ハートネットTV「シリーズ貧困拡大社会(3)生活保護世帯の子どもたち」書き起こし・ほぼ完全版

NHK・eテレで放送されたものを文字起こししています。 進行:山田賢治アナ  ゲスト:あさのあつこ(作家)     湯浅誠(反貧困ネットワーク事務局長) (4)「貧困の連鎖は断ち切れるか」のまとめはこちら⇒ http://togetter.com/li/308141
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とし @toshihiro36

<ナレーション> これまで子育てを一手に引き受けていた母親が寝込むようになり、娘のエリさんの暮らしも一変しました。休みがちになり、小学校の給食費を滞納するようになったのです。担任の教師も事情を聞くため何度か家を訪問しましたが、

2012-05-21 21:51:32
とし @toshihiro36

<ナレーション> 授業参観には父親が出席していたこともあり、深く追及することはありませんでした。家族のことをすべて一人で抱え込むようになり、父親の浩司さんは追い込まれていきました。17年前に脳梗塞で倒れた祖父は、ほとんど寝たきりの状態です。

2012-05-21 21:55:57
とし @toshihiro36

<ナレーション> 胃から栄養をとる胃ろうの取り換えなど、祖父の面倒も浩司さんが見なければならなくなりました。祖父の介護に慣れない家事や子育て、浩司さんは不安をまぎらすため次第にお酒に頼るようになりました。これまで生活保護は恥ずかしいから拒んでいたという浩司さん。

2012-05-21 22:04:09
とし @toshihiro36

<ナレーション> しかしケースワーカーに強く勧められ、今回受給を決断しました。

2012-05-21 22:07:08
とし @toshihiro36

浩司(父親):すごく複雑だよね。あまりにもみじめ過ぎちゃってね。兄弟には話せないし。まさかこんなことになるとは思わなかったけどね。

2012-05-21 22:13:53
とし @toshihiro36

<ナレーション> 母親は病にふせり父親はお酒に頼るようになるなか、エリさんの面倒を見てくれる人はいなくなりました。そんなエリさんを支えてきたのが、小学校で過ごす時間だといいます。成績はクラスでもトップレベル。さらにバドミントン大会で活躍するなどスポーツも得意です。

2012-05-21 22:19:35
とし @toshihiro36

<ナレーション> 生活保護を受けることで、一家の経済的な不安はひとまず解消されることになります。しかし不衛生な環境で体調を崩しがちの、エリさんをどう支援していくのか。今後、父親が子育てを担うことができるのか。大きな不安がありました。

2012-05-21 22:27:07
とし @toshihiro36

ケースワーカー・長谷部:あの女の子ね、あの環境の中で彼女が育っていくことがどうかって。お風呂も、聞いたら正月前くらいから入ってないって言うんですよ。小学校5年生の女の子がね、何カ月もお風呂に入らないで…考えられないですよね。

2012-05-21 22:33:59

スタジオに戻ります

とし @toshihiro36

山田:お風呂場で横になっていたお母さんですが、私たちの取材のあとにケースワーカーの紹介で病院に入院することになったそうなんですが…どう感じましたか?

2012-05-21 23:03:31
とし @toshihiro36

あさの:いまこういうのを見せていただいて、私は貧困の現場とか実態というものに…何も知らなかったんだなあと、つくづく唖然としている自分がいて。そして、そういう状況の中で11歳の少女が生きるって、どういうことなんだろうと思うんですね。

2012-05-21 23:09:11
とし @toshihiro36

あさの:子どもってやっぱり二重の枷(かせ)があるっていうのがあって。社会の枷と大人の枷、二つを背負わないといけないことがあって。例えばひとつの状況から抜け出そうとしたとき、大人にはもちろんその可能性がありますよね。だけど子供には自分たちの力ではどうしようもないことがあるんですよ。

2012-05-21 23:15:07
とし @toshihiro36

湯浅:社会全体としてはやっぱり子育てというのは親の責任であって、外もタッチしないかわりに問題があったら親の責任だよといってやってきたことが…まあ、行き詰まっているということなんだろうと。

2012-05-21 23:20:53
とし @toshihiro36

湯浅:あのお風呂場で寝ていたお母さん、おばあちゃんが亡くなってしまって、それまで二人で家事などを分担されてて…おじいちゃんの世話なんかもやってたと思うんですけど。そういう相談相手とか家事を分担できる人が亡くなって、今度はお父さんの肩に全部かかってきて。

2012-05-21 23:26:30
とし @toshihiro36

湯浅:そしてお父さんがアルコールに走るという形で倒れて。結局、子どもが取り残されてるという…その現状は何らかの支援という形での介入が必要であって、「お父さん、頑張れよ」と言ってもよくなっていかないということだと思うんですね。

2012-05-21 23:31:41
とし @toshihiro36

山田:子どもが「もう、この状況から抜け出せない」と半ばあきらめのような気持ちになってしまうと…

2012-05-21 23:34:16
とし @toshihiro36

あさの:子ども個人の未来が閉ざされるだけではなくって、私たちあるいは私たちの国とか社会そのものが閉ざされるということじゃないですか。子どもたちに未来がないということは、そういうことですよね。そこまでの危機感が大人たちにあるのかなっていう。

2012-05-21 23:39:05
とし @toshihiro36

あさの:家庭が悪いんだとか、運が悪いんだとか、あるいはかわいそうにとか、何とかしてあげなくちゃねというあたりでとどまっているのが…私を含めた現実ですね。

2012-05-21 23:42:24
とし @toshihiro36

湯浅:なかなか自分の問題として受け止めるのは難しいとは思うんですね。他人の家庭の中って、ヘルパーさんと違って入っていかないので…まあ、普通はそういう家庭は珍しいんだろう、例外なんだろうって思いたくなっちゃって、切り離したくなっちゃうと思うんですが。

2012-05-21 23:47:53
とし @toshihiro36

湯浅:残念ながら家族で社会から孤立しているって状態は、孤立死という問題も増やしてしまいますし…やはり外からのかかわり方、そして家庭も外に開いていくということが、いろんな意味で早めの対応を可能にしていくんだと思いますね。

2012-05-21 23:52:19
とし @toshihiro36

山田:エリさんのような生活保護世帯の子どもをどう支援していくのか。実は神奈川県では子ども支援員という新たな制度が始まっています。

2012-05-21 23:54:39

VTRが流れます

とし @toshihiro36

<ナレーション>エリさん一家の生活保護を担当する、神奈川県の福祉事務所です。エリさんに家を訪問したケースワーカーが相談しているのは、子ども支援員の宮沢恭子さんです。子ども支援員は神奈川県が2年前に設けた専門のスタッフ。

2012-05-22 06:11:20
とし @toshihiro36

<ナレーション> 子どものいる生活保護世帯を直接訪問し、勉強や健康状態などさまざまな相談に乗り、支援を行っていきます。長年福祉事務所や児童相談所に勤めてきた経験を持つ宮沢さん。最も心配したのは、エリさんが学校に行けなくなってしまうのではないかということでした。

2012-05-22 06:17:23
とし @toshihiro36

宮沢:学校生活が安心して送れていれば、それが一番いいと思います。子ども自身がいまの環境を、どんなふうに思っているのかを聞きたいと思います。

2012-05-22 06:20:49