藤原編集室(@fujiwara_ed)さんのH・R・ウェイクフィールド『ゴースト・ハント』収録作紹介

藤原編集室(@fujiwara_ed)さんのH・R・ウェイクフィールド『ゴースト・ハント』収録作を紹介,関連情報等も追加
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藤原編集室 @fujiwara_ed

28日の発売に向けてH・R・ウェイクフィールド『ゴースト・ハント』(創元推理文庫http://t.co/JaXVM80Y)の収録作をご紹介。一日目は巻頭を飾る作者の怪奇小説第一作「赤い館」。

2012-06-14 10:12:58
藤原編集室 @fujiwara_ed

夏別荘として川辺に建つ古い館を借りた画家は、息子が訳もなく川を怖がるのを気にしていましたが、家に足を踏み入れると、絨毯の上に緑色の柔らかい泥のかたまりが落ちているのをみつけます。それが怪異の始まりでした。

2012-06-14 10:15:29
藤原編集室 @fujiwara_ed

いくつかの不穏な予兆のあと、一家は館に棲む「もの」の襲撃を受け、恐怖の一夜を過ごします。この家はこれまで何十人もの謎の死者を出してきた魔所だったのです。

2012-06-14 10:16:35
藤原編集室 @fujiwara_ed

一家を襲う怪異を凄まじい迫力で描き、ウェイクフィールドの名をM・R・ジェイムズ以来の英国怪奇小説の正統を継ぐ作家として一躍高めた傑作。しかも恐ろしいことに、この物語は作者自身の実体験に基づいているといわれています。

2012-06-14 10:17:45
藤原編集室 @fujiwara_ed

H・R・ウェイクフィールド『ゴースト・ハント』(創元推理文庫http://t.co/JaXVM80Y)収録作紹介の二日目は、この作者にはめずらしい山岳怪談「ケルン」。

2012-06-15 08:05:55
藤原編集室 @fujiwara_ed

シーブライトとウェランドの仲良し二人組は、湖沼地方旅行の締めくくりにブルードン登山を思いつき、宿の主人に案内人を頼みます。しかし、主人の答えは「村の者は行かないと思います」

2012-06-15 08:06:36
藤原編集室 @fujiwara_ed

なぜ?という二人の追及に主人は、雪が積もっている間は村人はけっしてブルードン山には登らないのだ、と打ち明けます。どうやら村の人々は、雪が降ると山中に現れる何かを恐れているらしいのです。

2012-06-15 08:07:17
藤原編集室 @fujiwara_ed

ばかばしい迷信と一笑に付したシーブライトは、翌日、足を痛めているウェランドを宿に残し、ブルードン山へと出発します。ウェランドは宿に備え付けの望遠鏡でその姿を追っていましたが……。

2012-06-15 08:08:05
藤原編集室 @fujiwara_ed

雪山に出没する怪異という比較的ストレートな題材を、麓から望遠鏡で目撃するという視点の妙が味わい深いものにしている一作。クライマックスへ向けて加速していく語りも見事。本邦初訳作品です。

2012-06-15 08:09:15
藤原編集室 @fujiwara_ed

登山を題材にした怪談では、アルプスの雄大な自然を背景にして異様な迫力のあるアン・ブリッジ「遭難」(『怪奇小説の世紀』第2巻、国書刊行会、所収)もおすすめです。

2012-06-15 08:10:02
藤原編集室 @fujiwara_ed

山岳怪談アンソロジーなんかも面白いかも。@kwaidan_yoo安曇潤平「八号道標」(『赤いヤッケの男』所収)等と読み較べると興趣倍増!(雅)RT @fujiwara_ed:『ゴースト・ハント』収録作紹介の二日目は、この作者にはめずらしい山岳怪談「ケルン」。

2012-06-15 11:22:48
藤原編集室 @fujiwara_ed

H・R・ウェイクフィールド『ゴースト・ハント』(創元推理文庫http://t.co/JaXVM80Y)収録作紹介の三日目は、表題作「ゴースト・ハント」。

2012-06-16 07:57:18
藤原編集室 @fujiwara_ed

ラジオ番組「ゴースト・ハント」のリポーターが、心霊学の専門家とともに、建築以来30人もの死者を出したという極めつきの幽霊屋敷に潜入、実況中継をはじめます。

2012-06-16 07:57:44
藤原編集室 @fujiwara_ed

番組冒頭では立て板に水の滑らかさで、ユーモアを交えて屋敷内の様子を説明していたリポーターの語りが、時間が経つにつれて、だんだんおかしくなっていくのが恐怖感を高めます。二階の部屋を調べに行った「教授」はどうやらすでに……。

2012-06-16 08:00:11
藤原編集室 @fujiwara_ed

短い枚数ながら、恐怖度の点では本書中でも群を抜く傑作です。(前にも言いましたけど、どこかでラジオドラマにしてくれないでしょうか)

2012-06-16 08:00:58
藤原編集室 @fujiwara_ed

H・R・ウェイクフィールド『ゴースト・ハント』(創元推理文庫http://t.co/JaXVM80Y)収録作紹介の四日目は、「“彼の者現れて後去るべし”」。『法の書』等のオカルト書でも知られる実在の魔術師アレイスター・クロウリーをモデルにした怪人物が登場する作品です。

2012-06-17 15:56:29
藤原編集室 @fujiwara_ed

ロンドンの有能な弁護士ベラーミーは、数年ぶりに会った旧友フィリップから、ある人物と知り合ったことから恐ろしいトラブルに巻き込まれている、と打ち明けられます。

2012-06-17 15:57:08
藤原編集室 @fujiwara_ed

「世界で最も危険で強大な知力をもつ」その人物オスカー・クリントンは、チベットの僧院で数年を過ごして魔術を修得し、秘密教団に参加、文明世界に復帰した後はその魔力と奇妙な魅力によって崇拝者を集め、金を搾りとり、女性を籠絡していきます。

2012-06-17 15:58:02
藤原編集室 @fujiwara_ed

クリントンは麻薬常用者で、頽廃的な芸術の愛好家にして実作者でもあり、詩集など数冊の著作を発表していました。また「素晴らしい天才の胤を可能な限り広範囲にばらまくことが自分の使命なのだ」とうそぶく猟色家で、短期間にフィリップの屋敷のメイド三人を孕ませてしまいます。

2012-06-17 15:58:35
藤原編集室 @fujiwara_ed

クリントンと袂を分かったフィリップは、そのためにこの怪人から呪いをかけられ、以来、恐ろしい影に脅かされているというのです。ベラーミーは友人を助けるために尽力すると誓うのですが・・・。

2012-06-17 15:58:55
藤原編集室 @fujiwara_ed

怪人クリントンの特異な経歴、キャラクターや発言は、たしかにアレイスター・クロウリーを思わせるもので、彼の東洋への旅、魔術結社「黄金の夜明け」への入団、詩や小説の創作、麻薬常用や性魔術などを思い浮かべる方もいらっしゃるでしょう。

2012-06-17 15:59:41
藤原編集室 @fujiwara_ed

クロウリーのモデル小説ではS・モーム『魔術師』(1908)が有名ですが、「“彼の者・・」を収録した短篇集They Return at Eveningが出版されたのは1928年。(クロウリーはまだ存命)

2012-06-17 16:00:37
藤原編集室 @fujiwara_ed

1920年代にクロウリーはシチリア島にテレマ僧院を開設、そこで行なった麻薬やセックスを通じた魔術儀式がスキャンダラスな噂を呼んだ後でもあり、そのイメージが本作のクリントンにも反映されているように思います。

2012-06-17 16:00:52
藤原編集室 @fujiwara_ed

またこの作品は、M・R・ジェイムズ「人を呪わば」の本歌取りともいうべきもので、ウェイクフィールドのジェイムズへの私淑ぶりをうかがわせます。(この作品の性的な要素をジェイムズは良しとしなかったでしょうが)

2012-06-17 16:02:31
藤原編集室 @fujiwara_ed

H・R・ウェイクフィールド『ゴースト・ハント』(創元推理文庫http://t.co/JaXVM80Y)収録作紹介の五日目は、本邦初訳「“彼の者、詩人(うたびと)なれば・・・”」。

2012-06-18 09:50:00