ドゥームズデイ・ディヴァイス #6

翻訳チームによるサイバーパンク・ニンジャ活劇小説「ニンジャスレイヤー」リアルタイム翻訳 (原作:Bradley Bond-san & Philip Ninj@ Morzez-san) ニンジャスレイヤー公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 続きを読む
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(「死なねえ……死にたくねえ」デスドレインの前に立ったのは、アズールだ。彼女はダークニンジャを無感情に見た。「この人が死んだら、私を誰も連れて行ってくれない。それは許さない」「……」ダークニンジャは拳を握った。不穏な動きがあればカラテを叩き込む。)

2012-05-02 11:45:22
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(「助けろ……アズール、俺を助けろ」デスドレインは尻餅をついた。アズールはデスドレインを見た。拡がる黒い水たまりに、足跡が点々と生まれた。成人の頭ほどはある、獣の足跡だ。アズールはデスドレインに言った。「……いいザマだよね、お前」)

2012-05-02 11:45:37
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

第二部「キョート殺伐都市」より:「ドゥームズデイ・ディヴァイス」 #6

2012-05-02 11:46:03
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「!」ダークニンジャはニンジャ第六感を働かせ、咄嗟にバック転を繰り出した。黒い水たまりがバシャリと跳ね、巨大な足跡がもう一つついた。ダークニンジャが一瞬前まで居た場所で、ガチンと何かを噛み合わせる音が鳴った。獣の息遣い。ダークニンジャはカラテを構え直す。 1

2012-05-02 11:49:57
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

アズールはダークニンジャを一瞥し、「近づかないで」と言った。「近づいたら、そいつが殺す」……ダークニンジャは、己とデスドレイン、少女の間の空間に立ちはだかる不可視の質量を感じ取っていた。気配をよく隠している。ニンジャ?否……人ではない。巨大な四足獣めいた存在だ。 2

2012-05-02 11:54:37
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「お前もニンジャか」ダークニンジャは無感情に言った。「名乗れ」「アズール」少女の空色の目が、怖じずにダークニンジャを見返した。「目の色がアズール(空色)だから、その名前なんだって。こいつが言ってた」デスドレインを指差す。ダークニンジャは透明の獣の出方を伺う。 3

2012-05-02 12:01:30
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ダークニンジャは透明の獣と使役者とおぼしき少女について分析した。数分前までと様子が違う。もとから異様なアトモスフィアを漂わせる少女であった。だが、ニンジャソウルの発現はつい今か?「畜生……」デスドレインが黒い血を吐く。アズールはそれを見下ろした。「お前の事を一生ゆるさない」 4

2012-05-02 12:09:31
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「テメェ……普通に喋れンのか……裏切る気か?」「裏切る?」アズールは言った「何を?」デスドレインは朦朧として、ダークニンジャから逃れるように地面を這う。「ゴホッ……畜生、糞ッ……ザイバツ!俺を捨てンのか!おいッ!どうせ聴いてンだろォ!」「……」ダークニンジャの眉が動いた。 5

2012-05-02 12:22:04
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「ザイバツと言ったか」「アアアーッ!畜生!畜生ッ!ラ、ランペイジ!ランペイジはどこだ!」ダークニンジャは値踏みした。彼らに、何らかの接触者?いつ?どの程度?この襲撃の手引きか?何故?……だが、たとえばこののちデスドレインを拷問したところで、わかりはすまい。何も知るまい。 6

2012-05-02 12:37:20
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「近づかないで。近づくな!」踏み込みかけたダークニンジャに、アズールが叫んだ。「イヤーッ!」ダークニンジャは空気の流れを読み、殺到する透明の獣を側転で回避!「こいつは渡さないって言ったでしょう?わ……私」アズールの目に大粒の涙が溜まった。「私はこうするしかないんだ!」 7

2012-05-02 12:45:57
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ダークニンジャに回避された獣は床を蹴ってアズールのもとへ跳び戻る。うつ伏せのデスドレインの身体が持ち上がった。「グワーッ!」その背から血が吹き出す。牙だ。透明の獣が咥えている。アズールは透明の獣を掴み、背中に乗った。二者の身体が宙に浮かんで見える。 8

2012-05-02 12:49:36
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「行け!」アズールは涙を拭い、獣に命じた。獣は駆け出した。ダークニンジャは追う!その時、轟音とともに、その足元が大きく揺らいだ!下、遥か下だ!獣もダークニンジャもひるむ事なく屋上の淵めがけ駆ける。さらに轟音、震動! 駆ける!駆ける! 9

2012-05-02 13:03:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

KRAAAAASH!粉塵を撒き散らして潰れてゆくマグロアンドドラゴン社屋ビルからアズールの獣が跳び、続いてダークニンジャが跳んだ。ダークニンジャは空気抵抗を殺し、まっすぐの姿勢で垂直に落下する。獣にしがみついて落下するアズールが歯を食い縛り、首を巡らせてダークニンジャを見た。10

2012-05-02 13:36:42
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

垂直落下するダークニンジャはアズールの獣の真横に並んだ。アズールは獣により強くしがみついた。「イヤーッ!」ダークニンジャは逆さまに落下しながら回し蹴りを繰り出す!「GRRR!」獣が吠え声を発する。苦痛の声だ!横腹をジゴクめいて蹴られ、吹き飛び、デスドレインを吐き出す!11

2012-05-02 13:42:25
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「GRRR!」獣は崩壊するビルを蹴って跳ね返り、ダークニンジャに襲いかかる!だがダークニンジャは空気の流れと相手の行動パターンを読み、「イヤーッ!」その鼻面に再度の回し蹴りを叩き込む!タツジン! 「GRRRR!」反動でダークニンジャは隣のビルへ跳び、斜め下へ壁を蹴る! 12

2012-05-02 13:45:53
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「イヤーッ!」その斜め下の落下軌道上にはデスドレイン!ダークニンジャは瀕死のデスドレインへ到達し……落下!KRAAAAAASH! 13

2012-05-02 13:47:56
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……」ダークニンジャはデスドレインを踏みしめながら着地していた。動かぬデスドレインから退いた。そして、いまだ崩壊を続けるビルを背に、無言で、落下してくるアズールと獣とを見上げた。瓦礫の破片が降り、デスドレインの胴体に突き刺さって、大地に釘付けにした。 14

2012-05-02 13:58:35
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

アズールと獣が彼の眼前に着地!「いや……嫌だ!」アズールの叫びは悲痛だった。「死にはすまい」ダークニンジャは地面に縫い付けられたデスドレインを見た「こいつの呪いは、俺の役に立つ。だが手ぶらでザイバツに帰るわけにもいかん」彼はIRC通信機に、仕留めた旨の報告を入れた。 15

2012-05-02 14:07:40
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

デスドレインのジツはダイコク・ニンジャの由来だ。ダークニンジャはホウリュウ・テンプルの古文書で、このいにしえのアーチニンジャの伝説を学んでいる。大地の精髄は術者の肉体を侵し、血肉となって傷を埋め合わせる。確実に殺すのなら、頭部か心臓の破壊が必要だ。「せいぜい足掻くがいい」 16

2012-05-02 14:56:50
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

デスドレインの身体は痙攣し、瓦礫で貫かれた腹部から泡立つ黒い液体が溢れてくる。ダークニンジャは冷徹に一瞥する。やがてこの場所へザイバツの処理部隊が現れるだろう。死ぬか。生きるか。どちらでもよい。(だが、さらにもう一匹)彼はデスドレインの仲間に思いを巡らす。ビルの破壊者に。17

2012-05-02 15:05:37
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

崩壊するビルの轟音の中、ダークニンジャは死骸や乾いたアンコクトン、車の残骸、降り注いだ瓦礫が散乱するジゴクめいた道路上へ、ゆっくりと歩みを進める。アズールはデスドレインとダークニンジャとを交互に見た。そして、ダークニンジャの肩向こう、通りをこちらへ歩いてくる異形の影を認めた。18

2012-05-02 15:19:15
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ドーモ。ダークニンジャです」ダークニンジャは接近してくる影へ呼ばわった。「貴様の名を忘れたな。名乗れ」「……ランペイジ……」ダークニンジャのニンジャ聴力が、鉄仮面の奥で発せられたくぐもった名乗り声を捉えた。ダークニンジャはさらに、後方にも一つ、別のニンジャ存在を感じ取った。19

2012-05-02 15:24:16
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

道路の一方からランペイジ。反対側の遠方から歩いてくるもう一人。ダークニンジャのすぐ近くにはアズール。ダークニンジャに得物は無し。救援は無し。どれを殺し、どう切り抜ける。ダークニンジャのニューロンが加速する。 20

2012-05-02 15:34:15
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

アズールは獣の背から飛び降りた。透明の獣はいつでも敵に飛びかかれるよう、全身に力を漲らせる。アズールが叫ぶ。「ランペイジ!殺して!そいつ……」アズールの声は徐々に小さくなり、消えた。近づくランペイジは、地に伏したデスドレインを、アズールの姿を認めたはずだ。だが、反応は無い。 21

2012-05-02 15:53:23
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ランペイジは歩きながら右手のマニュピレーターを開閉する。左腕はだらりと垂れ下がっている。その仮面の下の表情は、感情は、もはや何者にも窺い知ることはできない。接近してくるのは、人の形をしたひとつの装置……暴力を行使し、殺し、壊す装置なのだ。 22

2012-05-02 16:02:00