シリーズ「係」

世の中にある、と思われる様々なお仕事や係についての#twnovel。
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七歩 @naholograph

夢を作る工場で働いている。コンベアで運ばれる量産品の夢を、最後に匠がトンカチでトン。ヒビが入れば出来上がり。ヒビの入り方で夢の壊れ方や寿命が決まる大切な工程らしい。綺麗なままじゃいけないのと尋ねると、金で買われるような夢さと今日もトントン。匠の鋭いトンカチが響く。#twnvday

2015-09-14 12:07:17
七歩 @naholograph

棘を抜く仕事をしている。薔薇も少女も大体同じ。ひとつひとつ丁寧に抜いていくと今まで見えなかった柔らかな部分が見えてくる。なぜこの仕事を人に任せたりするのか僕には解らない。全ての棘が抜かれた瞬間、恥じらいで赤に染まるその姿が最も美しいというのに。薔薇も、無論少女も。#twnovel

2015-10-20 22:41:21
七歩 @naholograph

ペンキ屋の僕らはこの時期大忙しで毎日葉っぱに色を塗る。赤や黄色、散りゆくさだめの者たちに最期の化粧を施す作業。心持ち高く頑張ったところで、時にくじけたりやさぐれたりもする。だから時々悪戯もする。あの子の心の色を塗り替え、君の頬に紅葉を散らした犯人はそう、僕です。#twnovel

2015-11-16 23:19:21
七歩 @naholograph

足を引っ張る仕事をしている。大臣の辞任も僕のせい。ごめんなさい。謝ると、「何をしてくれたの?」と問う大臣。隠された罪を見つけて引っ張り出しましたと答えると、「何もしてないのと同じだ」と笑う。なぜ穏やかな顔をしているのか。優しく撫でるのか。僕は理由を計りかねている。#twnovel

2016-01-29 00:38:07
七歩 @naholograph

お針子をしている。壊れた部分を繕うよう言われたが、そのまましては歪にひきつれ縮んでしまう。問題ないってそんなはずない。私はこっそり素材を探す。破れた穴を塞ぐもの。それはありがとうだったりごめんなさいだったり。修復した心が壊れる前より大きくなるくらいがちょうどいい。#twnovel

2016-03-21 23:57:36
七歩 @naholograph

扉を守る仕事をしている。銀行や牢獄など難しい扉を守ってきたが失敗して心の扉に左遷された。不真面目な上司は勤務中でも化粧直し。頑なに扉を守る俺に、そんなんじゃダメよと言うと少しだけ扉を開いた。これくらいは開けておくの。指導する赤い唇にドキリと、いやいやそんなことは。#twnovel

2016-05-30 21:03:36
七歩 @naholograph

仕事をさぼりたくて言い訳屋を使うことにした。意外にもお手頃価格値段で利用しやすい。これで楽になれるならと使い続けていたある日、「もう無理だ」と言い訳屋。「あんた安い言い訳ばかりだからさすがに辻褄が合わない」#twnovel 効果的な言い訳は高価だ。僕はそれを買うために働いている。

2016-06-17 21:27:41
七歩 @naholograph

雲を掴む仕事をしている。掴みどころのない雲を朝から晩まで一生懸命追いかける。そんな仕事だ。一度も掴めたことはないが、それでいいと親方は言う。現にこの仕事を支える募金はあとを断たない。それで救われるヤツもいるのさと言いながら、親方はうっかり掴まえた雲をそっと放した。#twnovel

2017-06-23 06:44:40
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