zero-one

広田修(@osamuhirota)がtwitterで呟いたテキトーなレビュー集。文学・音楽・映画・美術等。保存用です。
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alchemist @allplusnothing

川名大『現代俳句』少しずつ読んでいる。丁寧で急所を突いた批評、私でも俳句が分かったような気持ちになる。面白いのは、散見される「俳句的」という形容詞。これは「文学的」「詩的」などと同じように多義的な言葉で、業界内でしか通じない。「俳句的」の意味が解るときは俳句が分かったときだと思う

2013-10-16 16:02:35
alchemist @allplusnothing

現代詩文庫『生野幸吉詩集』(思潮社)読了。この時代からすでに、言語の美的感覚に優れて自覚的だった詩人がいた。だが、感覚的に洗練されていると同時に、それは哲学的で微細な探究意識でもあり、それゆえそこに出てくる「ひかり」「風」「海」は何かしら世界の元素のような風合いを備えている。

2013-10-11 08:16:38
alchemist @allplusnothing

現代詩文庫『関根弘詩集』(思潮社)読了。心の動きが真率に表れていて、読みながら直接的に作者の内面と接続されるかのような印象。幻想を描いている作品も多いが、心の動きを幻想に仮託しているというよりは、幻想によって作者自身またもや動揺してしまってどうにもならない、でも抵抗するという感じ

2013-10-10 11:08:23
alchemist @allplusnothing

詩は概念コミュニケーションではなくイメージコミュニケーションである。イメージを生み出すにあたって、作者は諸感覚を統合する感覚によって保持されたイメージの連合から、暗黙的な知性によって、詩行を包括的に想像する。このイメージの連合と包括的創発は言葉では語り得ない。これが詩の神秘である

2013-10-09 06:27:25
alchemist @allplusnothing

批評もまた自己の表出であることを免れない。対象から読み取れることは、自己がすでに学び取ってしまっている理論や構造、自己と相似する気質や傾向性であることが多くて、結局対象を語ることで自己を語ることに終始することがままある。対象という鏡に映された自己。自己を語るという意味で詩と同じ。

2013-10-04 06:31:55
alchemist @allplusnothing

詩と批評は社会的機能においてもまた異なっている。批評は既存の共同体を活性化すると同時に、外に向けて作品を開き新たな共同体の形成に役に立つ。それに対して詩は既存の共同体に依存するのが精いっぱいで、それすらできず個人の無力な自己表出で終わり、社会に対して自らを開く力に欠けている。

2013-10-04 06:29:28
alchemist @allplusnothing

詩と批評の共通点は、どちらも言語と結びついた感性と論理によって支配されていること。そして、詩が自らの感情を語るのに対して批評は他者の感情を読み取るが、そこでは共感の原理によって感情は融通されている。自己について語るにしても他者について語るにしても、感性・論理・感情は共有されている

2013-10-04 05:29:06
alchemist @allplusnothing

詩と批評の大きな違いは、詩が自己愛の原理で貫かれている一方、批評は他者愛の原理で貫かれていること。詩は対象も自己の中に取り込み自己に没入するが、批評は対象との距離を忘れない。そして、詩は発端において受動的で自動的であるのに対して、批評は絶え間ない能動的な働きかけであること。

2013-10-04 05:23:57
alchemist @allplusnothing

詩誌『雲雀料理』11号拝読。全体的に無駄がなくシンプルかつ過不足ない言葉たちがならぶ。変に気負っていない、かといって手を抜いているわけでもない。確かに積み上げられてきたささやかな技術が、言葉を詩に変える瞬間を適切につかんでいる印象でした。

2013-09-30 12:35:16
alchemist @allplusnothing

現代詩文庫『続・新川和江詩集』(思潮社)読了。意識の水位がわずかに高まったところで受け止められ結び付けられるものたちを、それらに対する深い愛情でもって飾らずに描き出している。観念や抽象による飛翔ではなく、着地した種子が発芽するような生長こそが彼女の詩作だ。大岡信の解説がよかった。

2013-09-25 10:59:38
alchemist @allplusnothing

詩誌「Down Beat」No.3拝読。昔の自分だったら「退屈」だと思っていただろう余裕や間が、今では却って滋味深いものとして感じられて、自分も変わったなあと思った。人生の堆積と共に生まれてくる詩の厚みに惹かれるようになったので、私はもはや若手ではないのかもな笑。

2013-09-16 08:26:56
alchemist @allplusnothing

このように、観念的なもの、理想的なものを本当に存在するものとして扱うことは、詩人の想像力にとってはまことに都合がいい。観念的なものの在り方について奔放に想像力を膨らませた上で、人間とつなげていくわけであり、単に人間を描くよりももっと奔放な人間描写ができるわけで。

2013-09-15 10:34:18
alchemist @allplusnothing

シェリー「理想美を讃える歌」。人生の一時期に訪れる独特の状態を理想美が人間に宿った状態として描いている。青春や幸福という安易な言葉ではなく、理想美という観念的実体を精緻に描写したところで、それが宿った状態という繊細極まりない人生描写をする。観念的実体は当時の英国には確かに存在した

2013-09-15 10:31:30
alchemist @allplusnothing

岩波文庫『ワーズワース詩集』。自然が道具・場所・宇宙・像として、人間や人生に常に相伴っている。自然は人間がそれを用いるものであると同時に、人間がそこを通過し、また人間を雄大に包み込み、また人間を譬える比喩となる。人間色と自然色の度合いは様々だが、非常な収穫を得た。

2013-09-14 16:01:43
alchemist @allplusnothing

現代詩文庫『多田智満子詩集』(思潮社)読了。女のロマンとしての異国趣味を匂わせながらも、地にある知的体力を十分に生かした端正な詩を書いている。西脇の影響を感じるが、もっと幻想を必然的なものとして自由に展開しているように感じる。節度があり自作への眼差しを強く感じさせる作品群だった。

2013-09-12 08:08:31
alchemist @allplusnothing

現代詩文庫『中桐雅夫詩集』(思潮社)読了。生きることや人間について、想像力や機知を交えながら切実に書いている。愛国主義を嫌い、国家という紐帯とは違った人と人との結びつきを大事にしていたようで、政治色のある詩でも、特定の政治的立場をとるよりは主題を深めることを重視していたようだ。

2013-09-12 07:09:25
alchemist @allplusnothing

上田敏『海潮音』。当時の新体詩の浅薄さを憂えて、海外詩の、感ずるところの深さや人生に対する思想の篤さを紹介するべく編まれた翻訳詩集。真に感じたことを誠実に記すことの大事さや、人生の当り前の問題を踏み込んで書いていくことの大事さは、今主張しても決して時代錯誤ではない。

2013-09-11 13:31:21
alchemist @allplusnothing

中桐雅夫「詩人と探偵」。中桐さんの詩人アイデンティティは何の思い上がりもなく真摯で好きだ。自分の詩が感動を生まないことを嘆いていたりして可愛らしい。この作では、詩人がシビアな状況でも探偵のように真相を追求する者として描かれていて、何か自分の抱いている詩のイメージに通ずるものがある

2013-09-09 13:14:47
alchemist @allplusnothing

小手先の技術を用いなくても、物事を丹念に描写するだけで美しい詩が出来上がる。だが、「丹念に描写」することがそもそも難しい。それは物事をかなり内面的に深く受容していないと可能にならないし、物事に対して抱いた感動やそれを広げる想像力がないといけない。そういうものを書きたい。

2013-09-05 05:38:01
alchemist @allplusnothing

私の現代詩ライフは、贈られてきた言葉たちに批評という応答を返すという、贈与と感謝という単純な構造だけで十分充足している。もちろん、それは単純な贈与ではないし、単純な感謝ではない。だが、この美しい応答にすべてを還元してしまう、その思考もまた美しいとひっそり思っている。

2013-09-02 18:18:55
alchemist @allplusnothing

峯澤典子『ひかりの途上で』。書かれたものよりも、書かれなかったもの、透けて見えるものへと思いを至らせる詩集だ。何かが大きく引き算されて、残ったものを足し算のように書いている。その引き算にも足し算にも峯澤さんの人柄や成熟がじわじわと見て取れて、30過ぎて詩を書く意味が肯定的に見えた

2013-09-01 17:29:39
alchemist @allplusnothing

ワーズワースいいなあ。幻想を描くことから人生を描くことへと着地したのち、更なる着地点があるとすればそれは自然を描くことかもしれないな、とか。もう人間とかいらないのではないかと。木々が生い茂り太陽が照りつけ風が吹いていればそれですべてではないかと。

2013-08-31 12:03:40
alchemist @allplusnothing

まあ私は詩を狭く規定しているのに過ぎないのであってだから「詩の死」「詩人の死」というのが切実な問題になってくる。かつて自分を駆動していたものが消滅し已むに已まれず書いていた内容が失効したときジャンルやアイデンティティもまた失効する。その時の喪失感が新たな主題になり組み立て直す

2013-08-28 06:16:34
alchemist @allplusnothing

詩なんて八方塞の絶望に苛まされているときにノートに書き殴った怨嗟や呪詛が原型だと思っているので、そういうのがない人がなぜ詩を書いているのか分からない。憎しみや外傷が長いこと私が詩を書く原動力でした。だから、そういうやむにやまれなさがなくてなぜ詩を書けるのか、素朴に疑問に思う。

2013-08-28 06:00:28
alchemist @allplusnothing

かつては「詩人」という自負やら自己神秘化に反発を持っていたが、最近は自分はもう「詩人」なんて素晴らしい人種ではなくなってしまったね、悲しい、という気持ちが強い。生のままの革命意識や敵意に満ちた批判精神、若々しい情熱や感受性が曇ってしまった今の私には「詩人」なんて名乗れるはずがない

2013-08-27 07:35:18
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