ツイッター小説 お気に入りセレクト 2012/07/25

今日読んだついのべの中から個人的にお気に入りの作品を選んでみました。 ついのべ #twnovel とはツイッター小説、つまり140文字以内で書かれた短いお話です。
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とおる7th @windcreator

目の前にある黒い箱、その前面はつるりとテカっており、裏はデコボコと穴だらけだ。「あれから小人は現れませんか?」老婆が頷く。一年前までは箱の中に次から次へと小人が現れ、歌ったり踊ったりしたという。魔法が切れ、箱が沈黙して一年。僕はまだ、古の魔法の痕跡すら掴めない。 #twnovel

2012-07-25 00:23:43
@0Y0y0y00480

#twnovel 男は地球に帰る気を無くしてしまった。その星の一番の美女と愛し合ってしまったからだ。男は決断した。「僕と結婚してくれ。ずっとここで暮らそう」「嬉しいわ」と彼女は微笑んだ。「私、子どもを沢山生むわ。貴方の子孫を沢山残すの」彼女はそう言い、男をガブリと食べた。

2012-07-25 00:29:55
@1thorin

#twnovel 列車に揺られていると、いつのまにか対面にスーツを着た初老の男とサンダル履きで腹の出た中年女が座っていた。胸元にジェニーと書かれた名札が付いている。しばらくして見知らぬ駅で、男と、おぼつかない足取りの女は降りていった。男の手にはリモコンのようなものが握られていた。

2012-07-25 00:33:53
silf⛩️ @athene1020

濃い、甘い、香水の香りがした。後ろから髪の長い女性に追い越された気がして見回したが誰もいない。耳元で誰かがくすくす笑う。電灯にぶつかる蛾の音。「どうして笑うんだ?」誰もいない空間に問うと答えが返ってきた。「好きな人と帰るのが夢だったの。別れ際にはキスしてね」 #twnovel

2012-07-25 00:46:54
@saeba7

#twnovel あつはなつい。かのはかれじょを祭に誘っていた。だが突然の雨。祭は中止。かののなつい思いは萎んでいった。かのはかれじょに謝った、特別な事が出来なくてと。かれじょはううん、私達の毎日はいつだって特別なんだよ。そう言いかのの手を握り走り出した。なついあつはこれから。

2012-07-25 03:53:49
佐藤葵 @srpglove

僕のクラスの鷺沼さんは魔法処女なのだという。魔法処女とは、失われた処女膜を魔法で再生した人のことだ。みんなはそれを陰で笑っているけど、僕は笑えない。そうまでして膜を取り戻したい事情が、彼女にはあった。そのことを想うと胸が痛い。同じく、魔法童貞である者としては。 #twnovel

2012-07-25 06:51:20
オガタx世界卵 @eggofuniverse

#twnovel やつがやってきて世界をおれによこせというので、私はやつに我が頭を差し出した。勝手に使ってくれ、と。やつは私の世界を手に入れた代わりに、自分の世界を喪ったのだ。哀れなやつ。…私は、やつが落として行った世界を手に取り、今こうして眺めて、いい拾い物をしたと思っている。

2012-07-25 06:53:01
かなりひこくま @kanarihikokuma

僕は機械から産まれた。機械の街を愛してる。当たり前に。自分は自分で自分を作った、機械の海で、と言う奴もいるが。よく分からない。人間から産まれた、その記録もある、って年寄りもいる。人間生まれは街外れの丘の上に住む。背の高い建物だ。なぜか気位も高い。鼻も。 #twnovel

2012-07-25 09:33:24
ナコ@文学フリマ東京Q-01 @nakotic

羊雲が群れると牧羊雲がやって来ます。めえめえと鳴く足のない羊雲がふわふわと風に流されていってしまわないように、一つのところに集めておくのが仕事です。あんまり集めすぎると羊雲はやがて一つの入道雲になってしまい、羊雲がいなくなると牧羊雲も消えてしまうのです。 #twnovel

2012-07-25 13:30:36
birdboiled @birdboiled

#twnovel 通勤中のサラリーマンが昏倒する。スーツとシャツのボタンがはじけ飛び、サラリーマンの体は無数の原色の蝶になって飛び立っていく。はばたく蝶をそっと避けながら、ああ、夏だ、と別のサラリーマンは思い、ネクタイを緩めながら通り過ぎる。ビルの向こうには、入道雲が育っていく。

2012-07-25 13:36:06
よしのちほ @chiho_yoshino

恋は夏の日の花火と言ったのは、誰だっけ。かすかにドン、という音が聞こえる。雨で中止になった、去年の花火大会。あの娘を誘うつもりだった。何かが始まるはずだった。中止になったから誘えなかったなんて、言い訳だってわかってる。恋は夏の日の花火。僕は遠くで音を聞くだけ。 #twnovel

2012-07-25 17:37:53
れんちるーと @lenchroot

「マスターがロボットの体になれば可能です」。人間そっくりに違法改造した助手兼愛人ロボットは、結婚できないと告げてから、私そっくりのロボットに私の記憶データをコピーしていた。結局ロボット同士で結婚ごっこか?「古いボディは私と同じように廃棄処分しておきますから」 #twnovel

2012-07-25 20:42:01
すわぞ @suwazo

#twnovel 彼女は世界の始まりから終わりまで全ての歌を知っていた。幼い僕は彼女の膝であらゆる土地あらゆる時代の歌を聞いた。彼女は人知を超えた存在だったけれど、彼女なりの孤独があったのかもしれない。ところで彼女の歌う「世界の最初の歌」と「世界の最後の歌」は全く同じものだった。

2012-07-25 22:02:31
@K_Ichida

#twnovel その学校の花壇には、春になると美しいたんぽぽが咲く。校長から夢吐草を与えられた生徒がそこに夢を吐き出すのだ。夢をなくした生徒は勉強に精を出して大人になり、吐き出された夢は見る者もない花壇で美しい花を咲かせる。その街の大人はたんぽぽを見るとなぜか涙ぐむ。

2012-07-25 22:26:32
@mimimdr

156歳で死ぬまで、呆けた祖父は引きこもってばかりだった。口癖のようにチキュウに優しくしなさい、と言っていた。ある日僕がここはエウロパだよ?と言うと、お前にとってはここが地球だ、と返された。あの寂しげな目を思い出すと僕は何故だか地面に耳を当て星の声を聞きたくなる。#twnovel

2012-07-25 22:35:00
ひらばるまなぶ(平原学)@もの書き @chocolatesity

ぴんと伸びた両耳の先がちょこんと折れて数字の11に似ていたので、その兎を11と名付けた。毎日フィンガーキャロットを11本食べ、11時間ぐっすり眠る可愛い子だった。出会って11年過ぎたんだな。11みたく立てた二本の線香の煙を見つつ、あの子が元気だった頃を懐かしむ。 #twnovel

2012-07-25 23:11:00
ショウ @SHO_Y

その屋台の擦れた看板からは、辛うじて"魚すくい"の文字が判別できた。少年は水槽を覗き込むと、濁った水の中に魚影がたゆたう。「やってみるかい?」おじさんの声に少年は頷き、近くにいた一匹をそっとすくい上げる。勢いよく暴れる人魚は、すぐに紙を破って水中へ落ちた。 #twnovel

2012-07-25 23:13:02