山本七平botまとめ/「”擬制”の血縁イデオロギー社会「日本」と地縁社会「アメリカ」の違い」~「共同体」化しないと機能しない日本社会の特徴とは~

山本七平著『日本資本主義社会の精神』より抜粋引用
13
山本七平bot @yamamoto7hei

26】ただこれが機能している間は、実に強固に見える擬制の血縁集団というべき共同体に転化するというだけである。機能しなくなれば崩壊し、また、機能する形で再構成される。だが、そこには組織といえる要素は皆無に近く、血縁集団のような形になる事は否定できない。

2012-06-13 04:26:32
山本七平bot @yamamoto7hei

27】そしてこの事は、日本の社会構造が変化を生じない限り、憲法が発布されようと、議会制度が導入されようと、変化は生じないし、生ずる筈もない。勿論この事は会社にも言える。会社が機能すれば、そこに会社共同体を生ずるし、また会社を機能させるには、それを共同体にしなければならない。

2012-06-13 04:56:41
山本七平bot @yamamoto7hei

28】従って新入社員の採用試験や入社式は、共同体加入の為の資格審査であり、また通過儀礼である。そして、地縁集団が新しい「第三の種族」になるように、新入社員もまた新たに「会社種族」にならねばならない。通過儀礼は、そのために必要なのである。

2012-06-13 05:26:30
山本七平bot @yamamoto7hei

29】そして、これは共同体への加入であるから、加入すれば追放されない限り、終生そこに留まるのも、また当然である。また、共同体への加入は雇用契約ではないから、いずれの場合であれ、終身雇用契約は存在しない。

2012-06-13 05:56:49
山本七平bot @yamamoto7hei

30】共同体に加入すると、次に共同体の一員として訓練があり、それが終わって初めて機能集団としての会社の役割が与えられる。会社は勿論機能集団なのだが、それでも日本の場合は、まず会社という共同体に加入し、それから機能集団の一員としての仕事のトレーニングをうけるという形になるのだ。

2012-06-13 06:26:41
山本七平bot @yamamoto7hei

31】さて、日本の会社には解雇はないと言われる。終身雇用は勿論解雇を前提としないから、ないのは当然とも言えるし、解雇は全て「不当解雇」とされて当然だとも言える。では、「正当解雇」は存在しないのであろうか。立派に存在する。

2012-06-13 06:56:41
山本七平bot @yamamoto7hei

32】機能集団としての会社は、その全員で共同体を構成するとは限らない。従って同じ会社の中で、同じように仕事をし、同じように機能しながら、共同体の一員である者と、そうでない者とがいても不思議ではない。

2012-06-13 07:26:34
山本七平bot @yamamoto7hei

33】大部分の会社には「正規の社員=会社種族」と、臨時雇い、即ち共同体の成員と認められていない者とがいる。後者の解雇は、いつでも「正当解雇」とされるのである。同一の会社内にいても、この会社種族と非種族は、まるで血縁社会における血縁と非血縁のように、峻別される。

2012-06-13 07:56:59
山本七平bot @yamamoto7hei

34】終身雇用や年功序列は、会社種族にだけ適用される共同体の原則だから、それ以外の者には適用されない。正規の新人社員は、血縁社会における新生児のように、会社種族となったとたんに、すべての基本的権利を認められる。

2012-06-13 08:28:11
山本七平bot @yamamoto7hei

35】従ってその日解雇されても、不当解雇だと裁判所に訴えて出れば勝訴するだけの権利を、社会から認められており、現にその例もある。だが、会社種族でない者は、まるで血縁社会における非血縁者のように、そこに何年いようと、生涯をそこで送ろうと、何の権利も認められない。

2012-06-13 08:56:58
山本七平bot @yamamoto7hei

36】昔、ある出版社に「常勤アルバイト」という制度があった。このアルバイトは社員と全く同じなのだが、十年勤めていても、一片の通告で解雇できた。それは不当解雇でなく、正当解雇なのである。そしてこの差別は当然とされていた。

2012-06-13 09:26:42
山本七平bot @yamamoto7hei

37】なぜならば、後者は確かに正当解雇だが、前者は血縁集団からの追放に等しく、いわば勘当であり、これはどの社会でも安直にできることではないからである。

2012-06-13 09:56:47
山本七平bot @yamamoto7hei

38】そして、この種の行き方への反対は、一に「全員を会社種族とせよ」という反対であっても、「会社種族を解体して全員を同一条件にせよ」ではなかった。即ち、労働組合の要求も、「機能集団=共同体」への完成へと向かえという事だったのである。

2012-06-13 10:26:44
山本七平bot @yamamoto7hei

39】そのようにして全員が会社種族になった会社も、はじめからその形であった会社もある。だが、それらの会社は、下請けという小共同体を傘下にもっている。下請け会社を別の共同体として、両者の間を取引という関係で結びながら、両者が同じような仕事をしているのだ。

2012-06-13 10:56:50
山本七平bot @yamamoto7hei

40】これは、とりもなおさず取引を断てば臨時雇いの解雇と同じ効果を生ずる。この際、両共同体の成員が連帯してこれに対抗し、平等に解雇されるといった事態には、絶対ならない。

2012-06-13 11:26:42
山本七平bot @yamamoto7hei

41】この場合は、いわば正規社員種族と臨時雇い種族という、二つの共同体が形成されているわけで、取引の停止により、臨時雇い種族のほうはその共同体が自動的に崩壊するわけである。

2012-06-13 11:57:00
山本七平bot @yamamoto7hei

42】従ってこの場合は、共同体の消滅であっても、共同体の構成員を解雇したわけではない。なぜこういった形になるのだろうか。それは、臨時雇いの解雇すなわち正当解雇は、その人間の人格にかかわる問題ではないが、地縁であれ血縁であれ、共同体からの追放はそうではないからである。

2012-06-13 12:27:30
山本七平bot @yamamoto7hei

43】後に詳しく述べるように、社会構造と精神構造は深く相対応しているから、追放は本人の人格を深く傷つけるだけではなく、その共同体が関連する社会のすべてから、人格的に抹殺される場合さえあるのだ。

2012-06-13 12:56:59
山本七平bot @yamamoto7hei

44】日本の社会は、正当、不当の二種類の解雇をはっきりと区別している。パートは、やめようがやめさせられようが、それは機能集団との関係の断絶にすぎず、共同体からの追放ではないから、人はそれを問題にしない。

2012-06-13 13:26:38
山本七平bot @yamamoto7hei

45】しかし「あいつは会社をクビになった。」という言葉は、その人間のある面、もしくは全ての面の人格的な否定をも意味している。従って、実質的に解雇であっても、それは希望退職、すなわち本人が希望し、その自由意志で自ら共同体を去った、としなければならない。

2012-06-13 13:56:48
山本七平bot @yamamoto7hei

46】また当然に解雇に価すると見られる事故を起こした場合にも、温情として解雇せず、辞表を提出させて、自由意志による退職という形をとるのである。

2012-06-13 14:26:48