〔AR〕その7

東方プロジェクト二次創作SSのtwitter連載分をまとめたログです。 リアルタイム連載後に随時追加されていきます。 著者:蝙蝠外套(batcloak) 前:その5(http://togetter.com/li/325450) 続きを読む
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BIONET @BIONET_

「数年前から、幻想郷内での紙の流通は格段に増えた……とはいえそれは、単純に生産量が増えたわけではないからねぇ。迂闊に増産しようとしたら、必要以上の間伐や採取をしなければならなくなる」

2012-07-13 23:38:51
BIONET @BIONET_

閉鎖空間であり、外からの物資の流入量も不安定である幻想郷において、資源を乱りに取ることは許されない。 ましてや、ここは森羅万象に妖精や精霊、八百万の神が住む世界である。乱獲などしようものなら、自分達の首を絞める前に、荒ぶる自然によって首をねじ切られることを、人々はよく知っていた。

2012-07-13 23:40:44
BIONET @BIONET_

「で、その原因はバイオネットの保存機能に由来するわけですが……私のように小説などの長文ならばいざしらず、なんでもないちょっとした言付けを保存するためにわざわざ紙一枚を買い求めるということも結構あるのですよ。無論、再利用を推奨してはいるのですが、一度紙にインクを使ってしまうと……」

2012-07-13 23:42:03
BIONET @BIONET_

「そして、紙自体も、質の悪いものであったらすぐに朽ち果ててしまう。特に外の世界から流れ着いた品物は、長く持たない類のが多いわね。メモ書き程度ならまだいいけれども」 「紫様は、その点について何か言ってませんでした?」 阿求の質問に、藍は思案げに首を傾けながら答えた。

2012-07-13 23:42:30
BIONET @BIONET_

「それほど詳しくは聞いていないわ。ただ、将来的に場所に応じて端末数を増やすようなことはおっしゃっていた。現状、コミュニティに一律してひとつしか端末がない状態が、紙の保存という手間を要させる側面があるからね……」そこまで言って、藍は「おっと」と何かを思い出したような表情を浮かべた。

2012-07-13 23:46:10
BIONET @BIONET_

「すまない、順序が前後してしまったが、今日の用事はそれ絡みなんだ」 「どういうことです?」 「これだよ」 そういって藍は、袖の中をごそごそと動かしたかと思うと、そこから何かを取り出した。

2012-07-13 23:47:13
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「阿求、貴方にはこれを試しに使って欲しいの」 それは、何の変哲もない、阿求が毎日見ているような、巻物である。

2012-07-13 23:47:39
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「これは一見巻物のようだが、単なる巻物ではないわ。魔力文字の定着、保存性を強化したマジックアイテムよ。バイオネット端末で文字を転写できるのは勿論のこと、普通の紙に印字されたものを移すことも可能なの」 「ほう!」

2012-07-13 23:48:10
BIONET @BIONET_

阿求は、藍の説明を聞いた瞬間、感嘆の声を上げた。期待に満ちた顔であった。 「私の予想が正しければ、その巻物は保存性と再利用を両立させられる、ということですね? 保存期間はどれくらい増えたんです?」

2012-07-13 23:48:55
BIONET @BIONET_

現在、バイオネット端末が紙に魔力文字を転写した場合、最大でも半日程度しか保存されない。長い文章を手元に持ってこようとするほど、その制限がネックとなる。

2012-07-13 23:49:14
BIONET @BIONET_

「今のところ、一週間は何もしなくても残ることが確認できたわ。でもそれだけじゃないの。この巻物の印字部分には特殊な加工が施してあって、陽光を当てることで魔力文字を維持することができるのよ」 「それはすごい!」

2012-07-13 23:49:32
BIONET @BIONET_

つまり、定期的に光を当てさえすれば、魔力文字を半永久的に保存出来るということだ。さらに藍は袖口から、魔力文字を任意に消すことが出来るという、まじないの刷毛を取り出し、巻物と共に阿求へと手渡した。

2012-07-13 23:51:30
BIONET @BIONET_

「注意点として、普通に文字を書くように、墨やインクを使うのには向かないことを覚えておいて。この巻物の技術は、今後バイオネットの端末にフィードバッグされる予定だ。そうなれば、紙に依存しない文字の保存方法が出てくるかもしれないわね」

2012-07-13 23:51:41
BIONET @BIONET_

「でも、いいんですか? 私がこんなものを」 「紫様が、貴方ならば使いこなせると考えて寄越したものよ。ならば存分に使う事が、紫様のご意向に沿うことになるはず」 「……端末を押しつけられたときといい、あの方からの信頼はなんか怖いですねぇ」

2012-07-13 23:54:14
BIONET @BIONET_

「まぁ、そういうなよ。あの方の考えはさっぱりわからないけれど、その行動に嘘はないことは私が保証する」  藍は呵々と笑い、阿求の渋い表情を受け流す。 「そうだ、藍さん。ちょっとした相談なのですが」 「どうしたい?」

2012-07-13 23:56:14
BIONET @BIONET_

「素性を明かしていないバイオネット利用者に、手紙を送るということは、できるようにならないのでしょうか?」  阿求は、今後のバイオネットの機能追加を希望する意図で、そのような疑問を藍にぶつけた。 「ああ、出来るよ?」 「え!?」

2012-07-13 23:57:03
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そのために、何でもないような藍の返答には面食らってしまった。「あー、そうか。匿名機能周りはまだそれほど理解されてないのかな……ま、仕様とはいえ推奨される使い方とは言いがたいからねぇ。説明書を読んでも見落とすくらい簡単にしか書いてなかった気がする」「ど、どういうことでしょう」

2012-07-13 23:58:23
BIONET @BIONET_

「アノニマス……完全に匿名扱いにしていると無理だけれど、例えば匿名機能を利用しつつも、ペンネームなどの個人と関連づけられる情報を使っていた場合、そのペンネーム名義のアカウント……要は仮の郵便ポストのようなものが一時的に確保される。その状態であれば、後は通常と何ら変わりはない。

2012-07-13 23:58:54
BIONET @BIONET_

まー、その当たりのセキュリティ周りは、実際のところシステムのユーティリティ面でサポートできているとは言えないのだけれど……」「???」

2012-07-13 23:59:10
BIONET @BIONET_

横文字だらけな藍の言葉は、阿求にはさっぱり理解できない。一拍おいてそれを察した藍は、自分の悪い癖が出た事を自戒し、説明の仕方を変えた。

2012-07-14 00:02:14
BIONET @BIONET_

「そうさな。ペンネームの話から繋げるとだね。バイオネットには少数ながら、自分の執筆した文章を公開している者達がいるだろう? そういった者達が、バイオネット上で使っている名前があれば、それ宛に手紙を送ることは可能ということだ。素性を明かさなくてもそれは適用される」

2012-07-14 00:02:25
BIONET @BIONET_

「あ、ああ、なるほど……」 完全に概要を飲み下したとは言いがたいが、藍が自分にとって必要な情報を抽出してくれたおかげで、何となくのことはわかった。とにかく、阿求自身が望んでいるようなことは、実現できると見て間違いはないようだった。

2012-07-14 00:02:42
BIONET @BIONET_

「他に何か判らない事があったら、遠慮なく言っておくれ。今のアルファ版の段階では、そういった情報を拾い上げていくのも重要だから」 「はい、ありがとうございます……でも、今のところは大丈夫です」 「そう。じゃあ、いい時間だし、お暇するわ」

2012-07-14 00:04:43
BIONET @BIONET_

阿求は、はっと客間の外を見る。外は夜の手前まで暗くなっていた。思えば、藍が稗田家に姿を現した時点で、時刻は夕暮れ時であった。 「お送りします。今日はわざわざありがとうございました」 女中達は夕食の支度などで忙しいだろうからということで、阿求は玄関先まで藍を送った。

2012-07-14 00:05:32
BIONET @BIONET_

その後、程なく夕餉が済み、阿求は再度自室の机に向かう。 「さて……できるということがわかったのなら、次に決めるべきは……」 阿求は、机の上に置いてあった古紙に鉛筆の先を落としながら、思案する。

2012-07-14 00:06:59