スリー・ダーティー・ニンジャボンド #7
もう一方のマキモノもくるくると開かれながら飛び、鉄の芯が巨獣の頭を目潰しめいて打ち据える!「イヤーッ!」フロッグマンが腕を引くと、伸び切ったマキモノは再び巻き取られて手の中へ!交互にマキモノが巨獣の頭部を絶え間なく攻撃! 23
2011-12-22 17:42:24ゴウランガ!なんたるタクミ!これぞトラディショナルなマキモノ攻撃のワザマエである!江戸戦争において伝説のガマ・ニンジャは巨大な蛙にまたがり、マキモノを用いて敵を倒したという。フロッグマンの攻撃はこの歴史的攻撃を彷彿とさせ、当時のニンジャが見れば驚きに目を見張ったはずだ! 24
2011-12-22 17:46:12「イヤーッ!」さらにフロッグマンはマキモノを上下に打ち振る!スクリーンめいて舞い踊るマキモノには「生き残り達が道場」のオスモウ書体!雄々しい文字の背景には幻惑的な渦巻き模様が極彩色で描かれている!これが実際催眠的作用を及ぼすのだ!「イア!?イアッ!」巨獣が苦しみだす! 25
2011-12-22 17:50:30「ディスターブド=サン!久しぶりにアレをやる!」フォレストが駆け寄りながら指示した。「大将!ガッチャ!」ディスターブドは叫び返し、高く跳んだ。すると、おお、ゴウランガ!水銀めいたボディが空中で変形、ハープーンめいた剣呑な巨大長槍の形を取ったのだ!それを掴み取るフォレスト! 26
2011-12-22 17:59:58「ヌウウーッ!」フォレストがディスターブド槍を構え、トップスピードで助走!そして投擲!「ジェロニモ!」稲妻めいて飛ぶ水銀のハープーン!「イアーッ!イア!イア、アバーッ!」巨獣の胸の中心を深々と貫いた!ナムアミダブツ! 27
2011-12-22 18:10:47「ゼツ!」さらに、見よ!腹部にとりついたジェノサイドが、硬い腹筋を破り、そのバズソーをついに、振り抜く!「メツ!」「イア、オボーッ!」引き裂かれ、飛び出す名状しがたいハラワタの数々!悶え苦しむ巨獣!そこへ、さらに駆け来るは……ニンジャスレイヤーだ!「Wasshoi!」 28
2011-12-22 18:15:01「オボーッ!」四本の脚の中から元の頭の名残りが首を伸ばし、ニンジャスレイヤーめがけ強酸をガンフィッシュめいて噴きつける!ニンジャスレイヤーはジグザグに走り、これを回避!そして、跳んだ!「イヤーッ!」「イアアア!イーアイー!」胸に刺さった槍を引き抜こうともがく巨獣! 29
2011-12-22 18:24:54ニンジャスレイヤーは空中でドロップキックめいた両脚蹴りを繰り出す!ただの蹴りではない!その身体はドリルめいてキリモミ回転、ディスターブド槍を後ろから直撃!あまりの衝撃に柄の部分をクギめいて円く変形させるディスターブド!ニンジャスレイヤーはなおも回転!槍をねじ込む!ねじ込む! 30
2011-12-22 18:32:47「イイイイイヤァーッ!」回転!回転!回転!ディスターブドの形状がドリルめいて徐々に変形し、巨獣の胸板を抉り、心臓部を破壊し、背中を爆ぜさせて、飛び出した!「オゴゴゴッ!オゴーッ!」大穴を空け、断末魔の咆哮とともに痙攣する巨獣!サツバツ!ナムアミダブツ! 31
2011-12-22 18:33:12ディスターブドはスライム状に変形して地面に叩きつけられる衝撃を散らし、素早く人間体に戻る。不浄の獣の身体から、ジェノサイド、ニンジャスレイヤーが飛び降りる。邪悪ニンジャ・イヴォルヴァーの成れの果ての怪物は、四本の脚をわななかせ、震え、そして、爆発四散した。「サヨナラ!」 32
2011-12-22 18:42:38「嬢」揺さぶりながら呼びかける声とアルコール臭に、ワタアメは呻き、目を開いた。「私は!今の……アイエエ!」気を失う直前の光景がフラッシュバックしかかる。あの、醜く捻じ曲がった反自然の、ナムアミダブツ……だが、見下ろす包帯だらけの顔、その緑の目と目が合うと、彼女は我に返った。 34
2011-12-22 18:52:19少し離れた場所ではニンジャスレイヤーがアグラし、また、反対側にはフォレスト・サワタリと、サヴァイヴァー・ドージョーのバイオニンジャ達が焚き火を囲んでいる。フロッグマン、ハイドラ、ディスターブド。「ここは」「ああ。村外れだ」ジェノサイドが言った。「終わったぜ。……お前の件はな」35
2011-12-22 18:58:58「村の皆は……」ワタアメは呟いた。「……」ニンジャスレイヤーは無言でかぶりを振った。捻じ曲げられた人々は全て倒され、戻る事は無い。だが、少なくとも、これ以上、同様の悲劇が繰り返される事は無い。ワタアメは胸の奥に痛みを覚えた。大きく絶対的であるがゆえ、実感のわかぬ、喪失感を。 36
2011-12-22 19:02:57「私」「お前の事はまぁ、町まで送り届けるさ」ジェノサイドが言った。そしてニンジャスレイヤーを、サヴァイヴァー・ドージョーを見た。「この中の誰かがよ」「……え……」ジェノサイドは喉を鳴らした。そして立ち上がった。ニンジャスレイヤーもアグラを解き、立った。 37
2011-12-22 19:06:30「皆さん……」ワタアメが問おうとした。ジェノサイドは手振りでワタアメに下がるよう促した。フォレストはマチェーテを無言で構え、バイオニンジャの達の目が油断無く光る。ニンジャスレイヤーはゆっくりとジュー・ジツを構えた。ジェノサイドの鎖つきバズソーがガチャリと地面に落ちた。 38
2011-12-22 19:10:38……その後、彼らの間に何が起こったのか、いかなるやり取りが為されたのか。ワタアメはどこに生活を見出したのか。残念ながら、それはワタアメの手記にも残されていない。手記は彼女の手を離れたのち、所持者の不注意により破損し、この後に起こった出来事の記述は失われてしまった。 39
2011-12-22 19:20:55彼女自身が今、どこで何をしているのか。そもそも無事なのか……新たな家庭を見出したのか……あるいはオイラン、マイコの類になったのか……野垂れ死んだか……残された資料からは、知る由の無い事だ。そして三者の、その後の動きについても。それは、別の資料を辿るしかあるまい。 40
2011-12-22 19:23:43彼女の手記はしかし、少なくとも、確認できる部分に関しては……踊るような筆致で、三人のニンジャとの会話や、食事、空の色、サイバー馬の背中の揺れ心地を……短い旅の喜びを……鮮やかな非日常を、晴れやかに綴っている。 41
2011-12-22 19:28:31ゆえに我々としては願いたい、願うしかない。この、恐らくは生まれて以来、笑顔も無く、無知と貧困のなかで虐げられてきた哀れな娘の魂が、少なくともこのわずかな期間の旅の間には優しく解き放たれて、コトダマの永遠と、微かなりとも接続することができていたと。 42
2011-12-22 19:33:56今となっては世の中のマッポーもいよいよ厳しく、ただワタアメという名を頼りに方々探したとて、望む結果が得られるとは思えない。……いわんや、闇に生きるニンジャの行方をや。ゆえに、我々は、願う。ただ、願う。コトダマにつつまれてあれと。 43
2011-12-22 19:38:25