アウェイクニング・イン・ジ・アビス #5

翻訳チームによるサイバーパンク・ニンジャ活劇小説「ニンジャスレイヤー」リアルタイム翻訳 (原作:Bradley Bond-san & Philip Ninj@ Morzez-san) ニンジャスレイヤー公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 続きを読む
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

コォン……何かが鳴った。木が打ち鳴らされるような音が。消滅するシャドウウィーヴの懐から、ヌンチャクが弾き飛ばされた。『神器への運命者の介入を許可しない』男とも女とも取れぬ声が降ってきた。誰もがヌンチャクを見上げた。それはクルクルと回転しながら、元あった場所へ飛行する。 50

2012-02-03 18:20:32
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

奥の円型穴の中心、鍾乳石の足場上、黒檀のニンジャ像が動いた。飛行するヌンチャクを掴み取り、護るように抱え込んだのだ。『運命者の介入を許可しない』超自然の声が繰り返した。マスタートータスはその場のニンジャ達にまるで頓着せず、重大な関心事であるかのように、そちらへ首を巡らせた。 51

2012-02-03 18:31:33
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ニンジャスレイヤーは眼前の状況を整理した。ガンドーは門の外だ。対峙するニンジャが多過ぎる為、彼はガンドーを待機させた。広間の中央には黄金のダルマ。そしてさらに奥。あれがヌンチャク。神器とやらだ。マスタートータス。ダークニンジャの手の者。ゼンダともう一人は?ザイバツ?違う。 52

2012-02-03 18:37:38
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「おいてめェ!名乗れよ。俺はデスドレインだ」ニンジャスレイヤーを指差す。手負いだ。「ドーモ。デスドレイン=サン。……ランペイジ=サン。ニンジャスレイヤーです」ニンジャスレイヤーはアイサツした。そしてジュー・ジツを構えた。「ニンジャ殺すべし」「アァー?できンのかァクソ野郎!」 53

2012-02-03 18:42:14
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

デスドレインの周囲で黒いタールが沸騰した。「殺してやるよォ!グチャグチャにしてやるぜ!グチャグチャに!」彼は叫んだ。壁の亀裂からはみ出したニンジャの屍の腕が、ニンジャスレイヤーの目に入った。手負いとはいえ、ザイバツとの戦闘を制したニンジャ。ジツの正体もわからぬ。油断は禁物だ。54

2012-02-03 18:45:47
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……ヤメだ」思いがけず口を挟んだのはランペイジである。異形ニンジャは鉄塊のごとき腕を床に下ろす。「帰るぞ」「あァ?」デスドレインがランペイジを睨んだ。その目が殺気に満ちた。ランペイジはさらに言う「次だ。正直、疲れた。次に殺せばいい」「嫌だ!てめェ!殺すぞ!」 55

2012-02-03 18:54:07
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ニンジャスレイヤーは己のニンジャ洞察力で、ランペイジの真意を探ろうとした。息づかいを、表情を注視した。そして激しい負傷を。デスドレインも同様だ。疲れたというのは随分と柔らかな表現だ。しかし、この二人の関係は一体どういったものなのか?撤退の為に、説得?なだめすかしているのか? 56

2012-02-03 18:58:40
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

だがそれは格好の機会でもある。ニンジャスレイヤーは踏み出す。手負いのニンジャ。殺せる時に殺しておくのがよい。このデスドレインと、 ゼンダ。いや、ランペイジを。ランペイジがニンジャスレイヤーを見やった。ニンジャスレイヤーは逡巡した。リンドウ。刑務作業。(……否!殺すべし!)57

2012-02-03 19:03:12
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

その時、彫像めいて立ち尽くしていたマスタートータスが180度ぐるりと振り返り、両手指を掲げたのである!「ランペイジ!黙ってろよ!」デスドレインはニンジャスレイヤーに暗黒物質を襲いかからせようとした!「イヤーッ!」「グワーッ!?」ランペイジがデスドレインに肩からぶつかる! 58

2012-02-03 19:09:33
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

倒れこむ二者!彼らが一秒前までいた場所が、嵐のごときマイクロスリケン攻撃にさらされる!スポスポスポスポ!「イヤーッ!」もう一方の腕はニンジャスレイヤーを狙う!側転回避!「ウオオーッ!」デスドレインが狂ったように叫ぶ。ランペイジは無骨なマニピュレーターでその首根を掴み上げる! 59

2012-02-03 19:12:37
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

スポスポスポ!スポスポスポ!マスタートータスの両手指全ての先端に穴が開き、そこから大量のマイクロスリケンが射出され続ける!ランペイジは広間中央を横切りながら黄金のダルマをもう一方の腕のマニピュレーターで掴む!そして跳躍!「イヤーッ!」スポスポスポ!後を追うマイクロスリケン! 60

2012-02-03 19:17:38
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

マスタートータスの攻撃は執拗だ。だがしかし、左右の手それぞれをデスドレイン・ランペイジとニンジャスレイヤーとに振り向けている為、それぞれを追い詰めるにはスリケンの絶対量が足りぬ。ランペイジは壁から螺旋階段めいて生えた板を次々に蹴り、竪穴を一気に登ってゆく! 61

2012-02-03 19:20:40
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「畜生!畜生!畜生!畜生!畜生!畜生!畜生!畜生!畜生!畜生!」頭上の闇の中、デスドレインの絶叫がどんどん遠ざかる。「何なんだよ!アイツ何なんだよ!アイツ何なんだよ!何様だよ!何様だよ!何様だよ!何様だよ!何様だよ!何様だよォー!……」 62

2012-02-03 19:24:40
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

デスドレイン、ランペイジがこの場を去る事を確認した途端、マスタートータスは即座に目標を切り替えた。ニンジャスレイヤー一人に!集中する両手指のマイクロスリケン!スポスポスポスポスポ! 63

2012-02-03 19:26:51
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ニンジャスレイヤーは旋回するように駆けながら、マスタートータスへ徐々に近づこうとする。トコロザワ・ピラーで舐めた苦渋が、そして先日の悪夢が、彼のニューロンを燃やす。二度目のイクサ!そして敵は一人!負けぬ!絶対に! 64

2012-02-03 19:33:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

駆けるニンジャスレイヤーの目に赤熱の輝きが宿る!そしてニューロンに響く声は……『フジキド!』(何だと!?)『フジキド!』スポスポスポスポスポ!追い詰めるかの様なマイクロスリケン!「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーは跳躍!さらにタイドー・バックフリップ! 65

2012-02-03 19:42:21
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

『ヌンチャクを取れ!』(ナラク!ナラクか!)『ヌンチャクを!』その時だ!内なるナラク・ニンジャの声に呼応するかのように、入場してきたゲートが勢いよく閉じる!(ガンドー=サン!?)さらに、おお、なんたる大掛かり!奥の円型穴の底から床が高速でせり上がり、この広間と相似の姿となる!66

2012-02-03 19:46:27
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

『ヌンチャクを取れ!オヌシの!武器を!』ニンジャスレイヤーは奥の広間へジグザグに駆けた。その後をマイクロスリケンが執拗に追う!突如黒檀のニンジャ像が粉々に砕け、風に散る!もとは足場であった鍾乳石の台座があとに残ると、そこにずっしりと存在するのは黒檀のヌンチャクただ一つ! 67

2012-02-03 19:50:59
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーは跳んだ!ヌンチャクを掴み取り、床を転がる!「下郎」マイクロスリケンをなおも連射しながら、マスタートータスもまた、奥の広間へ進入してくる。「排除すべし」スポスポスポスポスポ! 68

2012-02-03 19:54:26
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ニンジャスレイヤーはヌンチャクを掲げた。U字に固定されていた封印がいともたやすく解け、収納されていた鎖が伸びる!彼は知らぬ、その鎖を練ったのがいかなるレジェンドニンジャの血と骨であるかを!「イイイイヤァァァァーッ!」ニンジャスレイヤーはヌンチャクを振り回す! 69

2012-02-03 19:59:25
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

スポスポスポスポ!襲いくるマイクロスリケン!だがしかし、高速で振り回される黒檀のヌンチャクは、それらを全て弾き返す!ニンジャスレイヤーはゆっくりと前進!ついにマスタートータスは後ずさった! 70

2012-02-03 20:01:12
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……貴様は何者だ」突如マスタートータスは腕を下ろした。その口調はどこか機械めいていたそれまでとは、全く異質な、理性ある声であった。ニンジャスレイヤーはヌンチャクを構える。「……ドーモ。ニンジャスレイヤーです」「貴様を滅ぼす。ここで」マスタートータスは両手を広げた。 71

2012-02-03 20:04:36
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

異常な長身が……ゴウランガ!垂直に浮かび上がる!いかなる反重力のジツか?全身を走る稲妻!身体の内部から激しく発光!ニンジャスレイヤーは閃光に耐えた。マスタートータスの身体が……ナ、ナムアミダブツ!?ブッダ!?巨大化した!一秒後、そこには15メートルの巨人が立っていた! 72

2012-02-03 20:08:30
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

『殺せ!』ニューロンにナラクの叱咤が木霊する。『殺すのだフジキド!』ニンジャスレイヤーはヌンチャクを打ち振り、中腰に構えた。「……無論だ!」 73

2012-02-03 20:13:58
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(第二部「キョート殺伐都市」より:「アウェイクニング・イン・ジ・アビス」 #5 終わり。#6へ続く

2012-02-03 20:14:41