「キョート・ヘル・オン・アース」破「ライジング・タイド」#2
「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーはブリッジ姿勢からの腹筋力で、バネめいてダークニンジャを跳ね上げた!「グワーッ!?」ダークニンジャは空中で回転、コントロールを取り戻そうとする。ニンジャスレイヤーは!?見よ!ブリッジを解いた彼は低く身を沈め、深くチャドー呼吸!「スゥーッ!」 25
2012-07-31 17:23:01ダークニンジャはニンジャスレイヤーの来たるべき攻撃を察知し、ベッピンの柄を握った。(((応えよ!おれの声に応えよ!)))カンジ・キルのフィードバックによって休眠に入っていた妖刀は、あるじの意志力に負け、不服げに震動を始めた。そして、あの金切り声を上げ始めた。キィィィィィ……!26
2012-07-31 17:30:50「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーは上空のダークニンジャめがけツヨイ・スリケンを投擲!殺戮弾丸めいたスリケンが空気を焼きながら飛ぶ!ダークニンジャは空中でイアイを構え、放つ!「イヤーッ!」 27
2012-07-31 17:34:16その瞬間、ダークニンジャとニンジャスレイヤーを結ぶ空気中に、花火めいた爆発が生じた。イアイ斬撃がツヨイ・スリケンを斬ったのだ!だが、見よ!さらなるツヨイ・スリケンだ!「イイイヤァーッ!」投擲!「イヤーッ!」イアイ! 28
2012-07-31 17:36:08再び花火めいた爆発!ニンジャスレイヤーはしかし三度目のツヨイ・スリケン!「イヤーッ!」「イアイ!」またも切り裂く!さらにダークニンジャは落下しつつ四度目のイアイ斬撃を繰り出す……ニンジャスレイヤーめがけ!「イイイヤァーッ!」ニンジャスレイヤーの 両腕がしなる!「イヤーッ!」29
2012-07-31 17:43:49取った!刃を!手の平で挟み、押さえ込んだのだ!ゴウランガ!シラハドリ・アーツ!「「ヌウウーッ!」」ニンジャスレイヤーは手を倒してダークニンジャをカタナごと組み伏せようとした。だがダークニンジャはニンジャ膂力を振り絞り、これに抵抗する。ベッピンは?……折れぬ!折れぬのだ! 30
2012-07-31 17:50:35「「ヌウウーッ!」」二者はベッピンの刃を……刀身の、淡い紫の光を脈打たせる邪悪なルーン漢字を挟んで、睨み合った。倒す……相手を、倒す。カラテだ。カラテあるのみ!ニンジャスレイヤーは祈りにも似た気迫で敵に対した。仇!討つ!そしてザイバツ・シャドーギルドを……ザイバツ……ロード!31
2012-07-31 17:59:40ロード?その時ニンジャスレイヤーの瞳によぎった怪訝さを、ダークニンジャは見逃さなかった。生死をかけたカラテのイクサにおいて、生ずるべくもない感情だ。ダークニンジャは唐突な違和感に襲われた。「イヤーッ!」蹴りを繰り出す。ニンジャスレイヤーは刃を手離し、バック転で間合いを取った。32
2012-07-31 18:10:57「……」二者はカラテを構え直した。ニンジャスレイヤーは訝った。ザイバツを滅ぼす……欺瞞のシステムを……そのシステムを維持するのがロード……ならば、ヌンチャクをなぜロードに渡した?……ダークニンジャも同様の不可解感に襲われた。互いに神器が無いのは何故だ?何故、みすみす手渡した?33
2012-07-31 18:14:51……これは、いかなる事であろう?認識をところどころ醜いツギハギめいて汚す、この不可解な矛盾は?思考するほどに道理が通らぬ。ニンジャスレイヤーは戦慄した。キョジツテンカンホー?これは、キョジツテンカンホーなのか? 34
2012-07-31 18:22:45010「彼らはある意味、非常に神聖な存在だ。我々よりも、より高く、より近い位置に在る」0011「導師」0110「君の懸念は尤もだ、ナンシー=サン。だが、その抵抗感こそ、我々を捕らえる肉の檻であり……」0「それは……」01「ワインを飲むといい。そしてタイピング修行を続けなさい」37
2012-07-31 18:38:080101「お目覚めかね」ナンシーの前に中年の女性が立っている。長い黒髪に、幾筋かの白髪が混じっている。なぜか一瞬、鏡像と錯覚した。だが顔かたちはナンシーと全く違う。でも面影は微かに?いや、似ていない。ナンシーはこの女性に覚えがあった。もっと年をとった彼女と接した覚えが。 38
2012-07-31 18:46:52「ドーモ、バーバヤガです」中年女性はオジギした。「ドーモ、ナンシー・リーです」ナンシーはアイサツを返した「何だか……おかしな感じ」「だろうね」バーバヤガは思慮深く頷いた。「その節はすまなかったね」「その節?」「そうさ」 39
2012-07-31 18:53:51二人は暗い海の真ん中に立っている。水位は足首まである。頭上では黄金の立方体が自転する。ナンシーは涙を堪える。バーバヤガは言った「あンたはあの時あの場に居合わせただけなんだ」「何の話?」「連れて行ってやろうか」バーバヤガはナンシーの目を見た。「連れて行ってやろうか」 40
2012-07-31 19:00:32バーバヤガの背後の水面に、巨大なあばら家が浮かび上がる。飛沫が舞い、ある飛沫は白い鳥に、ある飛沫は泡に、ある飛沫は0と1に姿を変えて、散ってゆく。ナンシーは首を振った。バーバヤガは微笑み、頷いた。「変な事を聞いて悪かったよ」水面が透明になり、足の下でチカチカと緑の光が瞬く。 41
2012-07-31 19:04:10「あンた、下じゃ随分手ひどくやられているようだが、あいにく手出しはできないんでね」バーバヤガは肩をすくめた。ナンシーは問うた「何をしに来たの」「用は無い。用が無くても、時に会いたくなるものさ」「……」「簡単だろ?その暗号」バーバヤガは言った。「……そうね」ナンシーは頷いた。 42
2012-07-31 19:10:5901001「まるでハイクね」「当たらずとも遠からず、と言っておこう、ナンシー=サン。聖四行詩は実際、ハイクの起源だから」導師はソファに腰掛け、コーヒーを口に運んだ。ナンシーは苦笑した。「唱えると力が湧いて来るってわけ?モージョーみたいに……」「ふふふ」導師は笑った「奥義だよ」43
2012-07-31 19:30:09導師はいつものように厚手のガウンに身を包み、リラックスしている。「君の口から今にも辛辣な見解が飛んで来そうだね」導師は微笑した。「そんな事ないわ」ナンシーは肩をすくめた。「そんな事無いけど……」「リラックスして。唱えて見ることだ。そのうち、わかる」「また、それ?」「そうさ」 44
2012-07-31 19:36:01導師はナンシーにワインを勧めた。ナンシーは受け取った。導師は快活で余裕あるユーモアの持ち主、清潔感のある丸刈りの髪に、首から下げたモデストなアクセサリー……「リラックスして。ナンシー=サン」「してるわ」「もっとだ。いずれ、わかる」「いずれって、いつ」「いずれさ0100101 45
2012-07-31 19:41:070100101101そう、だから、飛翔する際に彼らは聖四行詩を唱える。四つの行でひとつのIPアドレスを言い表す事ができる。赤、象牙、黒、紫は、ハッカーにとって神聖で重要な四色。コトダマ空間のエーテルの色。 46
2012-07-31 20:11:05四つのエーテル色は他色を従え、それを透明が統べる。……色。トーテム動物。浜、雪、桜といった、季節をあらわすエレメント。宇宙時代すら挫折の過去に葬った退廃の時代、彼らは埃まみれの古文書をIPアドレスに重ね、その先に何を見ようとしているのか?……「真実だよ、ナンシー=サン」 47
2012-07-31 20:37:44「赤い波/象牙の浜/黒い雪/紫の松」。256を超える、存在しないIPアドレス。ナンセンス……だがナンシーはあの時の記憶の影に触れた。あの時、存在しないIPアドレスは存在した。そこにフジキドが居た。……今回の場所には何がある?あの時と同じようにやる。彼女は目を開いた。 48
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