ツイッター小説 お気に入りセレクト 2012/07/23

今日読んだついのべの中から個人的にお気に入りの作品を選んでみました。 ついのべ #twnovel とはツイッター小説、つまり140文字以内で書かれた短いお話です。
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泥辺五郎 @dorobe56u

妻は妊娠してから背が伸び始め、今では3mを越えた。産婦人科で見てもらったところ、お腹の中の子供が既に150cmを越えているから仕方のないことだと言う。「ついこの間まで私が見上げてたのにねえ」妻は嬉しそうに笑いながら足の裏で私の頭を撫でてくれる。だから私も幸せだ。 #twnovel

2012-07-23 00:12:34
トーリン @1thorin

#twnovel 暗い道を酔っ払ってふらふらと俺は歩く。向こうから来た似たような男と行き違う。振り返ると男は地面に倒れていた。もう死んでいた。懐の財布には千円札一枚と子供の写真が入っていた。自販機のボタンを押すと妙に大きな音がした。夜明けまで、ずっと俺は橋の上から河を眺めていた。

2012-07-23 00:17:59
あまたす @amatasu

男はな、人生の中で必ず女神に出会う。黙って野球中継を見ていた爺さんが、急に口を開いた。いいか、女神に会ったと気づくのは、会ってしばらく後だ。だがその時には、女神はもういない。いないんだ。そこまで言うと、爺さんはふっと静かになり、寂しげな目でまたテレビを見つめた。 #twnovel

2012-07-23 00:56:17
おはなし手帖 @ohanasitecho

【星印酒造より】 並ぶ瓶の中ではぜているのは冬から春にかけて集めた星の欠片です。夏の間、日の出から日没まで野生的な太陽へ晒して不純物を蒸発させます。すると星のきらめきは衝突を繰り返し、やがては融合し、うつくしい酒となります。現在、光量管理に努めております。 #twnovel

2012-07-23 10:51:50
銭喰 @zeniqui

#twnovel 人の成長とともに財布も大きくなる。始めは小銭入れで十分用が足りるが、そのうち二つ折り、長財布と大きくなって、人によってはセカンドバッグと見紛う大きさとなる。身長と同じくらいに財布の成長も止まるが、孫が出来たあたりで持ち主自身が財布と呼ばれてその大きさは最大となる

2012-07-23 12:50:37
layback @laybacks

レンタル彼氏を借りてきた。2泊3日で5万円。今週ずっと働きづめだった自分へのご褒美だと思えば決して高くはない。だが楽しい時間はあっという間に過ぎてしまう。返したくないな。僕だって帰りたくないさ。レンタル彼氏は悲しげな目で言う。嘘つき。延滞料金が目当てなんでしょ? #twnovel

2012-07-23 15:03:36
メモ。 @noctmemo

身体が氷で出来た女の子と、身体が宝石で出来た女の子が、ある時ケンカをする。ケンカに勝ったのは氷の女の子。ツンと澄ました顔で、彼女は冷酷に去っていく。綺麗な真珠の涙を流す宝石の女の子は、深い海の底で今日もしくしくと泣いている。海底に星座を作るとも知らないで。 #twnovel

2012-07-23 15:05:51
七歩 @naholograph

自動販売機を始めた。百円投入される。カーテンが開く。居間で繰り広げられる僕らの日常を外からご覧頂く。お客は意外に多かった。常連もいる。ホームレスが有り金をはたいて涙することもある。今日も販売中のランプを灯す。僕は、自分が売っている物の正体が、未だよく解らずにいる。#twnovel

2012-07-23 16:30:24
塩中 吉里 @shionaka_kiri

#twnovel 鋼鉄の円筒。赤熱の焼却炉。腐敗した食物が散らばる。メタンガスは立ちのぼる。来歴不明の汚物は垂れる。三日前にブロッコリーの森に生まれた小鳥。三日後に森が腐って枯れてしまうことを知らない。幹をくぐったり、蕾に頭を突っ込んだり。今は菌糸に絡まって虚ろな眼。

2012-07-23 19:17:29
すわぞ @suwazo

#twnovel 七月の夜の中の、降りしきる小雨の中の、音を失ったかのような街の中の、街灯の仄かなあかりの中の、古びた赤い傘の中の、しゃがみこんだ女の子の腕の中の、びしょ濡れの迷い猫の口の中の、ピンク色の舌が女の子の手をペロリと舐めて、泣き顔の女の子がくすぐったそうに笑う。

2012-07-23 20:48:09
日向日影🍊📖@文化系物書きVtuber(HUB) @hyuugahikage

#twnovel 僕の右足にボタンが現れた。意を決して押す。死さえ覚悟したが予想外に何も起きずボタンは消えた。安堵して眠ると翌朝ボタンが左肩に移っていた。右胸、背中、右耳の下、押すたび変わるボタンの場所。ゴールはあるのか、今日もドキドキしてボタンを押す。人生の唯一の楽しみ。

2012-07-23 21:33:05
永坂暖日 @nagasaka_danpi

今日もよく晴れていて暑い。あ、ちょうどいいところに自販機が。千円札を入れようとした瞬間、自販機がぶるっと震えた。「ちょっとあんた、いつでも冷たい飲み物が買えると思ってるでしょ」妙に迫力のある女の声。「そんな都合のいい女じゃないのよ」つり銭切れランプが明々と灯る。 #twnovel

2012-07-23 21:37:21
茶屋 @chayakyu

恋物語生産機械です。各パーツは下請けで作られ、指図書にあった形に組み上げていきます。まずは出会いがあって、すれ違いや迷走があったり、告白があって、ハッピーエンドが最後に乗せられます。歩留まりはかなり悪く、うまくいかない不良品が多数できます。 #twnovel

2012-07-23 21:52:45
いでゆのまち @ideimachi

#twnovel 都会で失くした魔力を取り戻したくて。私は十年ぶりの故郷をさ迷う。道で会った猫が鳴く。なでると何かいいたげにまた鳴いた…言葉が通じない。優しい風、緑濃い野山。昔あれほどお喋りした風景も、何も語ってくれない。私は思い知る。もう、子どもという名の魔法使いには戻れない。

2012-07-23 22:48:09
birdboiled @birdboiled

#twnovel このお店の宝石たちは、なんてきれいに輝くのだろう。店主がふうと息をかけて磨きあげると、どれも意味深げな空気をまとってしまう。「もとはただのガラスなの」店主はあいまいな笑みを浮かべながらわたしに告げる。「寂しい、わたしを見て、と囁くだけで、こんなに綺麗に光るのよ」

2012-07-23 23:51:16
歌種 @PM23564

#twnovel 地上へと降り注ぐ前に、雨の一粒一粒は何色の虹になるかを自分で決める。橙。緑。紫。いっとう好きな色を抱えたら雲から飛び出してゆく。ただし全ての光を拒んだ雫は、真夜中に揃って黒い虹になる。月の影にひっそりとかかる橋は、集会所へ向かう猫達に抜け道として重宝されている。

2012-07-23 23:56:55