ハートネットTV「シリーズ貧困拡大社会(4)“貧困の連鎖”は断ち切れるか」書き起こし・ほぼ完全版

NHK・eテレで放送されたものを文字起こししています。 進行:山田賢治アナ ゲスト:あさのあつこ(作家)     湯浅 誠(反貧困ネットワーク事務局長)
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とし @toshihiro36_sub

<ナレーション> センターの支援を受けて、貧困状態から抜け出すきっかけをつかんだ人がいます。食品の配送会社で働くマリさん(23)です。マリさんの家族は4人暮らし。小学校の頃から母親がパートをしながら家計を支えてきたといいます。

2012-05-22 14:47:40
とし @toshihiro36_sub

<ナレーション> 学費を支払う余裕がないため、マリさんは高校進学を断念。以来、家に引きこもるようになりました。去年、母親の勤めていたスーパーが不況で閉店し、マリさんは働くことを決意します。しかし7年間引きこもっていたため、人と接するのは苦手です。

2012-05-22 14:52:14
とし @toshihiro36_sub

<ナレーション> 自分で仕事を探しましたが、就職先は見つかりませんでした。マリさんが仕事探しを諦めかけていたとき、市役所に紹介されたのがパーソナルサポートセンターでした。センターがまず行ったのが職業の適性検査でした。

2012-05-22 14:55:35
とし @toshihiro36_sub

<ナレーション> 情報処理や作業処理などの能力を調べ、どんな仕事が向いているのか客観的に判断しました。検査の結果、マリさんは手先を動かす能力が優れていることがわかりました。そこで就労支援の専門スタッフが、あまりコミュニケーションを必要としない軽作業の仕事を探し始めました。

2012-05-22 14:59:21
とし @toshihiro36_sub

<ナレーション> 企業側にはマリさんの素性を説明しました。相手が事情を理解してくれなければ、仕事は長続きしないと考えるからです。就労支援を始めて3カ月経った2月末、試しに実習生といて採用してもいいと応じてくれたのがこの配送会社でした。

2012-05-22 15:05:32
とし @toshihiro36_sub

<ナレーション> 仕事は週3回、朝8時半から午後2時までの短時間勤務。これまで働いた経験のないマリさんが挫折しないよう、センターが雇用主と交渉して設定しました。マリさんが仕事に就いたあとも、センターのスタッフは定期的に職場を訪れています。

2012-05-22 15:09:22
とし @toshihiro36_sub

<ナレーション> 何か問題や悩み事がないかきめ細かくフォローし、マリさんが仕事に定着できるまで見守り続けます。センターの市支援のもと、マリさんは実習期間の1カ月を1日も休まず通い、パート社員として雇われることが決まりました。

2012-05-22 15:14:24
とし @toshihiro36_sub

<ナレーション> 今後、勤務時間を少しづつ延ばして、一人前の仕事ができるようになりたいというマリさん。自立に向けた第一歩を踏み出しました。

2012-05-22 15:17:27
とし @toshihiro36_sub

マリ:幸せですよ、やっぱり。外の空気吸えるじゃないですか。家にいたら吸えないじゃないですか。だからいいですよ。いろいろ学んでいきたいですしね。ここで、いろんなことをやってみたいですけどね。

2012-05-22 15:19:52

スタジオに戻ります

とし @toshihiro36_sub

山田:マリさん「幸せですよ」という言葉も尾ありましたが、この支援どうご覧になりました?

2012-05-22 16:33:43
とし @toshihiro36_sub

あさの:ホントに一言でいえば、ほっとしたというか。こういう救われ方もあるんだというケースを、見せていただいたという気がすごくするんですけど。マリさんが「幸せだった」と言った時に可能性ですよね…彼女自身の可能性であり社会の可能性でありこの国の可能性が、見えた気がしたんですよ。

2012-05-22 16:38:42
とし @toshihiro36_sub

あさの:山田:どうしても家庭の状況が貧困だと…どうしても見えないような力でズルズル落ちていってしまう可能性が高いなかで、なんとかそれを断ち切るという社会の考え方…

2012-05-22 16:41:32
とし @toshihiro36_sub

湯浅:やっぱり社会が長期的な視点に立てるかということだと思うんですよね。いまの現状のマリさんをサポートしていくには、それこそ人件費等々がかかります。だけど、そのお金をケチって放置すれば、より深刻な状態になっていく。

2012-05-22 16:45:52
とし @toshihiro36_sub

湯浅:いまちゃんと支えることが、マリさんにとっても社会全体にとってもプラスが大きいという視点に立って、いま必要なものにきちんとお金を出すということが社会の選択ですよね。私たちの選択だと思います。

2012-05-22 16:48:36
とし @toshihiro36_sub

あさの:私たちはサポートのスタッフにはなれないかもしれないけど、そこを支えることはできるし応援することもできると思うんですね。知ろうとすることや見ようとすることが、個人個人に必要だなって思いますよね。

2012-05-22 16:53:37
とし @toshihiro36_sub

山田:2日間にわたって今回も貧困について見てきましたが、あさのさん。

2012-05-22 16:54:39
とし @toshihiro36_sub

あさの:十代で生きる困難を背負ってなお歯を食いしばって生きている子どもたちって、人としての力がすごいと思うので。子どもたちがいるからこそ、生きていける大人たちっていると思うんですよ。(子どもたちは)存在するだけで、たくさんの大人や社会を支えているということは伝えたいなと思う。

2012-05-22 16:59:10
とし @toshihiro36_sub

湯浅:子どもに限らないですけど、困難な状態にいる人というのは、いわば地域の課題・社会の課題を背負っているので…私たちはそこから何が社会の課題なのか教えられるわけですね。それに対応することで、解決力を地域や社会が身につけていく。

2012-05-22 17:02:19
とし @toshihiro36_sub

湯浅:そういう意味で、困った人・困った子どもの存在というのは、社会に「これが問題だよ。これが解決できてないんだよ」と教えてくれる宝物だと思っていて。それに社会が解決能力をつけていくことが(社会を)よくしていく。

2012-05-22 17:05:42
とし @toshihiro36_sub

湯浅:実際にその中で本人が本当に社会を支えられる存在になっていく。そういう循環が…現場にいると見えるんですけどね。それがなかなか社会全体に見せられてないというところが、これからの課題だなと思います。

2012-05-22 17:09:00
とし @toshihiro36_sub

山田:皆さんの中にもさまざまな悩みを抱えている方がいらっしゃると思います。ここでひとつ窓口をご紹介します。「よりそいホットライン」です。電話番号が0120-279-338番です。「つなぐ、ささえる」と憶えてください。アクセスしてみてください。

2012-05-22 17:13:24
とし @toshihiro36_sub

山田:1年間シリーズでお伝えしています「貧困拡大社会」。私たちはこれまで見えなかった貧困の現状を、これからも見つめていきます。今日はありがとうございました。

2012-05-22 17:15:25