佐々木司氏による、中世ヨーロッパの各種の弓の解説

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佐々木 司 @TA5vWI4SfJVHCGa

軍事・歴史・地理等の分野で呟きます。中世ヨーロッパネタ多め。1番好きなのは、多分東ローマ帝国。1週間に1~2回くらい、歴史解説的なポストをしています。 浮上度:通常動力潜水艦 文章の綺麗さ:野獣先輩

佐々木 司 @TA5vWI4SfJVHCGa

■中世ヨーロッパで使用された弓 -1枚目:丸木の短弓(シンプルショートボウ) 当時の狩猟用途で使われたような、単素材で作成された全長が射手の身長の半分程の弓である。最大飛距離は100m程度といったところか。中世前半の弓兵の供給源は猟師や狩猟経験のある農民等の場合が多かった。(1/9) pic.twitter.com/RpkXvzhiFp

2024-02-17 17:38:50
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佐々木 司 @TA5vWI4SfJVHCGa

-2枚目:複合弓(コンポジットボウ) 遊牧民やその子孫・隣接文化圏で主に用いられた弓。主に短弓形式の物が多い。標準的な物だと最大飛距離は200m程度とされる。木材や動物の骨・腱・革といった複数の素材で作成された。取り回しが良く弾性に優れているため速射に向き、(2/9)

2024-02-17 17:38:51
佐々木 司 @TA5vWI4SfJVHCGa

1分間に最大20射が可能ともいわれる。弱点としては高温多湿の環境下では特に損傷しやすいところか。(3/9)

2024-02-17 17:38:51
佐々木 司 @TA5vWI4SfJVHCGa

-3枚目:長弓(ロングボウ) イチイの木材等の単素材で作成された全長が射手の身長程にも及ぶ長大な弓。ウェールズ・そしてイングランドの物は張力は標準的なもので45.4kg(100pb)程で、最大飛距離は300mにも及んだ。1分間に最大10~12射が可能。(4/9)

2024-02-17 17:38:51
佐々木 司 @TA5vWI4SfJVHCGa

この手の張力が非常に高い弓を満足に引くには、片手が目に見えて大きくなる程の訓練が必要で、射手の育成には時間を要する他にその環境を整えるのも難しい。(5/9)

2024-02-17 17:38:52
佐々木 司 @TA5vWI4SfJVHCGa

-弩弓(クロスボウ) 番えたボルトやクォレルと呼ばれる太い短矢を、押金を握るにより発射する機械式の弓。背筋力や梃子・巻き上げ機を用い、弓も板バネが使用されることもあり、強力なものだと200pbの張力の物もある。(6/9)

2024-02-17 17:38:52
佐々木 司 @TA5vWI4SfJVHCGa

しかし、矢の性質・台座による視界不良のため角度をつけた曲射には向かず、その運動エネルギーの高さを射程には十分転化しきれない。弓も最大飛距離の半分も越えるような曲射だと、まともな鎧を着用した兵士相手には効果があまり見込めないところがあるので極端に不利というわけではない。(7/9)

2024-02-17 17:38:53
佐々木 司 @TA5vWI4SfJVHCGa

最大の利点は射手の訓練も比較的簡単であることで、特に人口密度が高い地域で採用されやすい。最大の弱点は射撃レートの低さで、巻き上げ機の中でも両手を使うような物になると1分間に2発程度しか発射できない。(8/9)

2024-02-17 17:38:53
佐々木 司 @TA5vWI4SfJVHCGa

弓の文化圏を区分すると、混在もありますが1300年頃だと大雑把に下記の通り。 長弓:イングランド等 複合弓:東欧・中東・北アフリカ等 クロスボウ:フランス・ドイツ地域・イタリア半島・イベリア半島等(9/9) pic.twitter.com/opqUbw3kuG

2024-02-17 17:38:54
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