山本義隆著「福島の原発事故をめぐって いくつか学び考えたこと」のポイントまとめ~原発問題が俯瞰できる!
- nusubito_hana
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95.1940年代に確立された国家統制的な産業活動の秩序は、敗戦後も維持され、むしろ軍部が解体されることにより、通産省は敗戦前よりも更に独占的な統制権を掌握することになった。原子力発電は、この国家統制事業的性格を濃厚に残したまま今日に至っている。
2012-01-02 20:37:0996.通産省は原子力産業の保護育成のために、沸騰水型軽水炉と加圧水型軽水炉をそれぞれ年平均1基程度ずつ建設するよう電力業界に要請し、電力業界がそれに応える形で九社による分担計画を作り、それを実施してきた。つまり、電力会社は社会主義計画経済のノルマ達成の優等生であった。
2012-01-02 20:39:4797.市場原理に委ねたならばその収益性からもリスクの大きさからも忌避されるであろう原子力発電に対する異常なまでの国家の介入と電力会社に対する手厚すぎる保護は、弱者保護の対極にあり、極めて由々しき結果をもたらしている。
2012-01-03 16:49:3398.税金を用いた多額の交付金によって地方議会を切り崩し、地方自治体を財政的に原発に反対できない状態に追いやり、優遇されている電力会社は、他の企業では考えられないような潤沢な宣伝費用を投入することで大マスコミを抱き込み、頻繁に生じている小規模な事故や不具合の発覚を隠蔽して・・・
2012-01-02 20:47:1599.・・・安全宣言を繰り返し、ボス教授の支配の続く大学研究室を寄付講座という形でまるごと買収し、こうして地元やマスコミや学界から批判者を排除し翼賛体制を作り上げていったやりかたは、『原発ファシズム』というべき様相を呈している。
2012-01-02 20:49:21100.ほとんど唯一の有効な異議申し立て人になりうる骨のある有能な地方自治体の長に対しては、前福島県知事の起訴に見られるように、冤罪すら仕組まれている。プルサーマル計画に抗った佐藤前福島県知事に対する東京高裁の判決は「賄賂かがゼロ円」の収賄罪という奇怪なものだった。
2012-01-03 16:49:43101.かくして、政・官・財一体となった“怪物的”権力がなんの掣肘もうけることなく推進させた原子力開発は、そのあげくに福島の惨状を生み出した。
2012-01-02 20:54:48102.経験主義的にはじまった水力や風力あるは火力といった自然動力の使用と異なり「原子力」と通称されている核エネルギーの技術的使用、すなわち核爆弾と原子炉は純粋に物理学理論のみにもとづいて生み出された。核爆弾はその可能性も作動原理も100%物理学者の頭脳のみから導きだされた。
2012-01-02 21:00:56103.原子炉はその副産物◎ここではじめて完全に科学理論に領導された純粋な科学技術が生まれたことになる。しかし、理想化状況に適用される核物理学の法則から現実の核工業(原爆と原発の製造)までの距離は極限的に大きく、その懸隔を架橋する過程は巨大な権力に支えられてはじめて可能となった
2012-01-02 21:05:41104.その結果は、◎それまで優れた職人や技術者が経験主義的に身につけてきた人間のキャパシティの許容範囲の見極めを踏み越えたと思われる。
2012-01-02 21:07:34105.第一にそのエネルギーは一度暴走はじめたならば人間によるコントロールを回復させることがほとんど絶望的。チェルノブイリにしてもフクシマにしても、大きな原発事故の終息には、人間の一世代の活動期間を超える時間を要する。そしてその跡地は何世代にもわたって人間の立ち入りを拒む。
2012-01-02 21:10:30106.このような事故のリスクは個人はもとより企業でさえも負えるものではない。その上、廃棄物が数万年にわたって管理を要するということは、どう考えても人間の処理能力を超えている。
2012-01-03 16:49:54107.第2に、原子力発電は建設から稼動のすべてにわたって、肥大化した官僚機構と複数の巨大企業からなる“怪物”的大プロジェクトであり、その中で個々の技術者や科学者は主体性を喪失いてゆかざるを得なくなる。プロジェクト自体が人間を飲み込んでいく。
2012-01-02 21:58:28108.【重要】3月11日の東日本の大震災と東北地方の大津波、福島原発の大事故は、自然に対して人間が上位に立ったというガリレオやベーコンやデカルトの増長、そして科学技術は万能という19世紀の幻想を打ち砕いた。
2012-01-02 22:01:48110.【重要】自然にはまず起こることのない核分裂の連鎖反応を人為的に出現させ、自然界にはほとんど存在しなかったプルトニウムのような猛毒物質を人間の手で作り出すようなことは、本来人間のキャパシティを超えることであり、許されるべきではないことを、思い知るべきであろう。
2012-01-02 22:05:52111.どのみち以前のような右肩上がりの成長経済は既に行き詰っていたのであり、電力事情に関わらず、早晩、生産と生活のあり方の転換が求められていたのである。それどころか経済成長が資源の浪費と環境破壊で地球の危機を招来していることは、既に3~40年も昔から言われていたことである。
2012-01-02 22:09:29112.そしてまた、核兵器の所有が大国のしるしであり、核技術の保有が国際社会における発言力を与えるというような大国主義的で倒錯した観念こそが、アジアに緊張をもたらしているのである。そのようなアジアに背を向けた観念は打ち壊さなければならない。
2012-01-02 22:11:41113.日本人はヒロシマとナガサキで被曝しただけではない。今後日本は、フクシマの事故をもってアメリカとイギリス、そしてフランスについで太平洋を放射性物質で汚染した4番目の国として、世界から語られることになるであろう。
2012-01-02 22:13:46114.この国はまた、大気圏で原爆実験をやったアメリカやかつてのソ連とならんで、大気中に放射性物質を大量に放出した国の仲間入りもしてしまったのである。
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