アニメ脚本家・面出明美氏の「今日のプチ講座」まとめ

面出明美@仕事募集中 @omodeakemi

久しぶりに今日のプチ講座。説明台詞。物語の世界観や設定を説明するのに、アニメの場合は登場人物の台詞に頼るところが大きいが、それをいかに説明くさくならないように自然な台詞にするかが重要。そして、台詞で説明しただけで満足してしまって、エピソードを積み重ねるのを忘れないように。

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例えば、ここは魔法が使える世界ですよと提示したのに、魔法使って何かをするシーンを描かない、とか。この２人は憎み合っていますよ、と説明したのに、顔を合わせたり話したり（時には罵りあうとか）のシーンがなく、またどうして憎み合っているのかという根本の説明をしていない、とか。

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またキャラの感情を台詞で言ってしまうのも注意が必要。前にも話したが「楽しい」「嬉しい」「腹が立つ」などの感情をそのままストレートに台詞にするのは、なるべく避けること。ここで、この感情をこのキャラならなんと言うだろうと、キャラの個性に合わせた台詞まわしを考える。

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物語とは、そこで生きている人間達が何を考えてどう動いたか、それが巡り巡って世界や歴史を動かしていくのを見せるものだと思うのだ。なので、設定だけで物語は動かない。キャラを動かさないと！

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今日のプチ講座。アニメ脚本は映像作品になる前提なので、映像表現を考えて書く。そこで意外に忘れられがちなのが背景。キャラの生い立ちとかの背景では なく、そのままの意味のキャラの後ろに写っている景色のこと。これをちゃんと考えていないと、画面がずっと同じ印象になってしまい退屈な映像に。

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１話まるごと夜のシーンのみとか、室内のみとか、森の中で代わり映えしないとか。話の都合上、どうしようもないことはあるけれど、出来るだけそういうシーンのみにならないように話を構成する。背景も大切な役割があるのだ。

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久しぶりに今日のプチ講座。普通に呟いているのも講座っぽいですけどｗ脚本の中身はト書き（とがき、と読む）と呼ばれる状況描写と台詞で成り立っているわけですが、台詞を書く時はキャラの名前「○○だよね」と書きます。このキャラ名部分、フルネームではなく名字か下の名前を書きます。

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レギュラーキャラだと下の名前のことが多く、打ち合わせでも「○○のこのシーンだけど」という風に下の名前呼び捨てのことが多い。逆にゲストやあまり出ないキャラだと名字表記が多いです。この名前も、２文字から５文字以内が理想。あまり長いと、それだけでページ数を食ってしまうからです。

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あまり長い名前だと、略称やあだ名で表記することもあります。あ、リボーンを書いていた時は綱吉はツナと表記していました。遊戯王の時は、闇遊戯と表遊戯、と表記していましたから、その作品毎に決まりがあることがあります。シリーズで脚本家が複数いる場合は、キャラ名表記は最初に統一します。

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久しぶりに今日のプチ講座。物語を書きたいけれど、どうやって書き出したらいいのかわからない人へ。私の書き方ですが。まず話の筋を順番に箇条書き程度に簡単に書いて並べます。伏線や設定の説明など必ず入れることを書いたら、次はそれに自分の書きたいシーンや台詞を書き足します。

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話の順序を決めたら、次はキャラの個性や演出など、物語を盛り上げるためのものを考えていきます。いきなり書き始めると、途中で煮詰まるので、ここからここまでに何を入れる、と決めておくと、ゴールが見えているので書きやすいです。最終的なゴールに向けて、小さなゴールをいくつももうけておく。

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小説だと長丁場になるので、最終的なゴールまでの距離がありすぎて息切れを起こしやすくなります。なので、そういう小さなゴールをもうけておくわけです。脚本の場合は逆で、必要なことを先に決めておかないと、限られた分数で終わらなくなるので、何を入れて何を削るのかを考えます。

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よし、今日のプチ講座にしよう。アニメ脚本とドラマＣＤ脚本と小説の書き方の違いの見本。部屋の中に男が２人いるシーンで、片方が別場所にいるキャラに会いにいってやれよ、と言うシーン。空白は改行です。

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アニメ脚本の場合その１。□とある部屋　アキラとカズヤが向かい合って座っている。　カズヤ「いいのかよ、このままで」　アキラ「……」　カズヤ「（溜息をついて）いつまでも意地張ってる場合じゃないだろ。行けよ」　アキラ「カズヤ……」

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その２。カズヤ、苦笑する。　アキラ「……すまない」　アキラ、カズヤに頭を下げ、部屋から出て行く。　カズヤ、ずるずるとソファの背もたれをずり落ちつつ、手で顔を覆う。　カズヤ「ホント、俺ってお人好しすぎるだろ」

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ドラマＣＤ脚本の場合その１。□とある部屋　遠くに車の騒音が聞こえる、古いビルの一室。　向かい合うアキラとカズヤ。　カズヤ「アキラ、本当にいいのかよ、このままで。お前は、それで後悔しないっていうのか？」　アキラ「お前には関係ないことだろ。どうして、そこまで……」　

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その２。カズヤ「（被せて）仕方ないだろ！　あいつが待ってるのは、俺じゃない。お前なんだからさ……」　アキラ「カズヤ……お前、あいつのこと……」　カズヤ「（苦笑して）言うなよ、それ以上は」　アキラ、椅子から立ち上がる。

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その３。アキラ「すまない」　ゆっくりと歩いてドアを開け出て行くアキラ。　遠ざかる靴音。　カズヤ「ホント、俺って世界一のお人好しだろ。あーあ……」　声を殺して泣くカズヤ。

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小説の場合その１。　その古いビルには、今、二人の男が向かい合って座っている。どちらも、重苦しい痛みを、その胸の内に抱いていた。彼らは、幼い頃からの親友で……そして、ライバルでもあった。　だが、こんなことになるとは、この日まで思ってもみなかったのだ。

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その２．小一時間、黙ったまま向かい合っていた均衡を破ったのは、カズヤの方だった。　「アキラ、いい加減意地を張るのはやめておけよ？」　「何が……」　意地など張っていない、と言いかけたアキラの目をカズヤはまっすぐに見つめていた。　「あいつが待っているのは、お前だ」　「……っ」

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その３。言い切られ、アキラは言葉に窮した。この親友は、いつもにこやかだが、肝心な時には冷静で、そして容赦がなかった。　「ほら、行けよ」　いつもの笑顔に戻ったカズヤは、ドアを指し示す。それが、アキラの背中を押す合図だった。　「すまない……」　それ以上は何も言えない。