連合学習で連合されるものはなにか?

@kosukesa先生による連合学習の解説。もったいないのでまとめてみました。
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Kosuke Sawa @kosukesa

「連合学習で連合するものはなにか」と聞かれると、本当はものすごくややこしい。教科書的にはこうだ、ってのはあるけども、それでは収まらないものが本当は大事だ。収まらない部分を話し出すと、また「それって連合学習なの」と絶対言われる。

2012-02-15 00:09:55
Kosuke Sawa @kosukesa

例えば「ベルの後にエサを提示する手続き」を考える。ベルは特段の反応を喚起しないが、エサは唾液分泌反応を喚起する。対提示によって、ベルは唾液分泌反応を獲得する。ここで、連合したものはなにか?(続く)

2012-02-15 00:11:39
Kosuke Sawa @kosukesa

古くは、「ベルと(エサが喚起する)唾液分泌反応が連合した」と言われた。いわゆる刺激-反応連合(S-R)。一方で、「ベルとエサが連合した」とも考えられる。いわゆる刺激-刺激連合(S-S)。歴史的には前者が古そうだが、Pavlovは後者だと考えていた。(続く)

2012-02-15 00:13:59
Kosuke Sawa @kosukesa

S-S連合かS-R連合か、という対立はさんざっぱら議論があって、結局のところは「時と場合による」ということになった。例えば二次条件づけ事態でS-SかS-Rかはハトとラットで違うなど、種にも依存する。訓練回数にも依存する。(続く)

2012-02-15 00:16:10
Kosuke Sawa @kosukesa

S-SかS-Rかってのは、結局どちらか一方で説明がつくというわけではなく、どちらもあって複雑な行動を制御しているということなので、その時々による。大事なのは、どちらも「操作的に分離できる環境あるいは反応間に結びつきができる」としているところだろう。(続く)

2012-02-15 00:19:35
Kosuke Sawa @kosukesa

操作的に分離できる、ということを単純に当てはめると、連合するのは「ベル」とか「エサ」とか「唾液分泌反応」になるが、エサは「おいしい」という情動関連の要素と「甘い」といった感覚関連の要素に分離することもできる。WagnerのAESOP理論では、情動の要素が連合対象になれる。(続く)

2012-02-15 00:22:33
Kosuke Sawa @kosukesa

エサ刺激の内的処理として「味覚など感覚関連要素」と「おいしいなど情動関連要素」を分離することはリーズナブルに見える。では「どの程度持続するか」などの要素はどうか?(続く)

2012-02-15 00:26:22
Kosuke Sawa @kosukesa

ある刺激が持つ要素をどこまで分離していいか、どこまで微小な要素が連合学習に組み込まれるか、というのはとても重要というか難しい問題だ。前に「知覚は連合学習のアキレス腱」といったのはこのあたりが理由。事象をどのように符号化しているかを抜きにして連合するのはなにかは語れない。(続く)

2012-02-15 00:28:28
Kosuke Sawa @kosukesa

単純なオペラント事態を考える。ライトが点灯し、レバーを押すとエサが呈示される。ここでは何がどう連合しているか?Thorndikeは「エサが触媒となってライトとレバー押しが連合する」と考えた。しかし、これは今では(部分的に)否定されている。

2012-02-15 00:34:15
Kosuke Sawa @kosukesa

実際には、動物も「エサ強化子」に関する知識を学習している。つまり「弁別刺激が呈示されてから反応が表出されるまでの間にエサ強化子表象にアクセスしている」。ではどのような経路でアクセスしているか?

2012-02-15 00:35:34
Kosuke Sawa @kosukesa

弁別刺激と強化子が連合し、弁別刺激が喚起する強化子予期が反応を制御すると考えることもできれば、反応と強化子の連合がリストとして貯蔵され、弁別刺激はどの連合が有効かを階層的に制御すると考えることもできる。どちらも支持する結果がある。

2012-02-15 00:38:05
Kosuke Sawa @kosukesa

どちらの立場をとるにせよ、ここでも連合の対象は「弁別刺激や強化子、反応などの操作的に分離可能な事象の表象」である。しかし、こと強化子といったときには知覚的要素なのか情動的なものなのかなど、分離はいろいろと可能。

2012-02-15 00:39:55
Kosuke Sawa @kosukesa

心理学として意味のある分離はどこまでなのか、あるいは神経科学の知見を組み込めばどこまで分離していけるか、などは多分立場によって違ってくるのだと思う。このあたりから、連合学習なのかニューラルネットワーク的コネクショニズムなのか、いや一緒かもしれんが、このあたりの境界が曖昧になる。

2012-02-15 00:42:56
Kosuke Sawa @kosukesa

連合学習理論をどんどん煮詰めて細かくしていくと、「意味論的に不透明な構造」になっていく。それは心理学としていい説明なのか?行動の単位は環境の単位に通じると前に言ったけど、それはこのあたりの話につながっている。「心は環境の劣化コピーか」という話もしたが、それにも通じる。

2012-02-15 00:45:22
Kosuke Sawa @kosukesa

ということで、Pavlovianにしてもoperantにしても、「なにが連合するか」なんてそんな簡単に結論できるもんじゃねえよ、というお話。

2012-02-15 00:49:18
Kosuke Sawa @kosukesa

この調子で続けたら朝になってしまう。もう少し突っ込むと@KazuSamejima先生の研究とつながるが。「強化子予期とか価値ってなによ」というお話。

2012-02-15 00:51:02
Kosuke Sawa @kosukesa

適切な還元のレベルはどこまでか、というのは一意的には決められない。心理学者に「神経科学を勉強してない!」と怒り、神経科学者に「分子のこと知らない!」と怒り(ry これは建設的でもないし、行き過ぎると単なる難癖。

2012-02-15 00:54:11
Kosuke Sawa @kosukesa

こと行動の体系的理解という意味では、やっぱスキナーだよ。綺麗に閉じている。言わなくていいことは言わない、ってあたり。

2012-02-15 00:56:23
Kosuke Sawa @kosukesa

「どこそこを破壊すると恐怖条件づけが獲得されなくなります」とかいうのを見ると、「恐怖条件づけのどこの部分よ」と突っ込みたくなるわけだが。

2012-02-15 01:00:04
Kosuke Sawa @kosukesa

連合構造と「反応生成のための因果連鎖」ってのは区別しなきゃいかんのだろうけど、話を単純にするために混ぜちゃったな。連合か計算か、とかの話もあるし、ほんとややこしい。

2012-02-15 01:18:41
Kosuke Sawa @kosukesa

だいたい、音と電撃の対提示で音と電撃の間に連合ができる、で話が終わるんなら恐怖症だの抑うつだのへの応用につながらん。CBTとか興味ある人は、ぜひとも連合学習理論は勉強してほしいなあ。

2012-02-15 01:21:36
Kosuke Sawa @kosukesa

連合学習と「知性」とか「推論」、「創発」の話もいずれ。これもまた個人的には大事かつ面白い話。

2012-02-15 01:28:30