NHK・クローズアップ現代「“牛レバ刺し”全面禁止の波紋」書き起こし・ほぼ完全版 #nhk
- toshihiro36
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国谷:こうしたリスクがあるなかで、リスクはリスクとして受け止めながら、食の自由と両立させることは可能なのか。その取り組みをご覧ください。
2012-06-07 10:31:47VTRが流れます
<ナレーション> 豊かな食文化を育んできたフランス。なかでも伝統の製法を頑なに守り続けてきたチーズは、フランスを代表する味の一つです。そのおいしさの秘密は、搾りたての牛乳を殺菌せずにそのまま原料として使うことにあります。
2012-06-07 10:40:15<ナレーション> 生乳に含まれているさまざまな成分がチーズの熟成に深くかかわり、それぞれの産地特有の風味やコクを醸し出すのです。しかし90年代ヨーロッパやアメリカで、チーズを原因とする食中毒事件が多発。フランス国内でも30代の女性と幼児が亡くなりました。
2012-06-07 10:42:32<ナレーション> 国際社会から厳しい目が向けられるようになり、「原料となる生乳に対して、殺菌を義務付けるべきだ」とする声が高まったのです。
2012-06-07 10:44:53チーズ農家・シュプイット:生乳に含まれる細菌の働きがなかったら、昔ながらのチーズの味は出せません。伝統の味も、いよいよ終わりだと思いました。
2012-06-07 10:47:59<ナレーション> 食中毒は見過ごせない問題ではあるものの、大切に育んできた食文化を絶やしていいのか。フランス全土に昔ながらのチーズを作ろうという運動が広がっていきました。現在フランス政府は、国内向けのチーズについては伝統的な製法を保護。
2012-06-07 10:53:00チーズを守る会・代表:食のリスクをゼロにするのは不可能です。禁止すればリスクを排除できますが、失うものが多すぎます。リスクとうまく向き合いながら、食文化の多様性を維持していく方法はあるのです。
2012-06-07 10:58:54<ナレーション> 一度は途絶えてしまった伝統の食文化を復活させようという動きもあります。究極の美味といわれながらも、その猛毒ゆえにおよそ30年前に禁止されたフグのキモ。かつて九州の一部の地域などではその毒を消す伝統の調理技法が受け継がれ、盛んに食されてきました。
2012-06-07 11:03:48<ナレーション> そのフグのキモを食べる文化をもう一度復活できないか。佐賀や長崎などでは、10年ほど前から毒を持たないフグの養殖に取り組んできました。その取り組みを支えてきたのがフグ毒研究の第一人者、野口玉雄さんです。
2012-06-07 11:09:55<ナレーション> 野口さんは、フグは生まれつき毒を持っているわけではなく、毒を含んだエサを食べることで体内に蓄積させてゆくのではないかと考えました。この仮説が正しければ、毒の成分を含まないエサを与え続けることで、無毒のフグが育つというのです。
2012-06-07 11:11:37野口:先祖が危険を冒しながら、ずっとその文化を維持し続けてきた。これを安心・安全なかたちで、発展させることができるのではないかと。
2012-06-07 11:17:06<ナレーション> そして毒を持たないフグの研究を続けて10年あまり、一万匹を超える無毒養殖で育ててきたフグのキモを調べてきましたが、毒は検出されていません。この研究成果はイギリスの科学雑誌ネイチャーにも取り上げられるなど、世界からも注目されています。
2012-06-07 11:21:27スタジオに戻ります
赤池:これは食に限ったことではないと思うんですけれども、リスクがあるからとそ僕らは智恵を絞るわけですよね。例えば能登の方では、毒性のあるフグのキモをぬか漬けにすることで食べられるようにするとか。そういう技術を生みだしてくるんですよね。これを大切にすべきだと思っていますね。
2012-06-07 13:39:13国谷:一方でフランスでは生乳を殺菌せずに…どうしても伝統の味を守りたいということで、消費者がみずから立ち上がって殺菌に反対をした。日本とは対照的な動きが起こったんですね?
2012-06-07 13:43:35赤池:学ぶべきものは、署名運動といった手法ではないと思うんですね。フランス人は自国の食文化を守るために、自分たちで良い事業者とか良い食品を選んでいくという覚悟が背景にある。この部分を日本人も感じてほしいなと思いましたね。
2012-06-07 13:47:46国谷:O-157がレバーの内部から見つかったということで、全面禁止という方針になっていますけれども。そのなかで自分の好物だったレバ刺しをお店で食べられなくなるというのは、厳しいなと思ってらっしゃる方も多いと思うんですけれども。なんとか両立っていうシナリオは描けないんですか?
2012-06-07 13:52:31赤池:やっぱり一番のポイントは、賢い消費者を育てていくことだと思うんですね。そのためには厚生労働省も単なる規制省庁として動くだけではなくて、良質な事業者とかその取り組みをきちんと生活者に情報公開をしていく。
2012-06-07 13:57:46国谷:この全面禁止の期間の間に、先ほどおっしゃった良いネットワーク・信頼のネットワークの再構築ができたらいいなということですか?
2012-06-07 14:06:40