内藤朝雄さんの主張に関する考察

いじめ問題の論説での第一人者である内藤朝雄さんの言葉を引用してそこからいろいろなことを考えてみた。
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木下秀明 @khideaki

内藤①内藤朝雄さんのいじめに関する知見の深さと広さは群を抜いている。しかし学校現場ではその成果が全く生かされていない。それがあまりに革命的な見方だからだ。内藤さんの『<いじめ学>の時代』から印象的な言葉を抜き出して考察してみようと思う。その知見が如何に現実を正しく捉えているかを。

2012-07-14 09:46:58
木下秀明 @khideaki

内藤②(いじめ対策に対して)「教育行政のエライ人たちが述べるのも「もっと道徳教育に力を入れて、他人への思いやりの心を育てます」といった類の、発言する本人すら信じているのかどうか怪しい、実体のない言葉に過ぎませんでした。」心を語る言葉がなぜ実体のない言葉なのか?言葉だけだからである

2012-07-14 09:55:20
木下秀明 @khideaki

内藤③野田首相が「耳を傾ける」と言いながら、ただ聞くだけで何もしなければ、それは実体のない言葉に過ぎない。実効性がなければ実体はない。心というのは言葉で偽れるので、行動が伴わなければいくら言葉で立派なことを言っても何の解決にもならない。それがここ20年ほどのいじめ問題ではないか。

2012-07-14 09:58:01
木下秀明 @khideaki

内藤④現実の問題は心がけで克服できるものは少ない。それは深刻な問題ではないのだ。深刻な問題は、心がけではなくシステムという構造そのものを改革しなければ解決はない。内藤さんの提言が長い間顧みられなかったことが、問題の深刻化につながっているのではないか。学校は根本から改革されるべき。

2012-07-14 10:00:00
木下秀明 @khideaki

内藤⑤いじめ調査に関する次の知見は見事なものだ。「そもそも、いじめられている人に向かって「あなたはいじめられていますか?」と尋ねても、はっきり「YES」と答えてくれるなどと言うのは期待しにくいことです。それに加えてこの調査の場合、調査する役目を務めるのが、結果次第で利害が…(続く

2012-07-14 10:07:18
木下秀明 @khideaki

内藤⑥「…利害が大きく左右される教師、学校です。途中で何の手も加わることなく調査結果が得られるなどと、最初から考えるべきではないでしょう。全国規模で調査するのなら学校から独立した第三者機関が無作為抽出法で実施するべきです。かつ質問事項にしても、「あなたは複数のクラスメイトから…

2012-07-14 10:09:27
木下秀明 @khideaki

内藤⑦「…から殴られたことがありますか?」「パンを買いに行くよう命令されたことがありますか?」と言った具合に、具体的に設定する必要があります。学校の頭を飛び越えた、統計的に意味のある大規模調査が必要なのです。」ステイクホルダーとしての教師・学校の問題が正しく指摘されている。

2012-07-14 10:11:48
木下秀明 @khideaki

内藤⑧今回の大津市でのいじめ問題は調査の隠蔽が問題視されているが、その前にそもそもステイクホルダーとしての教育関係者が調査することの問題点を正しく指摘している。隠蔽された調査がすべて出されても、それだけでは本当のことは分からないだろう。客観性に乏しいからだ。

2012-07-14 10:13:50
木下秀明 @khideaki

内藤⑨内藤さんが指摘する構造的な問題は、分かる人間にはすぐに分かるのに、構造の中にどっぷり浸かっている人間は、それが構造であることが分からない。だから問題を個人的なものに帰着させようとして本質ではない末梢的な事柄へと考察を進めてしまう。構造を見るためにはどのようなものが必要なのか

2012-07-14 10:15:54
木下秀明 @khideaki

内藤⑩僕はたまたま学校としては普通ではない特殊なところを遍歴してきた。養護学校も夜間中学も生徒に圧力をかけて勉学意欲を引き出す必要のないところだった。だから内藤さんが指摘するような構造的な問題がそこでは見られなかった。僕は普通の学校は外から見る立場になる。外からだから構造が見える

2012-07-14 10:18:32
木下秀明 @khideaki

内藤⑪宮台真司さんも批判する「みんな仲良し」教育の問題は本質的には同調圧力をかける事で精神的な奴隷化を進めることだ。しかし学校社会の構造の中にいる人間はこれが素晴らしい目標だと思っている。むしろそれに従わない人間が反社会的で秩序を乱す人間だと思っている。この意識を変えるのは難しい

2012-07-14 10:23:47
木下秀明 @khideaki

内藤⑫多くの人は人間は自由にすればわがままになり悪くなるだけだという思いを抱いているのではないか。だから秩序をたたき込んで自由を奪うことが教育として正しいと思っている。しかし本当の勉学意欲はそれでは育たない。それを育てないことが倒錯した感情を生みいじめにつながると僕は感じる。

2012-07-14 10:29:13
木下秀明 @khideaki

内藤⑬養護学校でも夜間中学でもそこでは生徒たちは学ぶと言うこと自体に大きな喜びを感じている。普通の中学校では考えられないくらい普通のことを学ぶだけで目が輝いてくる。教師の能力は同じなのに生徒の質と学校の質が違うだけで教育の姿はこれだけ健全なものになる。普通の学校でなぜ出来ないのか

2012-07-14 10:32:22
木下秀明 @khideaki

内藤⑭内藤さんのいじめ理論は、いじめの克服という実効性があるのはもちろんだが、教育の本質を語る思想を学ぶという点でも大きな成果をもたらしてくれる。教育の本質を歪めるからこそそれがいじめという形で現前化してくるのだ。この構造は教育以外のものにも見られるだろう。学ぶことが多い。

2012-07-14 10:34:49
木下秀明 @khideaki

内藤⑮内藤さんは全体主義を次のように説明する。「個人の自由よりも「全体」の価値が例外なく優先されます。「全体」に奉仕しない個人が価値を認めてもらえることなどありませんし、「全体」の利益に反するようなら、私たちの目から見て特別悪いことをしていなくても、あっさり殺されてしまうことも…

2012-07-14 11:23:04
木下秀明 @khideaki

内藤⑯「…珍しくありません。「全体」至上、「全体」が何より大事とされる…」この概念で「全体主義」を捉えれば、個人の自由を尊重する人々は抵抗するのが当然だ。「空気」が支配する日本の社会の特徴は、「全体主義」と呼んでもいいような特徴を持っている。個人にがまんをさせ犠牲にする社会だ。

2012-07-14 11:29:37
木下秀明 @khideaki

内藤⑰全体主義においては普通の人が弾圧する恐ろしい人間になる。これは、個人の能力よりも全体への忠誠心が評価対象になるからだ。個人が尊重される社会では普通の平凡な人で終わる人間が、全体主義の元では忠誠心を示すことで権力の上位にあがる。そして地位を保つために人々を弾圧する。

2012-07-14 11:49:20
木下秀明 @khideaki

内藤⑱能力のある人間は能力で認められるので他者を弾圧する必要がない。だが能力がない人間は、それで忠誠心を示して評価されようとする。だから全体主義の元では嫌なやつほど出世し権力者になる。その現実が、内藤さんの理論で構造としてよく分かる。いじめがエスカレートする要因でもある。

2012-07-14 11:52:18
木下秀明 @khideaki

内藤⑲内藤さんは「驚くなかれ17世紀のアメリカは、「みんなの決まり」を決めさせられ、違反すると反省を強要される、まるで小学校の学級会のような国だったのです」と書いている。この全体主義は、道徳の重視からもたらされている。道徳の押しつけは心のコントロールをしてくる。自由を押し潰す。

2012-07-14 11:56:36
木下秀明 @khideaki

内藤⑳道徳の強化は全体主義の強化につながる。それはいじめの解決には役立たないどころか、全体主義を強めていじめを肯定する心性をさらに強める。道徳に違反し、秩序を乱すものは弾圧されて当然だという心性を生む。17世紀のアメリカのように。そして現代日本も道徳の強化に向かう社会になっている

2012-07-14 11:59:17
木下秀明 @khideaki

内藤21:全体主義に関する次の指摘は重要だ。「多くの場合、全体主義に取り込まれた中間集団では、集団全体が個々人に過剰に参加を強制するようになり、個人に対する集団の自治の力を強めます。そしてその中で参加者たちは、「公」や「全体」に身を捧げることの熱狂と、かつてなくお互いの…(続く)

2012-07-14 14:54:24
木下秀明 @khideaki

内藤22:「…(続く)お互いの心と心が密接する環境にアテられ、すっかり「盛り上がって」しまいます。ただ単にみんなが盛り上がってしまうだけならいいのですが、それだけではすむはずはありません。と言うのも、そのように不自然に心が近づきあった状況では、適度に距離を置きあっていた環境では…

2012-07-14 14:57:03
木下秀明 @khideaki

内藤23:「…(続き)表面化することのなかった妬みや悪意がむき出しのまま解き放たれてしまうからです。」全体主義が、人間をむしばむ地獄の環境を作る恐ろしさがここには語られている。それは実感としても分かるし、論理的帰結としても理解できる。個人の心を殺すというのは大変なことだ。

2012-07-14 14:59:30
木下秀明 @khideaki

内藤24:普通の状態では個人は心を失わない。それを熱狂の渦の中で心を麻痺させて失わせるのが全体主義だ。熱狂の方法はいろいろある。音楽や踊りを使った儀式などは効果がある。みんなが熱狂しているときに、自分だけ冷めているのは難しい。全体主義に徐々に心が蝕まれていく。抵抗は難しい。

2012-07-14 15:01:29
木下秀明 @khideaki

内藤25:全体主義による熱狂は合理性がなく狂っている。冷静に考えればそんなものに価値がない。だから冷静な者がいれば、自分たちが価値のないものに熱狂していることが分かってしまう。まるで自分たちが価値がないといわれているように感じる。それが妬みを生み、憎悪と悪意で心を満たすようになる

2012-07-14 15:03:10