【しゅーにゃりあ~な!】震災以後 哲学とは何か 東はどう考えたか【前篇】
- L_O_Nihilum
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で、その決めつけを基盤において説明するから、「ソクラテスは寧ろ求められていたから殺された」と言わねばならなくなっている。しかし、「求められて」の意味が、「ソクラテスが(民に)求められていた」からなのか、「ほんとうはソクラテスが必要だと社会も感じていたから」敢て殺した、の意味なのか
2012-08-01 00:54:22これが判らない。もし仮に前者だったとすると、皆に求められていたからソクラテスは政府の恨みのようなものを買って、殺された、という意味で東が言ったことになり、これは原典の記述と一致する。
2012-08-01 00:55:20『ソクラテスの弁明』における、ソクラテスの死刑裁判は、その背後の経緯としては、ソクラテスが民に向けて国家の都合の悪いことを言いふらす(ようなことをした)ため、裁判関係者のメレトスらが画策し、宗教的・教育的罪をソクラテスにあてつけたことによって起こったものである。
2012-08-01 00:56:57また後者の意味だと少し複雑になる。なぜなら、社会は必要であり求められている人物であるにも関わらず殺していることになるからだ。つまり、ソクラテスを殺す、ということによって、何らかのソクラテスの仕事を国家がなしたことになる、ということが考えられていたという解釈を示すからだ。
2012-08-01 00:59:08しかし『弁明』のなかではそのような記述は見当たらない。東ほどソクラテス全集を読んだのなら知らない筈はないとは思うが(笑)、結局民を扇動したい政治家が、その思い通りにいかないように若者を教育してみえるがために、それを殺害しようという画策があって、この話は「クリトン」へと続くのだ。
2012-08-01 01:01:22だとすると東が言った意味合いは素直に、やはり前者であっていいことになる。では、前者の解釈を正しいと言っている東の解釈を、「ソクラテスは結局失敗したよね」といった人は、”必ずしも”東が今説明した当の状況を理解せずに発言したものだと、いう事が出来るだろうか?
2012-08-01 01:02:48ソクラテスが失敗した、というからには、ではソクラテスがどうしていたら成功なのか。つまり、ソクラテスの「目的」って、何なのか?これを、もう一度確認してみる。
2012-08-01 01:03:40Cf.永井均は、ソクラテスを国の政府が殺してしまったことは、失敗だった、と「転校生とブラックジャック」にて末部で明かしている。ただし、ここでの永井均の「失敗」は、ソクラテスが失敗した、と言う意味ではなく、ソクラテスを殺した国の、「失敗」であろう。
ソクラテスは若かりし頃、友人のカイレポンをして、デルフォイの神殿から神の預言を授かる。それがいう事には、「ソクラテスよりも知恵のある者はいない」とのことだった。カイレポンからこのことを訊いたソクラテスは、にわかにはその言ってることが信じがたかった。
2012-08-01 01:05:16しかし、信心深かった彼は、神がウソを言うことなどありえないとも考えていた。だから、それでは、なぜ、自分が最も優れているというようなことを神は言ったのか、その理由はなんなのか、と探索する活動を決意する。
2012-08-01 01:06:10(※)もうすでに気づくことは、ソクラテスは宗教裁判でも教育裁判でも呼び出されるようなほど信心を欠いた男でもなければ、教育をゆがめようとした男でもないのである。メレトスら判官の完全なるバイアス作戦だったのだ、あの弁明は。
2012-08-01 01:07:23で、そこでソクラテスは、何故自分が賢いなんて言われるのか?自分より賢い人間はいっぱいいるはずだ、とし、町中(というかポリス中)を歩いてそこに住む、一般に賢いと言われている人たちにインタビューの如く話し掛けながら、それを追い求めていこうとする。
2012-08-01 01:08:33例えば鍛冶屋に、例えば兵士、将軍に。なぜなら、鍛冶屋なら鍛冶について自分よりよく知っている。兵士や将軍なら、戦いの強さについてよく知っている。明らかに自分より賢いはずの人たちである(ソクラテスはそんな仕事や才能は持ってないと思っていたし、事実もってなかったとされる)。
2012-08-01 01:09:54(註;どうやらソクラテスはガチで無職だったのではなく彫刻家が本業だった、とかいう説もある。また、当時のギリシアでは市民は戦いのときには誰であれ武装することがあり、彼もまた兵役の経験があったりする)
2012-08-01 01:11:12しかし、対話を繰り返していくうちで、あることに気付く。つまるところ彼ら手に職を持っている人は、自分のやっている仕事については非常によく知っているが、「善い」ことや『立派』であること、「正しいことや正義」ということについては、知らないのに、知っているふりをしている、という事実である
2012-08-01 01:12:27そこに、ソクラテスは当初の神託の意義を見出した。ああ、つまり彼らは自分の知らないことについても知っていると思っているが、自分は、そうした自分の知らないことについては、素直に知らないという事を知っている(無知の知とはこれのこと)。だから、そこが神は優れている、と仰ったのだ、と。
2012-08-01 01:13:45で、そこから彼の活動が本格化する。そうだ、この方法で、人々に善や正義といったことがら(善美の事柄)を訊きだし、その無知を自覚させよう、そして皆自分のように賢く良く生きられる世の中を作ろう、という活動をし始めたのである。
2012-08-01 01:14:57それが神のための彼なりの最高の信仰であり、国家への忠誠であると言えるのだ。つまり、ソクラテスの目標は、「市民の無知を吟味し、その自覚によって進歩を与えて国家と神々に貢献すること」である。
2012-08-01 01:15:51さて、彼の活動は、成功しただろうか?…裁判で罪をでっち上げられて、殺されたソクラテス。これを失敗ととらえて何が悪いのだろうか。
2012-08-01 01:16:29僕が言いたいのはこういう事だ。「ソクラテスって失敗したよねー」と言っている人は、もしかしたらソクラテスの本をよく読んだりして理解していて言っているかもしれないのに、そのことを東は理解できていないと吟味もせずに決めつけている。そういう事だ。
2012-08-01 01:17:18そして、同時に、以上のことから、ソクラテスのやっていることは哲学の自己証明でもまた、無い。もしそれができるという事なら、ソクラテスは哲学とは何か、知っているという事になる。それが判らないからそのことを知っている、というのを無知の知と言ったはずだ。また、説得なんてもっとあり得ない。
2012-08-01 01:19:18どういうことか?ソクラテスの対話編「ゴルギアス」の前半を引き出してみよう。ゴルギアスは知恵の教師(ソフィスト)という仕事をしている。この仕事に興味を持ったソクラテスは、彼に問答を嗾ける。以下に、その内容を概略しつつ説明する。
2012-08-01 01:20:39ソ「ねぇゴルギアス、あなたは何という仕事をしているの?」ゴル「とっても素晴らしい仕事だよ」ソ「そうじゃなくて、”何”の仕事をしてるのって訊いてるの」ゴル「ああ、そういう事か、What do you doね、そうだ、私がやってるのは弁論術だ」
2012-08-01 01:22:08ソ「へぇー、弁論術っていうんだー じゃあ、弁論術ってどういう術?」ゴル「弁論術は凄いぞ、言葉を使って、人を説得することのできる術なのだ」ソ「え?でもちょっと待ってよ。例えば数学者は数学の事について言葉つかって説得できるじゃん、体育家は体のことについて)ry、医者は病気について)r
2012-08-01 01:24:18