はすね氏による、中世欧州都市の水道等のインフラ整備について(なーろっぱの水代わりのアルコール摂取の根拠の無さについて)

読み応えがあるので、まとめました
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はすね @Re_113_Gnu

中世ヨ、英国蒸気とトーマス、日本中近世少々、野球、本、お笑い

はすね @Re_113_Gnu

「中世では水が汚かったので代わりに酒が飲まれた」という言説は、人々が中世という時代を総じて水道や井戸、給水泉の建設と拡大に努めていた事を認知してないが故の誤解だと思います。この時代はヨーロッパの人口増加の時代(前期・盛期)ですので、それだけ都市インフラも重要課題となってきます。→ pic.twitter.com/VSLMtrY4cZ

2024-04-07 13:02:46
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はすね @Re_113_Gnu

城壁に囲まれた都市、それ以外の農村や小都市など、中世世界全体において、水はありとあらゆる場所・場面で必要となります。例えば飲み水や料理、浴場、染色や皮革、農業や清掃、消火活動などなど… 水の確保と供給は人々の営みと社会運営に直結します。→ pic.twitter.com/uwpzhPI62g

2024-04-07 13:02:47
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はすね @Re_113_Gnu

“健康的で自然な飲み物を利用しよう。それが濁った貯水槽からでなく、澄んだ井戸や透き通った小川の流れから汲み上げた物であれば、時に身体と精神の双方に良い効果をもたらすだろう。” 9世紀カロリング期のフェリエール修道院長でありシャルル禿頭王の廷臣でもあったルプス・セルバトゥスの記述が→

2024-04-07 13:02:47
はすね @Re_113_Gnu

示すように、いくつかの記録や医学書では、良質な水のもたらす効果や重要性が説かれました。当時の水に関する記録は限定的ですが、それは必ずしも水が軽視され避けられていたというからではなく、水の利用と供給こそが普遍的で欠かせない物であったからこそ、言及が限定的になるのだと考えられます。→

2024-04-07 13:02:48
はすね @Re_113_Gnu

では当時の人々がいかにして水を確保していたのか?それは“遺構”という形で我々に教えてくれます。 代表的なものをいくつか提示しておきます。→ pic.twitter.com/4lZc5DwQsA

2024-04-07 13:02:48
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はすね @Re_113_Gnu

イングランドにおいては、13世紀ロンドンの「Conduit(導管)」が有名です。市外の水源から鉛製の管で水を引き、それを城壁内の各所に供給しました。このシステムはロンドン以外でも利用され、エクセターでは地下トンネルを介した水道管から各所に水が供給されました。→ pic.twitter.com/ReyLou1mpB

2024-04-07 13:02:49
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はすね @Re_113_Gnu

カンタベリーにあるセント・オーガスティン修道院には、12世紀頃に修道院近郊に石造りの貯水槽が建設され、そこから鉛管を介して修道院に水が供給されました。カンタベリーだけでなく、ヨーロッパ各地の修道院や教会はしばしば河川や水源近くに建設され、そこから水道施設を造り、水を供給しました。→ pic.twitter.com/xkH4OiOLhd

2024-04-07 13:02:49
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はすね @Re_113_Gnu

イタリアのシエナでは、水不足を解消するために12世紀から「ボッティーニ」と呼ばれる地下水道が市内と市近郊の井戸をつなぐように各地で建設されました。ヴェネツィアでは、市内の広場各所に天水井戸が設けられ、石と砂の濾過装置を使って雨水などを飲料水に変えました。→ pic.twitter.com/lyhpYnlSw4

2024-04-07 13:02:50
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はすね @Re_113_Gnu

こうした水道や井戸は都市当局によって管理され、ルッカでは当局が、ヴィッテルボでは「泉と道路の管理役」が水道・井戸の管理維持にあたりました。→

2024-04-07 13:02:51
はすね @Re_113_Gnu

中世フランス最大の都市パリでは、飲料水はセーヌ川から汲まれていましたが、人口増加に伴う汚染や排水の問題から、13世紀にはフィリップ尊厳王治下のもとパリの市壁拡大と共に、街路の舗装と排水管の設置が行われました。14世紀には、当時のパリ奉行を務めたユーグ・オーブリオにより、→

2024-04-07 13:02:51
はすね @Re_113_Gnu

モンマルトル通りに石造りの下水道が建設されました。このように、水に関わる供給施設はヨーロッパ各地に建設され、挙げだすとキリがありません。→ pic.twitter.com/suhqpBgvxD

2024-04-07 13:02:52
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はすね @Re_113_Gnu

確かに現代の様な浄水設備が無い中での良質な水の供給は困難ですが、当時の人々が持ち得る最大限の知識と技術を活用して水の供給にあたった事は間違いありません。そもそも酒やワインを薄めるのに水は必要でしたし、他のノンアル飲料もありました。→

2024-04-07 13:02:52
はすね @Re_113_Gnu

水は当時も普遍的なものでしたが、エールやワインは、そんな水に豊かな味付けをもたらすものだったので、水より好んで飲まれました。それは現代でも無味無臭な水よりもジュースやお茶、酒の方が好んで飲まれることと似たような物だったのでしょう。→ pic.twitter.com/ypmr6WC1R4

2024-04-07 13:02:53
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はすね @Re_113_Gnu

最後に、中世におけるヨーロッパ各都市・農村の水供給施設のリストを紹介しておきます。めちゃくちゃ長い記事なので読むときは念のためご注意ください。 fakehistoryhunter.net/2023/07/29/lis…

2024-04-07 13:02:53
なおすけ @naosukemove

@Re_113_Gnu これは船乗りの話とごっちゃになってると思うのです。 ちなみに船乗りはマジで水代わりに酒飲んでました。 そもそも水が腐るしね。 なので船乗りにアル中が多かったって話。

2024-04-08 09:47:29
ponta🎭 @claclaponta

@Re_113_Gnu アルコール飲料は1リットル飲むと1.1リットル、水分が出ていくと聞いたことがあって(お茶やコーヒーの比ではない) ただ「水が汚いからビールでのどを潤した」という話も昔からあるので 今後の研究がまたれますね

2024-04-08 09:49:55
Charlie @tomomandias

@Re_113_Gnu 酒や茶はアルコール分解のためにさらに水分が必要になるし利尿作用があるので水分補給にならないのに当時の人は大丈夫だったのか?とずっと疑問でした

2024-04-08 07:22:18
糸石 浩司 @itoishi

@Re_113_Gnu 「人々が中世という時代を総じて水道や井戸、給水泉の建設と拡大に努めていたか」と、その結果として「清浄な水がふんだんに得られたか。水が汚かったので代わりに酒が飲まれたか」は別事象ですよ。 「水の獲得に勤しんだ」が「ふんだんには得られなかったため代わりに酒を飲んだ」は並立し得ます。

2024-04-08 06:03:17
ワルドDQ10 @mori031

@Re_113_Gnu 水道に関する資料ありがとうございます 元々町や修道院は、水のある所に築かれたということですよね。 ただ中世といっても幅広いので、どの時代かで変わりそうな気がします。 上水はローマ時代の遺構もありますし、歴史は深そう 逆に下水も14世紀のパリにもあったんですね そのわりには汚いイメージ

2024-04-08 16:17:33
◆◇妙維◇◆ @Myoui00

@Re_113_Gnu 水がお酒より高価だったので、お酒が飲まれた〜だと思っていました

2024-04-08 08:34:32
F.Nakajima @Funakajima

@Re_113_Gnu いくつか疑問点がある。 a.調べてみたが、中世ヨーロッパのビール類の生産量及び消費量は現在の我々から見て異常といえるレベルだ。 例えばキリンビールの「中世ヨーロッパでは、現在の日本と比べると、はるかにたくさんのビールを飲んでいた」というHPを見るとよくわかる。

2024-04-08 19:37:28
ブロジー @hananoyouseibur

@Re_113_Gnu まぁ中世ヨーロッパの水関係は設備投資はされててもイギリスのコレラ話でメチャ悪いイメージが付いちゃってるよねぇ。

2024-04-08 09:09:35
tunenuki0 @tunenuki0

@Re_113_Gnu こういう水道施設からの水も、沸かして飲んでいたんですよね、当然。

2024-04-08 10:14:30