だとしても、と微睡みつつも思う。信じると、そうは云ってくれたが、それでもだ。この薄い胸も少しばかりはふっくらしたとは云うものの、あらぬ誤解に惑わすほどのモノでもあるまい。それでも「これが良い」と聞かされれば哀しいかな、ときめきさえ覚えかねない肉体の性に苦笑いも溢れると云うものだ。
2012-05-02 06:32:18もう背丈など、追い抜かれて久しいと云うのに。胸許に顔を寄せて(埋めて、ではないのだ)、立てる寝息に髪は揺れる。その都度擽られて、上げそうになる声を幾つ呑み込んだか。甘やかに走る痺れに、熾火のように応える躯。全く、操り人形のくせに、そんなところだけ精密で無くても良いのに。
2012-05-02 06:48:01"肉体的な発達に対し精神のそれがアンバランスな程に早熟"とはまあ、ウチの家系の女どもがそんな感じな訳で。どうも元を辿れば数代それ以上前からの話らしく、あと外見的な特徴として色素が薄いとか、直毛の黒髪で長く伸ばすものが多いとか、そう云った傾向も強かった。それと、年齢不詳も多い。
2012-05-11 07:50:54「そうね。半信半疑と云う他なかったわ。まさか、貴女がそんな風に……いえ。"ここ"に立ち寄る必要はなかったでしょう。どうして」「貴女を責めるのはお門違いね、分かっていたのだけど」「いえ、仕方ないわ……止めることも、出来たかも知れない」「それでも行ったでしょうね、あの娘は」「そうね」
2012-05-18 04:59:16「でも、駄目ね……私がそれを選んだら、貴女の願いを閉ざすことになる。そんなこと、出来る訳ないじゃない」「え……」「ほんとうに、大きくなったわね」
2012-05-27 05:31:01戦輪の魔女、そう呼ぶらしい。世に倦んだどこぞの姫であったとも聞く。遺したものは、歯車と戯曲。世界と云う大舞台のからくりを、ほんの僅か恣にする御業。(ああ、そうか。この人がーーかつての、あの)「ふふ。どこかで何度もお遇いしたような、ねえ? そんな一幕も、この舞台にならあるかしら」
2012-05-27 14:06:11「とは云うものの、だ。確かにキミの能力でならその欺瞞は不可能な事ではないだろうね。だけど」感情はない、筈だ。なのに、そこで区切られた一言はひどく重く、不吉に聞こえた。「それには、残念ながら––今のキミでは力不足だ」「どう云う、ことだ」「言葉通りだよ。キミの出力では無理だ。但し、」
2012-05-27 05:02:47「呪的増幅と––云うのだったかな。感覚の一部を代償に、より大きな魔力のゲインを得る。この星本来の土着魔術の技法だが、キミたちにもそれは有効な筈だ」「感覚を……犠牲に」「行使する能力との関係が密であればあるほど効果は高い。つまりキミの場合は––眼、だ」「この眼……ひとつで……」
2012-05-27 05:13:29無意味と無軌道の果てに、それでも波紋を投げかけるのがさやかだ。稚さゆえの視野狭窄のまま、それでも決断するのがさやかだ。その結果を、誰が嗤える。ヒトでなくなっても、この世に留まれなくなっても、誰が否と云える。
2012-05-28 02:41:55と云うのはあり、本編では必ず消えるけれど誰の回想にも顔を出す、皆そのやり取りを思い出しては前に進めるきっかけになる、そう云う位置づけだと思っている。
2012-05-28 02:44:51レディス・ディシジョン
……そうか。あの後しばらくは仁美にも「見える」可能性があっても不思議はないんだ。「血」の補正は恐らく織莉子級にあるだろうし、けれど……あの子は断る。多分、約束が果たせないとか、そんな理由で。
2012-05-18 02:47:13「やはり、なんとしても阻止すべきだったかも知れない。手痛い損失だ」「っ、ひと言目がそれかよ! テメエ……っ!」「……だが、新たな因果値の反応を確認した」「!」「……そいつは、やめとけ。いや……行くだけ無駄だと思うがな」「心当たりがあるんだね」「ああ。あいつは契約なんてしないよ」
2012-05-18 02:57:54そう、ほんのしばらくの間のことだ。その経験は、私に世界の見えざる形を教えることとなる。もたらされた誘いを断りはしたものの、友が歩んだ道を私も知った。だからこそ、私はただ人のままであり続けようと。それだけが、友との約束を果たせるのだと。そして、彼女らを——支えようと。
2012-05-19 05:30:37「お薦めは……いたしかねますわね。大なり小なり、ヒトであることと引き替えの所行ですから。それに、貴女にはご友人とのお約束も……あるのでしょう?」
2012-05-19 05:54:52「そうか。今のキミにはボクが見えているんだね。けれどそれはキミ自身の力じゃない。そう、キミに魔法は……必要ない筈だ」「……ええ。そうですわね。私までそちら側に行ってしまっては、約束が果たせなくなりますわ」「残念だが賢明な判断だよ、それは。彼女がキミたちを守ったのは……正解だった」
2012-05-17 23:29:19M家とS家の交誼は存外に長い。この街の歴史を語るならその名は幾度となく表裏の舞台に記されている、と云っても過言ではあるまい。今代においても、それは連綿と生き続けていると云うことだった。
2012-05-19 06:06:35で、あるならば。「そのようなおつもりでしたら、私にも微力ながらお力になれるかも……知れませんわね。貴女のお父様と、我が父がそうであったように」「ええ、それはその節に是非」
2012-05-19 05:59:49「時空を穿つもの」