NHKスペシャル「MEGAQUAKEⅡ 第2回 津波はどこまで巨大化するのか」 書き起こし・ほぼ完全版 #nhk
- toshihiro36
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<ナレーション> 河田さんはこの二段階の津波が、四国沖で発生した場合のシュミレーションを行いました。その結果、西日本最大の都市・大阪に深刻な被害が広がることが明らかになりました。これまで大阪では最大2.9mの津波が想定されてきました。
2012-04-09 01:13:00<ナレーション> ところが、その街を襲う津波は…2倍の高さ6m。津波は川を遡上。堤防を乗り越えて街に流れ込みます。道頓堀、市役所がある淀屋橋、大阪の中心・梅田…津波が来ないとされてきた内陸まで被害が及びます。海から10キロ離れた大阪城付近まで津波は到達。
2012-04-09 01:20:16<ナレーション> 大阪の中心部だけでなく、広いエリアが浸水します。さらに河田さんは震災を受けて、津波を大きくするもう一つの要因を加えることにしました。東北沖では陸に近いところで津波が発生してから、およそ30秒後に沖合いで大きな津波が発生したと考えられています。
2012-04-09 01:24:43<ナレーション> この時間差が変わると、津波がさらに大きくなる可能性があります。津波は陸に近づいて水深が浅くなると速度が落ちます。このとき高い波は、速度があまり落ちません。先行している波に追いついて、重なり合い巨大化することがあります。
2012-04-09 01:28:35<ナレーション> どんな時間差の時に津波が大きくなるのか。二つの津波が発生する時間を、1秒づつずらしながら計算を繰り返しました。
2012-04-09 01:30:41河田: 台風を考えたら、過去50年間同じ規模の同じコースを通った台風は1つもないでしょう。ということは地震の起こり方だって、津波の起こり方だって、それぞれ千差万別ですよね。その1億ケースの津波の起こり方で、津波の高さがどういうものが現れるか計算をやらなきゃいけない。
2012-04-09 01:35:29<ナレーション>橋杭岩がある和歌山県串本町。津波が最大になるのは時間差が8分の時です。まず一つ目の津波が串本に向かいます。その8分後、二つ目の津波が発生。二つの波は、岸に到達する寸前で重なり合います。橋杭岩を高さ18mの津波が襲います。これまでの想定の2倍の高さ、町は浸水します。
2012-04-09 06:02:38<ナレーション> 一方、高知市では時間差が1時間余りの時に、津波が最も高くなることがわかってきました。まず一つ目の津波が発生。海岸で複雑にはね返り、湾の中にとどまります。1時間19分後に二つ目の津波が発生。湾内の津波と重なり合い、高さ18mに達します。
2012-04-09 06:08:02<ナレーション> このとき何が起きるのか。最大震度7の非常に激しい揺れ。道路が瓦礫で塞がれ、避難を妨げます。そこに最初の津波が到達。さらに1時間19分後に発生した波が押し寄せます。高さはこれまでの想定の2倍。市街地の大半が浸水します。
2012-04-09 06:12:52<ナレーション> 今回の震災で明らかになった、津波を巨大化させるさまざまなメカニズム。これまでの南海トラフの津波の想定を、根底から覆したのです。
2012-04-09 06:15:02<ナレーション> 東日本大震災の後、過去の津波の歴史や言い伝えを見直す動きが広がっています。仙台市の沿岸部、津波に襲われた地域で1100年前の貞観津波の痕跡が見つかりました。当時、海から運ばれた砂の層です。震災前、こうした痕跡が見つかっていたのは、宮城県と福島県だけでした。
2012-04-09 06:20:13<ナレーション> 貞観津波が東北一帯を襲った巨大津波だったことは、震災の後であらためて行われた調査でわかりました。 仙台市にある波分神社。津波はここまでやってきたことを伝えるために、「波分」と名付けられたとされています。今回の震災でも、神社のすぐ近くまで津波が押し寄せました。
2012-04-09 06:25:59<ナレーション> 仙台市の北、多賀城市。津波が到達した住宅地の隣に、「末の松山」があります。「末の松山 波こさじとは」百人一首に詠まれました。貞観津波の時にも、ここまでは波が来なかったと言い伝えられてきました。
2012-04-09 06:30:25今村: 祖先のメッセージをきちんと我々が把握して当時何を伝えたかったのか、またどんな規模だったのかということを改めて学ぶ必要があると思います。
2012-04-09 06:34:03<ナレーション> 震災後、東北沖で続けられている海底の調査。津波を巨大化させる新たなメカニズムが浮かび上がってきました。「海底地すべり」です。宮城県沖220キロ、水深7600mの海底。斜面が大きく崩れたとみられる場所が見つかりました。
2012-04-09 06:39:20<ナレーション> 「海底地すべり」は地震の揺れなどで、斜面が崩れる現象です。まず、プレートの境目で地震が発生。斜面から大量の土砂が崩れ落ち、海水が持ちあげられます。大きな津波が発生する可能性があります。
2012-04-09 06:44:24<ナレーション> 「海底地すべり」はどれほどの津波を生みだすのか。震災後、注目されている沖縄県・石垣島です。1771年、島を襲った明和大津波。地震の後、黒雲のような津波が発生。8つの村が全滅したと記録されています。高さ30mまでかけ上がったとされる、大きな津波。
2012-04-09 06:50:17<ナレーション> しかし奇妙なことに、周辺の島にはこれほど大きな津波が来ていた痕跡がありません。この津波は「海底地すべり」によるものではないか。調査を進めている、後藤和久さんです。打ち上げられた巨大な浜サンゴ、重さは220トン。年代を調べたところ、明和大津波の頃とわかりました。
2012-04-09 06:55:42<ナレーション> サンゴは500m沖合いから運ばれたとみられます。当時の津波の巨大さを物語っています。なぜ石垣島だけを巨大な津波が襲っていたのか。石垣島の南にあるプレートの境目で巨大地震が起きたと仮定しました。津波は他の島にも押しよせ、当時の記録と合いません。
2012-04-09 06:59:48<ナレーション> そこで一回り小さな地震で、「海底地すべり」が起こったというシュミレーションを行いました。この場合、石垣島だけに大きな津波が押し寄せることがわかりました。
2012-04-09 07:24:05後藤: このあたりで津波の高さが30mぐらいになるんですね。一方で、多良間島とか宮古島の方には、それほど大きな波が行かなくて…。 海底地すべりはいつ起きるのか、予測はなかなか難しい。しかも小さな地震であっても地滑りを伴うと、局所的に大きな津波を発生させる可能性が残っている。
2012-04-09 07:29:20<ナレーション> 海底地すべりとみられる痕跡は、南海トラフの周辺でも見つかっています。その数、300か所以上。次の巨大地震で再び崩れると、津波をさらに巨大化させる恐れがあるのです。
2012-04-09 07:34:06