伊藤剛さんが語る『不来方城の虎』

4
伊藤 剛 @GoITO

いま実は実家で「シラン・シラン・ドテン・ドテン」の元ネタ、九戸の民話『オドテさま』を20余年ぶりに読み返したり。未来社刊『日本の民話』全37巻、別巻1巻。小四のとき読んだ『オドテさま』は異様に憶えていた。暗記してんじゃ? ってくらい。 http://t.co/KEjZ0y2d

2012-05-03 23:57:00
拡大
@usokohontoko

@GoITO こんばんは。「オドテさま」って言うのですか。。妖怪なんですか?

2012-05-04 00:00:00
伊藤 剛 @GoITO

ところが、『オドテさま』収録の第一巻「津軽・岩手篇」でも記憶にない話が大半。小学校のころ全巻読破したはずなのに。しかし民話であるから意味不明な話も結構あるし、子供向けにアレンジしていない、一次資料みたいな本を淡々と読み進めてたとは、我ながら薄気味悪いこどもであったことよと思うw

2012-05-04 00:00:11
伊藤 剛 @GoITO

それはそれとして、いま大人になり多少は知識も知的な枠組みも身についた目で読むと、なるほど民話は面白い。ただ専門のひとが解釈を加えたテキストが別に欲しくなる。

2012-05-04 00:03:05
伊藤 剛 @GoITO

で、ぱらぱら読んでたんだが、『不来方城の虎』という話が興味深かった。これは民話というよりも口伝で伝えられた歴史上の逸話という体なんだが、大坂夏の陣の後、藩主南部利直が徳川家康から下賜された二頭の虎をめぐる物語だ。

2012-05-04 00:07:31
伊藤 剛 @GoITO

出典は「篤焉家訓その他より」とある。標準語で書かれており、構成もしっかりしているため、編者による編集が加わっているものと思われる。メッコ(片目)の小六という、熊と戦って不具となった元マタギの男を主人公に据え、二頭の虎をめぐる血腥い物語が展開する。

2012-05-04 00:16:26
伊藤 剛 @GoITO

二頭の虎は、ランギク丸とボタン丸と名づけられ、なぜか藩内の犬が彼らの餌として供出させられる。そして十年が経ち、ランギク丸が檻から脱走。虎たちを育ててきた小六は鉄砲隊を前に、なんとかランギク丸を大人しく檻に戻そうとするが、殺気づいた虎に組み伏せられる。

2012-05-04 00:20:09
伊藤 剛 @GoITO

まさにそのとき、藩主・南部利直が城から放った銃弾がランギク丸の眉間を撃つ。この事件ののち、残ったボタン丸は城内から寺へ移される。やがて藩主利直亡きあと、重直の代となり、ボタン丸の餌としてきた犬がしだいに尽きてきた。

2012-05-04 00:22:47
伊藤 剛 @GoITO

おりしも幕府による切支丹弾圧が厳しさを増してきた頃である。餌となる犬の徴発が困難となり、「そこで重直は切支丹を虎に食べさせることにしました」(p.270)という。

2012-05-04 00:25:08
東畑開人×斎藤環 対談集『臨床のフリコラージュ——心の支援の現在地』青土社 @pentaxxx

@GoITO なんというか、類型的じゃないの。マヨヒガとかウソトキとか龍神の神楽とか好きだったなあ。お話しの構造がしっかりしていて、どうして自分が恐怖や絶望を感じたのかが把握できるような気がした。つまり教育的。

2012-05-04 00:26:21
伊藤 剛 @GoITO

その後、餌として与えられたマタギ犬・ヨヅがボタン丸の喉笛に食らいつき、ボタン丸はヨヅの身体を引き裂いたものの、自身も果ててしまう。二匹の死骸は城の東南に埋められ、「虎が石」という石が置かれたが、後に米内蔵が建てられたとき失われてしまった、と記されている。

2012-05-04 00:28:22
伊藤 剛 @GoITO

で、オチはない。「年老いたメッコの小六は、ボタン丸のあとを追うように、まもなく死んだと伝えられます」と結ばれているのみだ。

2012-05-04 00:29:06
伊藤 剛 @GoITO

@usokohontoko まあ妖怪ですかね。神様といったほうがいいのかもしれませんが。

2012-05-04 00:29:48
伊藤 剛 @GoITO

@pentaxxx せんせー、ウソトキは秋田ですぜ、と言おうとして手元の本を確認したら、ちゃんと第一巻に載ってるじゃないですか。記憶ってあてになりませんねorz いま見ると金山の話で「遠野の小友村」って書いてあるので、ああ北上山地南部の花崗岩に伴う老脈の金ねと分かるんですがw

2012-05-04 00:32:47
伊藤 剛 @GoITO

@pentaxxx で、突出の件ですが、してると思いますよ。何度も読み返した形跡がある巻がいくつかあるんですが、その筆頭です。いやしかし、先生の郷土愛に火をつけてしまったか……w

2012-05-04 00:33:57
伊藤 剛 @GoITO

それはそれとして、『不来方城の虎』を連投で紹介して、いったい何がしたかったんだ俺は。

2012-05-04 00:34:48
東畑開人×斎藤環 対談集『臨床のフリコラージュ——心の支援の現在地』青土社 @pentaxxx

僕の記憶は確か。だって他県の巻は読んでないもの,つまらないから。 RT @GoITO せんせー、ウソトキは秋田ですぜ、と言おうとして手元の本を確認したら、ちゃんと第一巻に載ってるじゃないですか。

2012-05-04 00:36:09
伊藤 剛 @GoITO

『不来方(こずかた)城の虎』の出典、「篤焉家訓(とくえんかくん)」とはこの本のことですね。ネットは偉大だ。こういうデータがすぐ引き出せる。なお「不来方城」というのは盛岡城の古名。http://t.co/zxt02oz7

2012-05-04 00:37:39
@usokohontoko

@GoITO ありがとうございます。不来方城の虎の話、とても印象深くずっと憶えていそうな気がします。小六があとを追うように亡くなる場面は、うちの近所に住んでた独り暮らしの男の人と飼われていた秋田犬を思い出しました。

2012-05-04 00:39:52
@usokohontoko

@GoITO 貴重なツイートありがとうございました。ゾワッとしてしんみりした時間でした。

2012-05-04 00:43:35
伊藤 剛 @GoITO

同じシリーズの別巻『みちのくの長者・和尚・百姓たち』はご存知でした? こっちも岩手の長者話が多いです。百姓、は子供のころスルーしてたのを思い出しました。いま見ると民俗学の聞き書きっぽい感じ。RT @pentaxxx 僕の記憶は確か。だって他県の巻は読んでないもの,つまらないから。

2012-05-04 00:45:27