ハイルブローナー『世俗の思想家たち』まとめ

ロバート・L・ハイルブローナー『入門経済思想史 世俗の思想家たち』まとめ。
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H.Takano @midwhite

ホブソンはイギリスの批評家ラスキンの著作から、非人格的な科学ではなく人間性を追求する学問としての経済学の考え方を学んだ。というのもラスキンは貨幣的価値を重視するブルジョアのヴィクトリア的規範を嘲って「富とは生命なり」と吹聴していた。(ハイルブローナー『世俗の思想家たち』2001)

2012-07-04 23:32:29
H.Takano @midwhite

またホブソンは思想家兼実業家ムメリーからも学んだ。彼は18世紀初めに商業上の定期的な不信の原因について、マルサスに戻って超過貯蓄にあると推測していた。即ちムメリーは、経済が全ての商品を消費する購買力をつける可能性を否定したのである。(ハイルブローナー『世俗の思想家たち』2001)

2012-07-04 23:38:40
H.Takano @midwhite

ホブソンはアフリカを冒険して観察したことをもとに、1902年に『帝国主義論』を著した。マルクスは資本主義は自らを破壊すると予言したが、ホブソンは資本主義が世界を破壊すると予言し、帝国主義はそのジレンマを逃れるための冷酷な趨勢と見た。(ハイルブローナー『世俗の思想家たち』2001)

2012-07-04 23:51:57
H.Takano @midwhite

ホブソンの『帝国主義論』は、資本主義が存続するための帝国主義が外国を商業的に征服することを必然的に伴い、それゆえに絶えざる戦争の危険を不可避的に伴う趨勢であることを暴露した。資本主義に対するこれ以上に深遠な道徳的告発はかつてない。(ハイルブローナー『世俗の思想家たち』2001)

2012-07-04 23:55:28
H.Takano @midwhite

ホブソンは、所得の不平等から金持ちも貧乏人も十分な消費ができなくなるという驚異的な帰結を導いた。市場の受給を一致させるためには商品が全て消費されねばならないが、低所得者は必需品しか買えず、高所得者は物理的に全所得を使い果たし得ない。(ハイルブローナー『世俗の思想家たち』2001)

2012-07-05 00:06:42
H.Takano @midwhite

所得が100万ドルの人は、1,000ドルの人が費やす1,000倍もの価値を消費せねばらないが、そこまで商品を消費する物理的能力が存在しない。よって自然に貯蓄を強いられるが、その貯蓄の分だけ「生産されたのに購入されない財」が発生する。(ハイルブローナー『世俗の思想家たち』2001)

2012-07-05 00:10:08
H.Takano @midwhite

その貯蓄を消費に回すための古典的な回答は、それを工場や生産に投資することだった。しかしホブソンは、もし既に一般大衆の所得が低すぎる故に市場の商品が全て購入され得ない状況である場合、どうして飽和した市場にさらに投資するのかと問うた。(ハイルブローナー『世俗の思想家たち』2001)

2012-07-05 00:14:50
H.Takano @midwhite

ホブソンによるその答えは整然としている。海外に投資すれば良いのだ。それが帝国主義の由来である。彼によれば帝国主義とは、国内で使いきれない商品や資本といった余剰な富のフローのルートを海外に拓く、産業の偉大な管理者たちの努力なのである。(ハイルブローナー『世俗の思想家たち』2001)

2012-07-05 00:18:43
H.Takano @midwhite

海外に市場を求める国は、イギリス一国だけではない。各国が、占有し得る最も豊饒で最も有利な市場を自国の投資家のために囲い込もうとして、世界分割競争としての戦争を引き起こす。資本主義の強欲なプロセスは、世界中に流血の惨事を帰結する。(ハイルブローナー『世俗の思想家たち』2001)

2012-07-05 00:22:43
H.Takano @midwhite

マーシャルによれば、「需要と供給のどちらが単独で価格を規定するのか」とは愚問である。所与の市場における短期的な取引では「効用/需要」が、算出規模と生産パターンが変化する長期的な取引では「費用/供給」が積極的に価格を決定する。(ハイルブローナー『世俗の思想家たち』2001)

2012-07-05 01:00:17
H.Takano @midwhite

ヴェブレンの経済学は、世の中の動きを微分計算によって正当化することでも、事態がうまく収拾する理由を説明することでもなく、そもそも現状が生まれた理由を探ることだった。従って彼は、敬愛の構想ではなく企業制度の形成から研究に着手した。(ハイルブローナー『世俗の思想家たち』2001)

2012-07-05 18:07:06
H.Takano @midwhite

ヴェブレンは著書『有閑階級の理論』で、有閑階級が生まれる社会を経済人が築く経済的意味は何か、と問うた。これに古典派の経済学者なら常識的に、労働を最小限に済ますべく自らの財産を利用したと答えただろうが、彼にとってその答は無意味だった。(ハイルブローナー『世俗の思想家たち』2001)

2012-07-05 19:09:06
H.Takano @midwhite

ヴェブレンは社会を束ねる力が合理的な私利追求の相互作用であるとは考えず、また閑暇が労働よりも本質的に好ましいという前提に納得できなかった。彼は世界に有閑階級を持たない民族が多く存在し、そこでは閑暇より労働が評価される事実を指摘した。(ハイルブローナー『世俗の思想家たち』2001)

2012-07-05 19:14:50
H.Takano @midwhite

一方で世界には、何ら生産的なサービスを提供することなく有産階級から富を掠奪する閑暇階級が有能な強者として称賛される民族も存在した。それは例えば封建制度による将軍統治下の日本のように、非生産的な階級を養えるほどに豊かな社会だったのだ。(ハイルブローナー『世俗の思想家たち』2001)

2012-07-05 19:47:04
H.Takano @midwhite

その社会では有産階級からの略奪が称賛され、逆に労働に卑しさが見出された。ヴェブレンによれば、その価値観の延長線上にあるのが近代ヨーロッパである。その証拠に人々は見栄を貼り、大恐慌下で「必要な」贅沢品の前に食糧や衣料を切り詰めていた。(ハイルブローナー『世俗の思想家たち』2001)

2012-07-05 19:52:25
H.Takano @midwhite

そしてヴェブレンはそれを根拠に、この社会においてマルクスの言う通りの革命が実現せず、社会が未だ統合されている理由を見出した。即ち、労働者階級は資本家階級を打ち倒すのではなく、むしろその階段を自分も登ろうとしているのである、と。(ハイルブローナー『世俗の思想家たち』2001)

2012-07-05 19:57:28
H.Takano @midwhite

またヴェブレンは著書『営利企業の理論』において、資本家を経済の推進力と見る従来の経済学者たちの考えを否定し、むしろこの制度の破壊者であると主張した。彼によれば、社会の支配者は機械であり、その規格化が社会全体を生産の為の機械に変えた。(ハイルブローナー『世俗の思想家たち』2001)

2012-07-05 20:08:41
H.Takano @midwhite

その社会的機械の働きの中には、富の蓄積といった機能は存在しない。そのため、それを志向する資本家たちは、社会的機械の規則的な流れを妨げることで財の価値を変動させ、その混乱を利用して儲けることに役割を見出した、とヴェブレンは主張する。(ハイルブローナー『世俗の思想家たち』2001)

2012-07-05 20:18:33