シャドー・コン #4

翻訳チームによるサイバーパンク・ニンジャ活劇小説「ニンジャスレイヤー」リアルタイム翻訳 (原作:Bradley Bond-san & Philip Ninj@ Morzez-san) ニンジャスレイヤー公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 続きを読む
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ハイク?インガオホー?え……」アイアンリングの目が光る!そして、な、ナ、ナムアミダブツ!「イヤーッ!」水平に振り抜いたチョップが!スクランブラーの首を!刎ね飛ばした!「アバーッ!?サヨナラ!」おお……なんたるオーバーキル!スクランブラーの身体が爆発四散!ナムアミダブツ! 19

2012-01-05 14:45:41
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

クルクルと回りながらスクランブラーの首は天井のシメナワを飛び越え、「喜び」と書かれた巨大ショドーにぶつかって、客席のどこかに落下した!「アバーッ!?」ショックのあまりタネバは失禁し吐血!転倒して痙攣!「……!」「……!」それまで騒いでいた観衆は言葉を失い、沈黙!サツバツ! 20

2012-01-05 14:51:16
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「アイアン……」モミジは最後まで名を呼べず、ただ凍りついて、リングの上の地獄戦士を……客席を睨みわたす恐るべきニンジャ存在を見上げた。観衆は声を出せずにいた。古事記の伝説……安易な気持ちで開けてはならぬフスマを開け、ニンジャのワザを見てしまった、あのウカツな老人めいて…… 21

2012-01-05 14:56:56
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「なんたる決断的むごたらしさ!」グランドマスター専用桟敷席のサラマンダーは嬉しそうに言った。この茶室からの観戦が許されるのは彼と彼が許す人間に限られる。今は彼を含め、ただ二人である。「見よ、ユカノ=サン。この、阿呆めいて沈黙する者らを。たまらんな」「……」 23

2012-01-05 15:40:29
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「奴ら、己の目にする物の意味を今更ながら知ったのだ。気楽なアソビとして扱って良いものではないのだ、殺し合いは。ましてやニンジャのイクサはな。ハッハハハハ!」「……」「だが、場が白けきっておるに任せては収益も上がらぬ」彼は通信機を取る。「シャカリキを振舞え。早々にショーを」 24

2012-01-05 15:45:53
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ドンツクドンツクスポポンブブーン、ドンツクドンツクブブンブーン。パオンパオンパオンジョワーン。パオンパーン。「ドーモ皆さん!アイアンリング=サンの勝ちでした!」「ワー!スゴーイ!」片付けられたリングに上がる出っ歯プレゼンテーターとハイレグ水着オイランが空虚な笑顔を振りまく。 25

2012-01-05 16:02:14
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「モー、どう?アマイコ=サン、どう?いまのアイアンリング=サン!」「……アーン!スゴーイ!スゴイだったですゴルダ=サン!アタシいま体温何度あるのかなーッ!?」「こらこら、ダメ!興奮しすぎては!」指でXの印を作り、出っ歯プレゼンテーターのゴルダが咎める。「……興奮しすぎては!」26

2012-01-05 16:08:07
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ゴルダは静まり返った観客席を空虚な笑顔で見渡す。それからハイレグ水着姿のアマイコをもう一度見た。「……興奮しすぎては!」「アーン!」アマイコが身体をくねらせた。ゴルダはその豊満な谷間に素早い視線を走らせたのち、マイクに叫んだ。「でも観客席の皆さんは興奮していいんですよ!」 27

2012-01-05 16:13:46
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……アーン!」アマイコがやおら水着をはだけた。白い胸が露わになり、客席が沸いた。「そうでしょう!ハイ!そこでだ!今シャカリキ・ガールが特製タブレットと特製バリキを配ってますよね?成分は、な、なんと!ここだけの限定配合ですよ!さあ飲んで!飲んでしまって!」「ワー!スゴーイ!」28

2012-01-05 16:18:03
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

どんよりとしていた客席に、次第に下卑た高揚アトモスフィアが戻りつつあった。薬物。薬物である。ほとんど違法行為だ。マッポー!シャドー・コンとはモラルの極北か!?アマイコは微笑んで水着を戻し、リングサイドを指差した。そこには巨大な丸い金網がある! 29

2012-01-05 16:21:16
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ア、アイエエエ」金網の中では打ちひしがれた若い男が一人で震えている。金網の形状は……ハムスタードロイドをご所有の方ならおわかりになろう。中で走って無限に回転させる、例のあの運動具だ。「ドッソイ!」「アッ、ハッキョーホ!」それを四人のスモトリが持ち上げる!「アイエエエ?」 30

2012-01-05 16:25:48
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

四人のスモトリは金網をリング上に設置し、シコを踏んだ。ゴルダが煽る、「ハイ!さあ何回転?この戦士は果たして何回転できるか!ここでも賭け事だ!皆さん儲かり過ぎて私は実際嫉妬心だ!レートもスゴイ!」キャバァーン!看板モニタに魅力的数値が表示されると、観衆は狂ったように叫び出した。31

2012-01-05 16:35:16
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「3.2.1。スタートドスエ。カラダニキヲツケテネ!」合成マイコ音声が鳴り響き、男は必死に走って金網を回転させ始めた。首輪が光る!「ワオオー!」「もっと走ってェー!」群衆は叫び、口々に囃し立てる。そこにはもはや先程のオツヤめいて深刻なアトモスフィアは皆無!ナムアミダブツ! 32

2012-01-05 16:51:08
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

……「ま、当然あの男の末路はわかろう。借金はせぬほうがよいぞ、ユカノ=サン。特にギャンブルで身を持ち崩すなど、無意味の極み」サラマンダーは眉をしかめるユカノを見た。「ほう!不快の感情をあらわせるのか、ユカノ=サン」「ハイ」「なかなか一筋縄では行かぬな!」 33

2012-01-05 16:59:42
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

サラマンダーはモニタを睨み、トーナメント進行を確認した。「次のカード……フフフ、オムラの試作機」サラマンダーは笑った。「対戦者はランバージャック?万に一つも勝ち目無し。フフフ」「……」「いきおい、アイアンリング=サンの次の相手はこのロボニンジャだ。モーターナガサマ」 34

2012-01-05 17:36:53
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

サラマンダーは気だるげにリングを見やった。先程の余興は、多重債務者ランナーの心停止と、出っ歯プレゼンテーターのゴルダが不慮の事故に巻き込まれ爆発死したことで盛況のうちに終了した。リングに上がるのは木こりめいたニンジャ装束のニンジャ。対するは、無骨なシルエット……。 35

2012-01-05 17:41:55
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ドーモ、ランバージャックです」ランバージャックは怪訝そうにアイサツした。「ドーモ!モーターナガサマ、デス!」ロボニンジャは無骨なシリンダー型の腕をバンザイし、アイサツした。灯台めいたフォルムの頭部がアイカメラを光らせる。「破壊!貴方の降伏は現在認められない設定下ドスエ!」36

2012-01-05 18:18:04
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

茶室風の選手控室、落ち着かなげに歩き回っていたモミジは、UNIX画面に映し出されたIRC中継映像に釘付けになった。リアルタイムの試合運びを見逃した彼らが目撃したのは、ストレッチャーで運ばれる遺体だ。木こりめいたニンジャ装束……鎖骨から上が、抉られたように消失している。 38

2012-01-05 19:03:46
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「おい……ふざけるなよ……どこをどうやったらこんな死にざまになるんだ。ジツか?」モミジが震撼した。「モーターナガサマ……?」「オムラだろう」アイアンリングが超然として答えた。「オムラ・インダストリのロボニンジャのシリーズはそんな名前の付け方をする」「ロボだと?」「そうだ」 39

2012-01-05 19:15:58
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ロボってお前」「おおかた、大会を利用した対ニンジャの実戦テストと言ったところだ」アイアンリングは言った。「こんなところで出くわすとは思わなかったが、驚きはしない。武器禁止のシャドー・コンで格闘戦のデータでも取る気か」「お前……詳しいな」モミジは呻いた。 40

2012-01-05 19:24:31
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「経験がある」アイアンリングは答えた。モミジは不安げに、「だが、こんなデタラメな破壊力のカラテ……」「問題ない」アイアンリングは無感情に言った。「今までに何体も壊してきた。オムラのロボなど、くだらん人形だ」「お前……」モミジは息を呑んだ。「お前は何者なんだ?」 41

2012-01-05 20:06:09
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

何度も為された質問だ。アイアンリングはモミジの目を見返した。両者はしばらく黙っていた。やがてモミジが言った。「カタキをありがとうよ。そのう、アイアンリング=サンはいい奴だった。俺の夢だったよ」手持ち無沙汰げに、ケータリングのスシを食べた。「思いの外、スカッとしなかったな」 42

2012-01-05 20:18:06
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「そうだ」アイアンリングは頷き、低く言った。「そういうものだ」「そうか。そういうものか」モミジは頭を掻いた。「ままならねえな……」「ままならん」その瞬間の二人は、老若が逆になったかのようであった。「アイアンリング=サン」フスマがノックされた。「おられますか。第二回戦です」 43

2012-01-05 20:23:59