牧眞司の文学あれこれ2

牧眞司の文学あれこれ http://togetter.com/li/290388 あまりに前のまとめが長くなりすぎたので、続きを作りました。
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牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

「幻の穀物危機」は、新潮文庫の短篇集『家鳴り』に収録されています。同書には、ロボットものの恋愛SFの傑作「操作手」も収録。

2012-08-24 11:59:30
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

バチガルピもイヤなリアル書いてるね。『シップブレイカー』は物語に甘味がきいているので、なんか宮崎駿ぽくウットリ読んじゃったりしそうだけど。

2012-08-24 12:08:55
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

フリオ・リャマサーレス『無声映画のシーン』(ヴィレッジブックス)読了。これも記憶についての小説。文学にとって最大のテーマは「記憶」であって(「時間」と言い換えてもよい)、プルーストをはじめ、さまざまなアプローチがされてきた。 (続く

2012-08-25 11:26:36
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

本書では、語り手が幼年期~青年期をすごした鉱山町のあれこれが語られる。それはノスタルジーでも客観的過去でもなく、いったん忘れさられ、写真のなかにしかない記憶である。つながりのある過去ではなく、古い写真を触媒として析出する情景や断想。 (続く

2012-08-25 11:27:02
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

それは事実とはかぎらず、誤った思いこみ、あるいは空想かもしれない。しかし、そんな区別になんの意味があるのか?

2012-08-25 11:27:13
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

『螺法四千年記』が良かったので、おなじ日和聡子の『おのごろじま』(幻戯書房)を読んでみた。これも面白い。いざなみといざなぎのまぐわいに開幕する神話というか寓話というかなのだが、べつに、ひとつの国の創生とか時のはじまりと大それたことではなく、妙な挿話がくねくね連なっていく。 (続く

2012-08-26 17:56:24
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

登場人物は、いざなみといざなぎのほか、旅館《わに屋》の主人の鮫(わに)だったり、からす貝の舟だったり、ちょっとへろへろの鳩だったり、自分で浜辺に埋まってしまった天女だったり、脚に椎茸を生やした男だったり、昔蜻蛉だったり、流しの笹舟の船頭をしている蟷螂だったり。 (続く

2012-08-26 17:56:51
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

そうした者どもの挿話が、しりとりのように(ちょっとシュニッツラー「輪舞」みたいだが、あれほど構成的ではない)連鎖していく。最終的には、いざなみといざなぎの話に戻っていくのだけど、大きなカタルシスはない。円環と言えば円環なのだが、むしろ無時間のたゆたいとでも言おうか。 (続く

2012-08-26 17:58:17
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

『螺法四千年記』もそうだったけど、『おのごろじま』の楽しさは登場人物(動物)の動きが醸す風変わりなユーモアと、独自のオマノトペ(類型でもなく奇をてらっているのでもなく絶妙)を交えた文章の洒脱さである。 (続く

2012-08-26 17:58:57
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

さらに、台詞も面白い。古語なのか方言なのか省略形なのかよくわからないが、おそろしくテンポが良く、地の文の調子とうまく合っている。それを追うだけでも楽しくてしかたない。

2012-08-26 17:59:12
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

日和聡子をもう一冊。『火の旅』(新潮社)は、『螺法四千年記』『おのごろじま』と異なり、現代が舞台で、いちおうリアリズムととれる作品。主人公の光子は、梅崎春生の小説「幻化」をなぞるようにして九州を旅する。これもまた記憶の小説なのだ。 (続く

2012-08-26 18:13:16
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

作中にこんなくだりがある。〔「幻化」は、いつでも光子の前にあった。そして常に光子の先にあった。〈前〉というのも、〈先〉というのも、〈過去〉のことであって、また、〈未来〉のことでもあった。(略)そうして、光子が自身だけでは決して辿り着けないところまで連れて行く。〕 (続く

2012-08-26 18:13:43
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

すなわち、ここでは惰性化した日常時間の流れ(=物理時間の方向)ではなく、記憶の機序――というか、いっそ「本来の時間」と言ってしまいたいのだけど――があらわになっている。そういったことを理屈で語るのはちょっと大変なのだが、小説ならば実感として表現できる。

2012-08-26 18:14:21
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

調子に乗って日和聡子をもう一冊。掌篇集『瓦経』(岩波書店)は、金井田英津子の挿絵がふんだんに入った小さな、姿の良い本。 (続く

2012-08-27 17:17:14
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

一篇目の「摺墨」は、〔摺墨という名馬の名を付けられた馬となって、私は日の暮れはじめた薄青い山道を歩いていた。〕という文章ではじまる。内田百閒の『冥途』みたいな雰囲気の幻想譚。 (続く

2012-08-27 17:17:50
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

巻末の「瓦経」も不思議な物語。語り手は、痩せた男(脈氏)の袖にくるまって、境内の縁日を眺め歩く。脈氏が「河童、二枚」と言うと、屋台の老婆が、干物を七輪であぶってくれる。こうばしいような、腥の香り。 (続く

2012-08-27 17:24:10
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

そのほかの収録作はそこまでファンタスティックな要素はないが、いずれも夢のなかで見た風景のようで面白い。

2012-08-27 17:27:56
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

ショーン・タン『鳥の王さま』(河出書房新社)をめでてすごす宵。スケッチブックということだけど、鉛筆やボールペンで描いた線画だけでなく、アクリルや油での彩色もあれば、アニメーションのためのカラースクリプト、はては創作文字なんてのまであって、楽しいたのしい。

2012-08-27 21:12:59
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

『鳥の王さま』のなかには、のちに絵本やアニメへと発展していったアイデアや習作もあるし、未完のもの、未発表のものも含まれている。また、動物園や博物館で写生したものもある。まるでこの一冊のなかに、さまざまなショーン・タン世界への扉があるみたい。ファンにとっては嬉しい。贅沢な気持ち。

2012-08-27 21:19:54
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

ショーン・タンのまるっとしたクリーチャーがぼくは好きなのだが、それらの霊感源の一端が、メキシコシティの国立人類学博物館や、ニューヨークのメトロポリタン美術館に収蔵されている土俗のオブジェにあることがわかって、興味深かった。きっとショーン・タンは埴輪とか土偶とかも好きだろうな。

2012-08-27 21:49:17
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

小川一水『天冥の標 Ⅵ 宿怨PART 2』(ハヤカワ文庫JA)読了。うわあまだ続くんですか。PART 3は来年ですか。できれば、何分冊になるかあらかじめ告知してほしいです。物語はだいぶ忘れているけど、この巻で言えば、ファースト・コンタクトのありかたがずいぶん面白い。 (続く

2012-08-29 08:52:41
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

また、これは以前の巻を読んだときから思っていることだけど、冥王斑という伝染病がSFアイデアとしても象徴(文化的な隠喩)としても、物語を強く牽引している。

2012-08-29 08:52:55
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

ウラジーミル・ソローキン『青い脂』(河出書房新社)読了。だーっ、ムチャするなあ、ソローキン。いや、無茶を通りこして無体。なんて御無体な、そんなことを文学に。 (続く

2012-08-29 21:11:21
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

かんたんに言えば、これはパラレルワールドの小説だ。といっても、「もしあのとき○○だったら」式の歴史改編や、「□□の代わりに△△が」といった要素を組み替えた別世界ではない。そういう機械論的に発生するパラレルワールドは、いままで腐るほど量産されている。 (続く

2012-08-29 21:11:55
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