- sm_14th_Invidia
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それからミサキはカカシのマハラドの資料をなんとか読もうと努力を続けました。もし、これらの調査結果を誰にでもわかるようにまとめることができれば――停滞竜カブトを倒す手段をまとめることができれば、それを売ってお金にすることができます。
2012-04-18 00:30:48一日目、マハラドの資料はとても難しい単語と式で書かれておりミサキには到底読むことができません。 それでも全体に目を通せばなにかわかることがあるかもしれない、そしたらそこを中心になにもかもがぱっとわかるかもしれない、そんな奇跡を期待して意味が分からないまま読み進めます。
2012-04-18 00:31:26ギシリ、首にかかった縄が閉まる音が聞こえます。 焦燥感で息が苦しくなります。 こんなことをやっても無駄で、自分はきっとこの里で何一つ自分の望むことをできないまま死ぬ、そんな想像ばかり広がります。
2012-04-18 00:32:18二日目、もはやなんのとっかかりもなくただ「全てに目を通すまで諦めたくない」そんな理由だけでマハラドの残した資料を読み続けます。 それは読むというより視界にいれていくといったほうが正確かもしれません。
2012-04-18 00:33:30ギシリ、世界の軋む音が聞こえます。 そもそも最初から無理だったのではないか、そんな感情が胸に広がります。 何故自分は人を信じてしまったのだろうか。 何故自分は人に好かれるだなんて勘違いしてしまったのだろうか。 自分になんの価値もないことくらいわかっていたはずなのに。
2012-04-18 00:34:59五日目、ようやく全てを読み終わり――自分には読めないと結論づけるしかありませんでした。 思ったよりも衝撃はありません、むしろまったく心は動きませんでした。 最初から無理なことは分かっていたのです、ただそれを五日かけて理解しただけです。
2012-04-18 00:35:50@sm_12th_Gula まあ、そもそも自分用に書いたメモを他の人が読み解こうってほうが無理なのよ。 せめて同じだけの知識があればまだ読めたかもしれないけどね。
2012-04-18 00:39:28その夜、ミサキは【鳥獣族】の雛たちに自分の物語――切望のカカシの物語を聞かせます。 それは絶望の物語です。
2012-04-18 00:40:21ミサキはその物語を【鳥獣族】の雛たちに聞かせたかったのです。 そして嫌な気持ちになって欲しかったのです。
2012-04-18 00:40:51何故自分はこんな辺境の里で《善行》も積めずに腐っていくのに【鳥獣族】の雛たちには輝かしい未来が待っているのか、それが憎くてしょうがなかったのです。 だから傷つけてやりたい。
2012-04-18 00:42:11「それで?」マハラドが消えて、そして残した資料を読むことを飽きためたところまで語り終えたとき【鳥獣族】の雛の一人が泣きそうな顔で尋ねます。「それで、どうなったの?」
2012-04-18 00:43:29「どうにも」ミサキは自分の喉からでるその声があまりに冷たいことに驚きました。 こんなにも冷たい声を自分は出せるのか。「彼は壊れるその日まで里の中でクズ鉄を拾って暮らすだけさ」
2012-04-18 00:45:16「そんな、酷い!」口々に【鳥獣族】の雛たちは言います。 「酷いさ、でも現実ってそういうものだろ」それだけ言って逃げるように【鳥獣族】の雛の館を出て行きました。
2012-04-18 00:46:23数日後、ミサキの元に梟が手紙を持ってきました。 それは幻想の魔術師マハラドからでした。
2012-04-18 00:47:21それは謝罪から始まり、彼の事情を説明するものでした。 彼の【源魔法使い族】としての研究の専攻は【魔女族】の扱う魔法でした。そしてそれは大っぴらに研究すれば食物連鎖ランキング4位の【天使族】や19位の【神官魔法使い族】から狙われる危険な研究でした。
2012-04-18 00:48:27しかし、彼はその研究に魅せられてしまったのです。 だから彼は魔法使いの里を追放されて、この様々な情報が流れるくず鉄の里で待っていたのです。 なにを? 彼の研究を助けてくれる【魔女族】がコンタクトを取ってくるのを。
2012-04-18 00:49:32もちろん彼女たちは狙われているが故に慎重で、それは切り株の前で兎を待つようなものです。 だからミサキと組んで停滞竜カブトを倒そうとしたのです。
2012-04-18 00:50:03しかし、【魔女族】は来ました。 それも、彼女たちは狙われている立場が故にその場で引き受けて彼女たちと共に行くか、それとも二度と会わないかしか選べないような状況で。
2012-04-18 00:51:09では、幻想の魔術師マハラドはミサキを裏切ったのでしょうか? 《善行》を行えるチャンスの前に友情を捨てたのでしょうか? いえいえ、そうではありません、手紙にはさらにこう書かれていました。
2012-04-18 00:54:13彼女たちに協力する条件として停滞竜カブトを殺す道具を願った。 僕のこれまでの調査と彼女たちの力があれば間違いなくそういった道具が創れるはずだ。 それを君のところまで送りたいが彼女たちも自由に動けない。 どうか地図の場所まで受け取りに来て欲しい。
2012-04-18 00:55:03