かおるさとーさんの『氷菓』#9 解説

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かおるさとー @kaoru_sato

『氷菓』9話を観て気づいたことをいくつか。

2012-06-23 21:57:08
かおるさとー @kaoru_sato

今回は少し「ミステリ」の話に偏ると思います。

2012-06-23 21:57:55
かおるさとー @kaoru_sato

ミステリには「多重解決もの」というタイプの話があるのですけど、今回の『氷菓』はまさにそれです。もう少し言うなら、今回の話はアントニィ・バークリーの『毒入りチョコレート事件』のオマージュです。随所にそれを意識した部分があります。

2012-06-23 21:59:15
かおるさとー @kaoru_sato

簡単に説明しますと、多重解決ものとは「一つの謎に対して複数の推理や解決方法が提示される話」のことを言います。毒チョコはその先駆け的作品で、かつ最も有名な作品と言っていいでしょう。バークリーの代表作でもあります。おもしろいのでぜひぜひ。

2012-06-23 22:00:25
かおるさとー @kaoru_sato

『愚者のエンドロール』編は、その多重解決ものの構造を取り入れつつ、同時に“日常の謎”という枠組みの中で謎を構成し、さらに『ミステリー』というジャンルの定義、考え方、捉え方にも触れながら、主人公たちの人となりや心情の変化にもスポットを当てていくという複雑な作りになっています。

2012-06-23 22:01:38
かおるさとー @kaoru_sato

しかし原作通りにお話を進めていくと、最低でも5~6話は必要になってくると思うので、4話しか割かれていないアニメではどのように描かれるのか、とても気になってました。(公式サイトで確認できますが、『愚者』は8~11話の4話構成になっているみたいです)

2012-06-23 22:02:31
かおるさとー @kaoru_sato

先週は劇中作にほとんど触れずに雑感を述べましたけど、今回はもう少し触れていこうと思います。ただし、私はすでに真相を知っているので、ネタバレを避けるためにあまり踏み込まないようにします。それでももしかしたら……なので、原作未読の方は以降のつぶやきにお気をつけください。

2012-06-23 22:03:30
かおるさとー @kaoru_sato

それでは内容に触れていきます。まずは前回の続き。2年F組の探偵志願者3人と対面する古典部一同。撮影班・助監督の中城順哉、小道具班の羽場智博、広報班の沢木口美崎。一見して探偵役には見えない彼らが、今回の謎に対する探偵役を務めます。摩耶花の感想は辛辣ですね。わかる気はしますが。

2012-06-23 22:05:13
かおるさとー @kaoru_sato

チョコレートやらホームズやら酔っ払いやら議事録やらいろいろありましたけど、とりあえず3人がそれぞれ提示した3つの説を順に追っていきましょうか。

2012-06-23 22:06:11
かおるさとー @kaoru_sato

まずは中城さんの考え。彼の説はいたってシンプルで、「犯人は窓から出入りした」説。トリックが入る余地すらありません。ただ、夏草の推論はなかなかいい点を突いています。

2012-06-23 22:07:03
かおるさとー @kaoru_sato

というわけで、「犯人は窓から出入りした」説に、「本郷は夏草の成長を計算に入れておらず、映像と脚本との間で矛盾が生じた」という補足がつきました。これが中城案です。推理ものとしてはつまりません(というか推理じゃない)けど、現実的な手段ともいえます。

2012-06-23 22:08:09
かおるさとー @kaoru_sato

本郷さんが楢窪地区に下見に行ったのは、5月の終わりごろだそうです。……その時期って、ちょうど中間試験があったと思うのですけど、本郷さんはそっちは問題じゃなかったんでしょうか。真面目な方だそうですし、成績はよかったのかもしれませんけど、ちょっと気になります。

2012-06-23 22:08:56
かおるさとー @kaoru_sato

中城案は奉太郎によって否定されます。物理的には可能でも、窓から出入りするというのは人目につきすぎるために、心理的には難しいというのが理由です。足音にも気をつけなければなりませんし、たしかに殺人を行うにはリスキーな手段ですね。昼間ですし。

2012-06-23 22:10:10
かおるさとー @kaoru_sato

続いて羽場さんの考え。羽場さんは最初「ミステリー」ではなく「ミステリ」と言いました。こ、この人ミスオタだー! 「何が違うの?」と思われるかもしれませんが、微妙に違ったりします(違いますと断言はしません)。その言い回しにこだわるのがいかにもミスオタらしいです(偏見)。

2012-06-23 22:11:18
かおるさとー @kaoru_sato

ちなみに私も一応区別して使っています。>ミステリーとミステリ ミスオタではありませんが(そもそも私、昔はミステリ苦手でした)。

2012-06-23 22:13:13
かおるさとー @kaoru_sato

羽場案は中城案と比べるとちゃんと推理してますね。「ザイルを使って窓から侵入した」という説。たしかに上から侵入すれば、地面に足跡はつきません。でも、あまりおもしろくはない方法ですね。奇抜さに欠けるといいますか。

2012-06-23 22:14:05
かおるさとー @kaoru_sato

(奉太郎が羽場案を否定する際のイメージ映像はある意味おもしろかったですけど)

2012-06-23 22:15:11
かおるさとー @kaoru_sato

この説も奉太郎によって否定されます。確認したところ、羽場さんはまだ映像を観ていないとのこと。窓の建て付けが悪くて、侵入するのが難しいということを、彼は知らなかったのです。理論はよくても実践はだめという話。考え方は悪くなかったのですけどね。

2012-06-23 22:16:11
かおるさとー @kaoru_sato

最後に沢木口さんの考え。これは見事です。「犯人は正体不明の怪人(もしくは怨霊?)で、超自然の力によって殺した」説。密室の謎も、人知を超えた怪人の力の前には何の意味も持ちません。「別にいいじゃない、鍵くらい」。至言です。

2012-06-23 22:18:12
かおるさとー @kaoru_sato

私はもうこれでいいんじゃないかと思うんですけど、奉太郎は血糊の少なさを指摘。たしかに大量殺人を展開させるには、血は欠かせない要素ですからね。その指示がなかったのはおかしいです。

2012-06-23 22:18:48
かおるさとー @kaoru_sato

(でもこれは「本郷さんの脚本展開ではありえない」というだけで、お話としてはアリだと思います。それに、この案なら腕が切断されていたことにも納得がいきます。派手に殺して他の人間を恐怖に陥れるのが狙いです。普通の人間が行うには大変な作業でも、怪人なら余裕です。どうですか。ダメですか)

2012-06-23 22:20:44
かおるさとー @kaoru_sato

というわけで、3つの案が提示されましたが、すべて却下されました。古典部が誇る名探偵・折木奉太郎の眼はごまかせなかった模様。しかし3人は、重要と思われるヒントをそれぞれ示してくれました。8話の時点では不十分でしたが、今回の話で手がかりは全てそろいました。

2012-06-23 22:21:33
かおるさとー @kaoru_sato

どの手がかりが重要かは言いません。現時点で真相にたどり着くことは可能とだけ言っておきます。ただ……そうですね、「予備知識」の有無は求められるでしょうね。そして、先週も言いましたが、「誰が」だけではなく「なぜ」にも注目する必要があります。

2012-06-23 22:27:34
かおるさとー @kaoru_sato

ところで、今回出てきた3人は、「ミステリー」というものに対してそれぞれでまったく違った捉え方をしていましたね。これはなかなか興味深いものです。

2012-06-23 22:29:49
かおるさとー @kaoru_sato

まず中城さんは、ドラマ重視の捉え方。トリックなどは二の次で、派手な殺人シーンや犯人との対決シーンがしっかり決まっていれば盛り上がると考えているようです。ですから、ミステリーというよりは「サスペンス」を重視しているのでしょうね。火曜サスペンス的な見方です。

2012-06-23 22:30:59