飛鳥部勝則・短編全作品レビュー
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//とはいえ、見方によっては、ある言葉の扱いを手掛かりとした本格ミステリとして捉えられなくもないだろう。また本作のアイディアをさらに発展させたのが後に紹介する短編「穴」であり、この二作を読み比べてみるのも案外面白いかもしれない。
2012-03-05 22:41:55![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
「洞窟」(「異形コレクション 怪物團」収録)/肺病で亡くなった叔父の遺品整理をした際に出てきた一冊の日記帳。そこには村人たちが忌み嫌う「禁断の林」の奥の洞窟で出会った女を巡る、ある異常な体験が記されていた……。飛鳥部勝則の書くホラーにはいつも本格ミステリ的センスが感じられるが//
2012-03-05 22:43:50![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
//それは本作もまた例外ではない。本作は叔父の遺した日記を主人公である僕が読者に紹介するという構成をとっているが、ミステリ読みであればそこにある疑いを持つことだろう。そして、その疑いは恐らく正しい。だが、作者はそこにホラーならではのオチを用意して、//
2012-03-05 22:44:52![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
//それは本作もまた例外ではない。本作は叔父の遺した日記を主人公である僕が読者に紹介するという構成をとっているが、ミステリ読みであればそこにある疑いを持つことだろう。そして、その疑いは恐らく正しい。だが、作者はそこにホラーならではのオチを用意して、//
2012-03-05 22:44:52![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
//まんまと見抜いたつもりの読者を唖然とさせてみせる。ちなみに本作を読んで自分は「黒と愛」(※4)に出てくる某キャラを思い出したのだが、もしかしたら発想のヒントにはなっているのかもしれない。
2012-03-05 22:45:54![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
「穴」(「異形コレクション 憑依」収録)/黒野夫妻は日頃から憎み合う仲だったが、ある日、夫から地元に伝わる「舐め穴」の話を聞いた直後に大喧嘩をしてしまう。翌日、夫の話が気になった妻は単身夫の地元へ赴き、舐め穴の伝承を調べ始めるが――。//
2012-03-05 22:47:51![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
//ホラーとミステリの融合を高い次元で達成させた一編。「舐め穴」に纏わる生理的な気持ち悪さを見せ付ける一方で、作者は読者に対し、ある落とし穴を仕掛けている。//
2012-03-05 22:48:54![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
//ミステリ的手法により作られたその「穴」はホラーとしての効果を高める絶妙なアクセントになっており、個人的には井上雅彦「残されていた文字」(※8)に匹敵する秀逸な騙し絵だと思う。
2012-03-05 22:49:13![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
「羅漢崩れ」(「ミステリ・オールスターズ」「ベスト本格ミステリ2011」収録)/濃霧の中、道に転々と落ちている女のバラバラ死体。生ける屍が体のあちこちを落としながら歩いたとしか思えない状況に洋介は絶叫した――。本作の凄いところは何と言っても原稿用紙三十枚以内という縛りの中で、//
2012-03-05 22:52:31![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
//怪談としか思えない不可解な謎とその合理的解決をやってのけたことにある。しかもそれに加えて、オチで背筋をぞくりとさせるような強烈な個性までアピールするという達者ぶりである。歪んだ本格の書き手と思われがちな作者だが、本作は内容に反して端正な本格の見本のような短編と言えるだろう。
2012-03-05 22:53:22![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
「フィフス」(「『このミステリーがすごい!』大賞STORIES」収録)/大学生の鈴森一気がドーベルマンに導かれた先にはバラバラ死体と斧を手にした黒髪の美少女がいた。声を上げる暇もなく地面に倒され喉元に斧を突き付けられる一気。思わず命乞いをすると彼女は奇妙な命令を与える。//
2012-03-05 22:55:41![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
//「一気、私と共にフォースの失敗作たちを始末してほしい」……一言でいうなら、飛鳥部版「灼眼のシャナ」(※9)。ミステリと言うより伝奇バトル物とでも言うべき風格で、「ラミア虐殺」(※10)のミステリ以外の要素が好きな人であれば問題なく楽しめることだろう。 //
2012-03-05 22:56:53![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
//しかしだからと言って本作がミステリとして見るべき所がないかというと答えは否である。本作には見方によってはかなり大胆な(かつ、かなり無茶な)仕掛けが用意されている。こういった物語でもミステリ的仕掛けを忘れない作者の姿勢が何とも微笑ましい。是非とも続編を希望したい一編。
2012-03-05 22:57:37![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
「幽霊に関する一考察」(「異形コレクション 物語のルミナリエ」収録)/ゴースト・ストーリーを語ろう――。かつて作者はそんな書き出しと共に本格推理の幽霊という一風変わった物語を書いたことがあるが、本作では「三匹のグレー猫消失事件」という日常の謎を通して幽霊の正体を描いている。 //
2012-03-05 22:59:55![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
//収録アンソロジーのコンセプトのためかオチは所謂いい話なのだがそこにタイトルにもある「幽霊に関する一考察」を絡めることによりただのいい話で終わらせていないところが実にこの作家らしい。また一ファンとしては飛鳥部作品の中では極めて珍しい(!)ほのぼのした作品が読めたのは収穫だった。
2012-03-05 23:01:23![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
(※2)飛鳥部勝則の長編4作目。首切りテーマのミステリであると同時に百合ミステリとしてもお勧め。なおこの作品には姉妹作として夢の世界を舞台にした幻想ミステリ「冬のスフィンクス」がある。
2012-03-05 23:34:26![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
(※3)飛鳥部勝則自身の手による絵画が載ってるのは「殉教カテリナ車輪」「バベル消滅」「N・Aの扉」「砂漠の薔薇」「冬のスフィンクス」「ヴェロニカの鍵」「バラバの方を」「誰のための綾織」の八作品。またこちらのサイトでも確認することができる。 http://t.co/p9GOAHWj
2012-03-05 23:04:48![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
(※4)飛鳥部勝則の長編13作目。ゴシックミステリであると同時に、仮面ライダーミステリでもある。詳しくは「第5回エアミス研読書会/飛鳥部勝則『黒と愛』」ログ参照。 http://t.co/P3lIzqkU
2012-03-05 23:05:36