 1、誰も責任を取らない/縦割り組織を利用する

 2、被害者や世論を混乱させ、「賛否両論」に持ち込む

 3、被害者同士を対立させる

 4、データを取らない/証拠を残さない

 5、ひたすら時間稼ぎをする

 6、被害を過小評価するような調査をする

 7、被害者を疲弊させ、あきらめさせる

 8、認定制度を作り、被害者数を絞り込む

 9、海外に情報を発信しない

10、御用学者を呼び、国際会議を開く

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上田上葉 @waferwader

チェルノブイリとUNSCEAR報告から学べること。「放射線恐怖症」についても。 / “汚染地域における不安について | Facebook” http://t.co/6Qjuadwq

2012-02-26 22:58:01

汚染地域における不安について Ver. 1.0

作成: こどもたちを放射能から守る科学者ネットワーク 日時: 2012年2月25日 16:42


 
 本文書を通じて、「子どもたちを放射能から守る科学者ネットワーク」は、チェルノブイリ事故で汚染された地域の住民が放射線に対して抱いた「不安」を、現在、国際機関がどのように理解しているかを紹介し、その含意を示すことを目指します。なぜなら、福島第一原子力発電所事故後の状況を考えるに際してチェルノブイリ事故の教訓は重要であり、放射線被ばくに対する不安についてもそこから学べるものがあると考えるからです。とりわけ、放射線に対する不安や懸念がどの程度のものとして把握されたか、その要因についてどう理解されたか、それに対して注意すべきことは何かといったことは、重要な教訓になると考えられます。

 なお、本文章では「不安」に焦点を当てているために、放射線被ばくの健康影響そのものについては「子どもたちを放射能から守る科学者ネットワーク」が「過小評価」しているように映るかもしれません。私どもの健康影響に対する考えについては、複数の要望や声明等[i]に示しておりますので、そちらをご覧の上、ご判断いただけましたら幸いです。

 UNSCEAR(原子放射線の影響に関する国連科学委員会)はUNSCEAR 2000 Annex J[ii]において以下のように報告しています(para.384-386)。

“384.チェルノブイリ事故に関する多くの様相が人々に心理障害、ストレスおよび不安を引き起こしているとされてきた。移住、食品供給の変化および個人と家族の行動への制限を含む被ばく量を限定する意図での対策が取られて以来、事故は汚染地域内に住む人々の生活に長期的変化を起こした。これらの変化は、被害を受けた国々においては、ソ連邦の解体によってもたらされた重大な経済、社会および政治的な変化が同時に起こった。このような心理的な反応は放射線被ばくによってではなく、おそらく全体として事故を巡る社会的要因に関連する。

385.個人および家族の移住の意思決定は、しばしば高度に複雑かつ困難なものであった。人々は不安を感じ、科学的、医学的、政治的権威への信頼の欠如はその人々に自らが自制心を失ったと考えさせた。リスクを説明し、人々をなだめようと試みた専門家は、そのリスクを否定し、それ故に不信と不安を強化すると受け取られた

386.環境汚染は、当初なされたように放射線恐怖症(radiophobia)[1]とみなされるべきではなく、現実の、目に見えない、定量化も所在を突き止めることも困難な脅威とみなされるべき幅広い不安を生み出した。人々がリスクを把握するやり方の鍵となるのが、リスクに対して人々が行使できるコントロールの度合いである。一旦汚染地域で生活を続ける人々のQOLを改善するために対策が取られれば、多分住民と地方行政とのより良い協力のお陰で、社会的信頼の風潮は改善する。”

 すなわち、チェルノブイリ事故によって引き起こされた人々の不安については、以下の四点に留意すべきと考えられます。

1.チェルノブイリ事故後の人々の心理的反応(不安、ストレス、心理障害)は、直接、放射線によって生じたものではなく、様々な社会要因によって引き起こされた。

2.汚染が産み出した不安は、放射線恐怖症とみなすべきではなく、現実の目に見えない脅威とみなすべきである。

3.リスクを説明し、人々をなだめようとする専門家の試みは逆効果となり得る。

4.地方行政と住民の協力に基づく生活の質改善の試みと住民のリスクコントロール手段の確保が事態改善に役立つと考えられる[iii]。

 さらに、最新のUNSCEAR報告の一つ(UNSCEAR 2008: Volume II Annex D[iv], p.57-58)では次のように書かれています[v]。

“45.…チェルノブイリ事故は、放射線被ばく量とは関連しない大きな影響がいくつかあったことが知られている。その中には、将来への不安と苦悩によりもたらされた影響、およびその結果としての食事、喫煙習慣、飲酒、その他の生活スタイル要因の変化が含まれており、基本的には現実の放射線被ばくとは関係がない。…

46.チェルノブイリフォーラムは、コントロール集団と比べて、ストレス症状、抑うつ、不安(PTSDを含む)および医学的に説明できない身体症状、のレベルの上昇が被ばく集団に見出されると結論した。大抵、これらの状態は亜臨床的[vi]であり、精神疾患としての診断基準を満たすものではない。しかし、これらの亜臨床的症状は、食事、喫煙習慣、飲酒、その他の生活スタイル要因のような行動に重要な影響を与えた。チェルノブイリフォーラムの健康専門家グループは、自らが、これらの影響の原因帰属を放射線への恐怖、政府不信の問題、不適切なコミュニケーション、ソ連邦解体、経済問題およびその他の要因に割り振ることができないと結論した。それにもかかわらず、これら影響の顕著な割合が、放射線被ばくへと直接ではないにせよ、チェルノブイリ事故に帰属させることができるのは明らかである。”

 したがって、UNSCEARは改めて、

5.チェルノブイリ事故の結果として、人々が感じる不安、それどころか医学的に説明不能な身体症状が現実に存在する。

ことを認めています。さらに、

6.多くの場合、不安や身体症状のレベルは亜臨床的であるが、それが生活スタイルの変化を通じて、健康に影響を与えかねない。

7.不安や身体症状は放射線への恐怖を主因とするわけではなく、様々な要因の複合的な結果と考えられる。

としています。

 以上から、私たちは次のような教訓が引き出せると考えます。なお、当然ながら彼我の社会・政治・文化的状況の違いから来る人々や地域が抱える課題や問題の違いに配慮する必要があることは言うまでもありません。

① 人々が訴える不安や(現時点では医学的には説明がつかないかもしれない)身体症状を少なくとも現実のものとして受け入れるべきである[vii]。

② 専門家ですら人々の不信や不安を強化してしまった経験を重く受け止め、「放射線を正しく恐れる」あるいは「放射線の影響はにこにこ笑ってる人には来ない、くよくよしてる人に来る」といった程度の理解や言葉で人々の不安をなだめられる/人々を説得できるといったチェルノブイリ事故からの経験に反するような対応は厳に慎むべきである。いわんや不安を感じる人々が揶揄・中傷されるようなことなどが起こらないようにしなければならない。

③ (予断を持ってはならないとはいえ)幸いにも人々が抱える不安や身体症状は多くのケースで亜臨床的であると推測されるが、それが不適切な生活習慣等に結びつく可能性も考慮して、(放射線防護だけではなく)医療や保健衛生の専門家を汚染の深刻な地域に多数派遣し、住民の不安に対応できる体制を整えるべきである。その際には、それら専門家たちも①、②の点に十分配慮しなければならないことは言うまでもない。

 なお、念のため付け加えますが、「不安」を感じる人々はカウンセリングの対象であるといった主張をここでする意図は全くありません。カウンセリングの必要性の判断自体が個別具体的なケースを見た上での専門家の判断に属すべき領域です。

④ 政府や自治体は、信頼の回復のために何が必要であるかを、的確なエビデンスに基づいて理解し、必要な対策を実行しなければならない。そこでは、日本独自策を追求するのではなく、過去からの教訓としてUNSCEARの報告やICRPの勧告などの科学的知見に関する国際的な合意を参照すべきである。

(担当 調麻佐志)

  • [1]放射線恐怖症(radiophobia)という言葉は、放射線被ばくに対する「過剰」な不安を示す状況を表すネガティブなニュアンスを含む言葉です。医学用語としてのanxiety(不安症/不安神経症)、および日常語としてのanxiety(不安/懸念)に基づく2つの使われ方があると想像されます。いずれにせよ、放射線の安全に何らかの懸念なり不安なりを抱くこと自体はある意味で自然なことであり、恐怖症あるいはphobiaという言葉/ラベルについては、専門家の診断に基づく「病的」な症状がない場合、あるいは極度に過剰な不安があるという共通了解がない場合には使用を慎むべきと考えられます。

  • [i]http://www.facebook.com/ScientistsForChildren

  • [ii]http://www.unscear.org/docs/reports/annexj.pdf.

  • [iii]たとえば、住民の自発的な除染活動への行政の協力はその一例となりますが、汚染の度合いによっては活動自体が被ばくを招くことの無いように対策しなければなりません。また、このようなメリットが被ばく対策としての除染の優越を意味するわけではないことにも注意が必要です。

  • [iv]http://www.unscear.org/docs/reports/2008/11-80076_Report_2008_Annex_D.pdf

  • [v]引用箇所のみならず、報告書全体でradiophobiaという言葉が使われないことにも注目すべきでしょう。

  • [vi]症状ありと診断される基準未満という意味です。

  • [vii]つまり、気の迷いや科学知識の不足から来るあり得ない反応などの扱いをしてはならないということです。

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