東浩紀「WEB文学論」早稲田大学 ゼロ年代の想像力 ほしのこえ

指定テキスト『動物化するポストモダン』『ゲーム的リアリズムの誕生』 次回講義 http://togetter.com/li/26398 丸山真男 仮面ライダーディケイド 文責・採録責任:[削除] 編集・構成:@millionsage
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@khiguchi0205

東「あと仮面ライダー龍騎のキャッチコピーが『戦わなければ生き残れない』というんですが、そういう感じです。決断主義っていうのは」

2010-05-27 16:51:15
@khiguchi0205

東「で、宇野くんはここからがショボいんですけど笑 彼は「友達から始めよう」と主張するわけですね。「世界は救えないし、引きこもれない」から、周りの小さな共同体の中で生きる、と。そして彼は宮藤官九郎やよしながふみなんかの作品がそういうのを描いていると主張しているんです」

2010-05-27 16:54:05
@khiguchi0205

東「『ゼロ年代の想像力』の内容はこんなところです」

2010-05-27 16:55:03
@khiguchi0205

東「先週リベラリズムの話も少ししたので、政治哲学の話をすると、最近マイケル・サンデルって人がいて、彼はコミュニタリアン、つまり「共同体大切にして生きていこうぜ」みたいな人なんですけど――ちょっと他の政治哲学の話もしましょうか」

2010-05-27 16:57:29
@khiguchi0205

東「まあ大体リベラリズム、リバタリアニズム、コミュニタリアニズムみたいなのがあるんですけど、すごい簡単に言えば、リベラリズムが「あらゆる他者について考える哲学」でリバタリアニズムが「個人主義、自己責任の哲学」」

2010-05-27 17:01:08
@khiguchi0205

東「で、コミュニタリアニズムが「リベラリズムみたいにみんなのこと考えるの無理だから、せめて共同体についてだけは真剣に考えよう」みたいな話です」」

2010-05-27 17:01:37
@khiguchi0205

東「ポストモダンと呼ばれるようになってから、大文字の『正義』が消えて、それに合わせて、「とことん正義」「正義無理」「限界あるから近いとこから」派の政治哲学も3つに分かれた、と」

2010-05-27 17:03:48
@khiguchi0205

東「そして、宇野くんの本が素晴らしかったのは、『日本のサブカルを論じることで、結果的に、リベラリズムとリバタリアニズムとコミュニタリズムの3つの類型を全て取り出した』ということにあるんです。彼は気付いていませんでしたが」

2010-05-27 17:05:43
@khiguchi0205

東「つまり、宇野くんの分析を考え直したとき、セカイ系=リベラリズム、決断主義=リバタリアニズム、『友達から始めよう』=コミュニタリズム、という類型化が可能である、と」

2010-05-27 17:07:34
@khiguchi0205

東「それではまずセカイ系を理解するために、セカイ系の代表作である『ほしのこえ』を観てみましょう」

2010-05-27 17:09:03
@khiguchi0205

東「『ほしのこえ』の解説をすると、なんか未来で、宇宙人が攻めてきてて、女の子が徴兵される、と。そして女の子とその彼氏間のメールが、女の子が宇宙へと、遠くに行けば行くほど届きにくくなってしまう、というのが話のキモです」

2010-05-27 17:13:37
@khiguchi0205

東「主人公の女の子は制服を着たままロボットに乗って戦うのですが、戦争の理由も、徴兵の理由もなぜか説明されていない、と。そういう作品です」

2010-05-27 17:15:13
@khiguchi0205

東「そういうわけで『ほしのこえ』でした。新海誠やっぱり才能ありますね笑」

2010-05-27 17:32:05
@khiguchi0205

東「当時(2002年)これが評価されたのが、技術的な側面の話をすると、この作品を新海誠は、一人で家庭用パソコンで作ったということですね。しかも半年とかで。まあそれはいいんですが」

2010-05-27 17:34:06
@khiguchi0205

東「作品論をすると――まあ典型的なセカイ系なんですが――社会が全く描かれていない、軍隊とかの設定の描写がなされていない。そして世界の破滅と宇宙人との戦いが主人公たちの恋愛と等価であるということです」

2010-05-27 17:36:49
@khiguchi0205

東「草食系男子の恋愛ファンタジーというかね、『リアルのゆくえ』っていう大塚英志と僕との対談本があるんですが大塚英志は男主人公の「無力さ」つまり「不能な自分の自己肯定」みたいなのをすごく批判してます。そしてそれは宇野くんのセカイ系批判にも繋がってくるので重要な議論かもしれません」

2010-05-27 17:40:09
@khiguchi0205

東「しかし新海誠っていうのはやはりすごい作家で、あれは『手紙が届かない』って話なんですよ、言うまでもなく」

2010-05-27 17:41:14
@khiguchi0205

東「『手紙が届かない』ことに関する細かい描写はないけど、そこに映像の断片やリリカルな音の断片やらが重なって、なんか観てる人にカタルシスを与える、と。そこの作り方は映像作家として素晴らしいものがあります」

2010-05-27 17:43:26
@khiguchi0205

東「あと『ほしのこえ』が面白いのは、過去のSF作品から色んなイメージを引用してることですね。エヴァンゲリオン、ナデシコ…みたいな」

2010-05-27 17:45:18
@khiguchi0205

東「セカイ系の代表として『エヴァンゲリオン』がよく挙げられますが、少女漫画的な「運命感」「恋愛」「無力感」が純化された『ほしのこえ』みたいな作品が生まれ始めたのはゼロ年代からですね」

2010-05-27 17:47:58
@khiguchi0205

東「あと『ほしのこえ』は副音声で聞くと、新海誠と彼の当時の彼女が声優やってるんですが、これがマジアツイんですよ!この私小説的な展開が!なんかどうやら新海さん自身のエピソードとして「彼女に自分の思いを伝える」プライベートフィルムみたいな作品背景があって面白いんですけどね」

2010-05-27 17:51:16
@khiguchi0205

東「SFファンタジーに変形した私小説、みたいな面白さがあるんですよね。新海さんの作品は大体『傷つきやすい私=キャラクター』みたいなところがあってね……、あと重要なイメージとして『教室=セカイ』という点があります」

2010-05-27 17:55:15
@khiguchi0205

東「想像力を描くことができる場所が『教室』という閉じた社会にしかできなくなった、というのは重要ですね」

2010-05-27 17:57:13
@khiguchi0205

東「『ほしのこえ』『バトルロワイヤル』『ノブタをプロデュース』『涼宮ハルヒの憂鬱』……、ゼロ年代は教室文学の時代だったということも言えるかもしれません。そういう想像力のイメージの元ネタは多分全共闘だと思うんですが……」

2010-05-27 17:59:58
@khiguchi0205

東「今日はなんか『ほしのこえ』を観て感動してる俺なんかもいて、ちょっとぼやぼやした感じになっちゃったな……」

2010-05-27 18:02:04