アンデルセン『人魚姫』日本語意訳 まとめ Vol.1

23時の夢物語 @23novel

#twnovel 末姫さまのいちばんの楽しみは、なんといっても海の上の世界の話を聞くこと。姫さまはおばあさまにせがんで、知ってることぜーんぶ、船とか街とか人や動物のこと、みーんな話してもらってた。中でもお花のことはとっても不思議がってたわよ。 #人魚姫 16

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#twnovel つまり海の底のお花とちがって、地上のお花はいい香りがするんだってことにね。それから木が緑だってこと（ピカピカの赤や青じゃなく）。その枝の間を飛びまわる「お魚」が甘い声で歌えるんだってことにも。その歌がどんなに素晴らしいか…。ふふ、わかるでしょ？ #人魚姫 17

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#twnovel おばあさまが伝えたかったのは「小鳥」のことなんだって。だって「お魚」って言わないとわからないでしょう？人魚の姫さまたちは一度だって小鳥を見たことがないんだから。「15になったらね」っておばあさまは姫さまたちに言ったものよ。 #人魚姫 18

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#twnovel 「15歳になれば、海の上に出てもいいでしょう。岩の上に座ってお月さまの光を浴びたり、大きな船が海を渡っていくのを見たり、森や街を眺めたりしてもいいでしょう」次の年、ようやくいちばん上の姫さまが15歳になるころのことよ。 #人魚姫 19

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#twnovel でもねえ、それってちょっと…。あ、つまりね、人魚の姫さまたちはみんな1歳ちがいだったのね。だからいちばん下の姫さまが海の上に行くお許しが出るまで、地上がどんな世界なのかを自分の目で見るまでには、丸まる5年待たなくちゃダメってことだったの。 #人魚姫 20

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#twnovel でも姫さまには約束があった。姉姫さまたちとの約束が。最初に海の上に行った日、目にしたものはみんな報告しようって、きっともっと素敵なものを見つけようってね。姫さまたちには知りたいことが多すぎて、もうおばあさまのお話では物足りなくなっていたからね。 #人魚姫 21

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#twnovel だけど、いちばん地上を恋い焦がれてる末姫さまが、いちばん待たなくちゃならないことに変わりはなかった。いちばん静かに夢に見続けていた姫さま…。何夜も、何夜も、末姫さまは窓を開けて見上げていたわ。お魚たちがひらひら泳いでいく、ダークブルーの海をね。 #人魚姫 22

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#twnovel 末姫さまは月や星を見ることだってできた。本当よ。そりゃごく淡い光だけどね、海の中だと地上より大きく見えるくらいなんだから。上の方で暗い影がすうっと動くのはクジラのせいだってことも、姫さまは知っていた。あるいは人間であふれた船が通ってるか…ね。 #人魚姫 23

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#twnovel 私、断言してもいいけどね、船に乗ってた人々は夢にも思わなかったにちがいないわ。船底に向かって、小さな愛らしい人魚が海底で白い腕を一生懸命のばしてたなんて…。えーい！気分を変えて、いちばん上の姫さまの冒険譚をしましょ。 #人魚姫 24

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#twnovel 彼女の15歳のお誕生日、はじめて地上へ行ったときのお話よ。何百個もの話したいことを抱えて戻ってきた姉姫さまは、「でもでもいちばん素敵だったのはね」って報告したの。「静かな海の砂浜に座ってね、お月さまの光を浴びながらね、わたしが見たのものよ…」 #人魚姫 25

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#twnovel 「海辺の大きな街を見たの。星がいっぱい瞬いてるような光の街。音楽と騒音を聞いたわ。馬車と人間のざわめき。たくさんの教会の塔、その鐘の音…」でもね、いちばん上の姫さまは見て聞いたからこそ、あんなに憧れた地上へ行くことはなかった。できなかったのよ…。 #人魚姫 26

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#twnovel ああ、でも末姫さまは、姉姫さまの話にどんなに夢中になったことか！姉姫さまが帰ってきた夜から、末姫さまは窓辺に立って、思い描いていたわ。ダークブルーの海を見上げながら、騒音とざわめきの大きな街のことを。彼女の耳には教会の鐘の音が聞こえるほどまでに。 #人魚姫 27

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#twnovel その1年後、今度は上から2番目の姫さまがお許しをもらったわ。海の上の好きなところへ行ってもいいですよってね。姫さまが海面に着いたのは、ちょうどお日さまが沈むときだった。「いちばん美しい風景だわ」彼女は思ったの。「私が今まで目にした中でいちばん…」 #人魚姫 28

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#twnovel 「空のすべてが黄金色だった」姫さまはみんなに報告したわ。「それに雲！ああ、言葉でなんて説明できないわ。私の頭の上をね、ルビーやアメジスト色の雲が輝きながら浮かんでいたの。それから、それからね、雲が流れていくより早く、白鳥の群れが飛んでいったのよ…」#人魚姫 29

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#twnovel 「白鳥の群れは純白の長いヴェールみたいに、ゆらゆら暮れていく太陽に向かって飛んでいったわ。私も白鳥たちのように太陽を追いかけて泳いだけれど、でもやがて沈んでしまったわ。薔薇色の光もゆっくりと消えていった。雲の上からも、海の上からもね…」 #人魚姫 30

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#twnovel その1年後は、上から3番目の姫さまの順番。6人の姫さまたちの中でいちばんの冒険好きさんは、海につながる大きな川に乗り込んで行ったのよ。「とってもきれいな緑を見たんだから」ブドウのつるに覆われた丘のことよ。姫さまが見たのはね。 #人魚姫 31

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#twnovel 古いお城や農園も、立派な森の間からちらちらのぞいてた。「鳥の歌も聞いたわ。お日さまがとっても暑くって、熱々になった顔を冷やすために、何度も何度も川に潜らなきゃいけなかったんだから。それからね、小さな入り江では、人間の子どもたちがいたの」 #人魚姫 32

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#twnovel 「はだかで駆け回ってたわ。手足をバタバタさせて、水の中を泳いでた。だから私もいっしょに遊びたかったんだけど、私を見たとたん、みーんな怖がって逃げちゃった。そしたら今度は小さな黒い生き物が登場したの」犬のことよ。ま、姫さまは当然知らないんだけど。 #人魚姫 33

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#twnovel 「そいつ、もうびっくりするくらいギャンギャン吠えてきて、それで私、怖くなって海に戻ってきたの」姫さまは美しい森や緑の丘、それからお魚のしっぽもないのに水の中を泳ぐことのできる可愛らしい子どもたちのことを、いつまでもいつまでも忘れなかったわ。 #人魚姫 34

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#twnovel 上から4番目の姫さまは、あんまり勇敢じゃなかったわ。「海のね、いちばんはずれにいたの」姫さまの報告によるとね、「そこがいちばん美しい場所」だったんだって。あなた、何マイルも先までずーっと見わたせるわよ。空がガラスのドームみたいになっていて。 #人魚姫 35