とんきょさんの癌死確率講座

です
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地下楽師@Ph.D @tonkyo_Vc

で、より一般化をするということはどうやってやるかについては例えばhttp://t.co/okrWBT8Tを読むと大まかな流れがわかる。

2012-06-17 00:30:50
地下楽師@Ph.D @tonkyo_Vc

職業的に原発やその関連施設で働く人の健康管理のためにLSS研究以外のデータも加え、より一般化したもの。後者ではモデルの再推定、それに加えて生涯がんリスクの推定、異なるがん死亡率の非被曝群のデータの間でどのように整合性を保ったパラメータを得るかの検討も行なっている。

2012-06-17 00:31:04
地下楽師@Ph.D @tonkyo_Vc

ちなみに、生涯がんリスクは上記リンクの2-5に記載のように、区間ごとの(年間)のEAR(これは過剰死亡者数でも同じ)を被曝時から110歳まで(結構取るんだ^^)和を取ることで求めている。勿論これは先ほどのλを時間で積分しても得られる。

2012-06-17 00:31:18
地下楽師@Ph.D @tonkyo_Vc

こういったことをICRPとかBEIRVIIではLSS研究だけでなく海外の諸地域のデータも用いながら様々な地域に平均的に成立するような単位被曝量あたりの単位人口に対する健康被害の規模を見積もってきた。

2012-06-17 00:31:31
地下楽師@Ph.D @tonkyo_Vc

見積もり対象とする数値は非被曝者における瞬間のがん死亡率のポアソン分布パラメータなので、得られるのは過剰死亡者数の予測値。それを人口で割れば、区間が生涯でなければEARであり、生涯であればLARになる。

2012-06-17 00:31:43
地下楽師@Ph.D @tonkyo_Vc

いずれにしても、もとがポアソン分布のλなので、その単位はこの場合「人」になる。それを時間で積分すれば「人・年」になり、ICRPであれ、BEIRVIIであれ、示す名目リスク係数はEARベースのものになるので、これらの数値は人口中に対する比率で、がん死亡率に対しては足すことが正しい。

2012-06-17 00:32:18
地下楽師@Ph.D @tonkyo_Vc

なお、ICRPの名目リスク係数には低線量率なら影響が小さいという結果があることからDDREF=2というリスクを薄める数値が採用されている。つまり、LSS研究では大体EAR=10%/Svだったのを5%/Svに読み替えている。BEIRVIIではDDREF=1.5を採用している。

2012-06-17 00:33:19
地下楽師@Ph.D @tonkyo_Vc

更に、ICRPではデトリメントという概念(死亡ではないが死に匹敵するQOLの低下を伴う健康被害)も数値に考慮されているので、厳密に言えばがんによって死亡するリスクの上乗せ分とは言えない。個人的にはDDREFもデトリメントも数値が曖昧になる(方向は逆だが)のであまり好きではない。

2012-06-17 00:33:37
地下楽師@Ph.D @tonkyo_Vc

なお、その様にして得られたLARであっても、これはあくまで「これまで得られた被曝データに対して統計的にもよくフィットする」ということであるに過ぎないことは重要。あくまで、これくらいの被害が発生することが予測されるので、それに応じたリスク対策を取る様に、という目安を与えるもの。

2012-06-17 00:33:54
地下楽師@Ph.D @tonkyo_Vc

つまり、ICRP勧告はこれまでの結果からこうであろうという蓋然性が高いリスクの見積もりを行なったもので、これだけの被曝を受けたらこれだけの過剰死亡者数が発生するということを予想するための数値ではないし、LSS研究結果で得られたデータについても(より一般性が低いのだから)当然同じ。

2012-06-17 00:34:15
地下楽師@Ph.D @tonkyo_Vc

その中では学習院大・田崎晴明氏のWeb book「やっかいな放射線と向き合って暮らしていくための基礎知識」は出色の内容。http://t.co/ZKqMzPlt 

2012-06-17 00:34:40
地下楽師@Ph.D @tonkyo_Vc

しっかり「『公式の考え』は、癌による死亡者の増加を科学的に予想するための「計算式」ではないし、まして、個々人が癌で死亡する危険性を見積もるためのものでもない」(p73)と書かれている。

2012-06-17 00:34:58
地下楽師@Ph.D @tonkyo_Vc

更に加えて「低線量被曝での癌のリスクについての『公式の考え』は、あくまで、そのようにして作った社会的な「目安」であって、癌による死亡率を予測するための科学的な理論ではない」(p77)とも書かれている。

2012-06-17 00:35:13
地下楽師@Ph.D @tonkyo_Vc

なお、こうして得られたICRPやBEIRVIIなどのLARはある地域や集団に対して平均的に成立するということを目的としてしているので、単純により感受性の高いと考えられる幼児、小児に対して一律に考えてよいかとは話は別。

2012-06-17 00:35:29
地下楽師@Ph.D @tonkyo_Vc

明らかに、http://t.co/1Gi30yE7 のグラフを見ても、若いときに被曝をすると特に若年時でのERRの増加は大きい。確かにそもそもこの時点での非被曝群のがん死者がすごく少ないのでEARや死亡者の絶対数としては小さい(これは事実)とはいえ、ケアは必要。

2012-06-17 00:35:42
地下楽師@Ph.D @tonkyo_Vc

もう一つ付け加えておくなら、これまでのツイートでも言及したように、LARは本来全人口に対する過剰死亡者数の比率なので、生涯がん死亡率に単純に足してしまってはいけない。それについてはhttp://t.co/XVrOpjf3を参照。

2012-06-17 00:35:58
地下楽師@Ph.D @tonkyo_Vc

いずれにしろ、今回の事故に対して被曝により死者がどれだけ増えるかとかいった議論は、上記の理由で(科学的にも統計的にも)ほぼナンセンスであるし、そもそも人の生死が確率的に支配されているということへ対する畏れも欠如している。

2012-06-17 00:36:12
地下楽師@Ph.D @tonkyo_Vc

どうも「LARは本来全人口に対する過剰死亡者数の比率なので、生涯がん死亡率に単純に足してしまってはいけない」ということの意味がわかっていない人がまだいるようだ。では、別の形で説明しておこう。以下の図を参照。 http://t.co/xCkTttUg

2012-06-18 00:54:35
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地下楽師@Ph.D @tonkyo_Vc

この図は、ある集団の累積死亡のパターンを模式化したものになる。このとき、被曝群はT1の時点で全員死亡。非被曝群はT2の時点で全員死亡となる(y軸=100%となる)。非被曝群の累積がん死亡率はこの図のAの部分の幅になる。 http://t.co/IjQV6cV9

2012-06-18 00:55:09
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地下楽師@Ph.D @tonkyo_Vc

ICRP2007に記載のある名目リスク係数は寿命損失を意味する、即ち、被曝群での平均寿命が短くなることで、被曝群がT1で全員死亡する、という仮定はリーズナブルである。

2012-06-18 00:55:33
地下楽師@Ph.D @tonkyo_Vc

一方、被曝群はT1の時点で累積の死亡率が100%に達するが、この時点でよほど特殊な条件でない限りB<Aとなる。当然B>Aはありえないし、B=Aとなるのはある年齢以降被曝が原因でないがん死は発生しないという珍妙な仮定が必要となる。

2012-06-18 00:56:12
地下楽師@Ph.D @tonkyo_Vc

ICRPの勧告は「低線量率で被曝したとき、生涯がん死亡リスクは約5.5%/Sv上乗せされる」であった。上乗せされるべき対象は、これまで述べてきたとおり「非被曝群の人口に対して」である。つまり、T1の時点でCの部分が対人口比で5.5%になることを意味する。

2012-06-18 00:56:37
地下楽師@Ph.D @tonkyo_Vc

もしそうでなく、T2のときにオレンジの部分が5.5%であるといえば、対人口比105.5%の累積死亡率になってしまい、明らかに不合理である。逆に、もし非被曝群の生涯がん死亡率+被曝によるがん死亡率+被曝以外のがん死亡率が100%になるとすると、これもまたおかしなことになる。

2012-06-18 00:57:31
地下楽師@Ph.D @tonkyo_Vc

なぜなら、第3項目の値が非被曝群の生涯死亡率‐ 被曝によるがん死亡率ということになってしまい、これでは「被曝によりがん以外の要因による死亡リスクは低減する」という明らかにおかしなことが発生することになる。これでは「被曝はプラスの効果も持つ」ことになってしまう。

2012-06-18 00:57:50