ツイッター小説 お気に入りセレクト 2012/08/02

今日読んだついのべの中から個人的にお気に入りの作品を選んでみました。 ついのべ #twnovel とはツイッター小説、つまり140文字以内で書かれた短いお話です。
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silf⛩️ @athene1020

ぐうんと背伸びして夜空の端っこに掴まった。少しだけばさばさって振るうと星がぽろぽろ足元に貯まる。穴は後で開けよう。魔女から買った金の鋏で夜空をじゃきじゃき切り取った。ワンピース一着分くらい。今晩は月光のレース糸も確保。私の個人ブランドはネットでまた有名になる。 #twnovel

2012-08-02 01:33:29
くさがみ•R•シン @kusagamirin

#twnovel 食事中に死ぬと怨念が箸に宿る。その箸は使う者の手を押し潰すまでどこまでも重くなるという。その呪いに目を付けた健康機器メーカーと退魔師がコラボ。小さな呪符で呪い(重さ)を制御して「食事中でも腕の鍛錬が出来る箸。美味しく楽しくダイエット!」と売り出したら大ヒット。

2012-08-02 03:50:31
falsewhere @nowherenotime

#twnovel 左心房の中で発芽した蔦は、血流を遡上して肺に至り、そこで肺胞と充分に融合し癒着し成長した。やがて気管支を経過して口腔から顔を覗かせた蕾が、バラに似た大ぶりの深紅の花を一輪咲かせた。フラメンコダンサーのような彼女にぼくは恋をしたが、まさか花が本体とは知らなかった。

2012-08-02 06:29:11
メモ。 @noctmemo

仕事に行きたくなかったので、名も知らぬ駅で降りる。蝉時雨に埋もれた無人駅で私はひとり立ち竦む。懐かしい潮風の匂いに誘われて、陽炎の中を歩く。案山子が警備する砂浜には、貝殻で出来た切符が落ちている。会社行きの切符を見つけたが、私はゆったりと海の中へ進むことにした。 #twnovel

2012-08-02 08:59:35
すなお @Svnao

#twnovel 『ご家庭で不要になった…』耳慣れたアナウンスを聞きつつ、急いで荷造り紐で不用品を縛り外へ。幸いまだ我が家の前には回収のダンプは来ていなかった。家のドアを閉める時、私を呼ぶ声がしたが気にしない。これで部屋がスッキリするわ。『ご家庭で不要になった子供を回収します…』

2012-08-02 10:25:15
lammythepopstar @lammythepopstar

男が女の自宅で交わったのはその夜が最初だった。絶頂の後、彼は静かに彼女の身体から離れた。彼女は放心したかのように黙っていた。彼はコンドームを外してティッシュで包み尋ねた。「これ、燃えるゴミのところに捨てればいい?」女は答えた。「燃えなかったゴミとして捨てて」 #twnovel

2012-08-02 13:12:30
リュカ @ryuka511

音楽教師は世を忍ぶ仮の姿。彼女は偉大な音楽家を現代に召還し、音楽で世界征服を企む魔女である。音楽室のピアノが勝手に鳴ったり肖像画が笑うのは、墓地で眠る音楽家達が目覚める兆し。「クラシックは眠くなる」なんて言ってたら、真っ先に魔女達に目をつけられるから気をつけて。 #twnovel

2012-08-02 16:10:56
七歩 @naholograph

今日でレンタル一週間。返しにいこうと探すと案の定見当たらない。いつもそうだ。返却日には大捜索。さては外か。僕とあいつ、勝つのはどっち。#twnovel 借りてきた猫は大人しい。探すのも一苦労だ。あいつらにはしっかり躾がなされてる。「返却日には姿をくらます」延滞料、高いんだよな。

2012-08-02 16:46:18
すわぞ @suwazo

#twnovel 文字を入れる箱をもらった。透明である。縦10文字、横10文字、高さ10文字、計1000文字入る。書式を変えれば文字数上限も変わる。好きな言葉や文章を入れる。陽にかざすと光がやわらかく突きぬける。振ると竹林のような音がする。ときどき中に風を通してやらないと腐る。

2012-08-02 18:41:39
せら@hs @hswelt

寝静まるマンションの廊下に、点々と飴玉が転がっている。またか。息をついて踏み出した。途中、小さな女の子が屈んでこちらを見ていたが、見ないふりをして、でも不自然に飴玉を避けて歩いた。指でなぞられた、誰かのご遺体を示す白いチョーク線も避ける。お盆中に、線香を買おう。 #twnovel

2012-08-02 19:57:17
あまね @gyakumei

#twnovel 氷の惑星の極寒の空気を透明な異種族の肌が遠ざける。少し高い体温と潮騒のような鼓動が私を包み込む。その滅びた共生生物にヒトは似ているのだという。だが異種族のくれる栄養素と引き換えにできる特殊な酵素はない。それを知ってか、汗ばむ私を包む生物は不快な身動ぎを繰り返す。

2012-08-02 20:01:11
birdboiled @birdboiled

#twnovel 新宿の裏道を車でそろそろと移動する。陽炎の立つ路面に、どこからともなく痩せた鳩たちが集まってきて、ちっとも動こうとしない。仕方なく車を降りて追いたてていると、通りすがりの老人が手伝ってくれながら笑った。轢いてほしがってるんだよ。俺もお願いしたいが、迷惑だよなあ。

2012-08-02 20:50:21
リナ・フィード @iTerwtt

国際宇宙ステーションで取られた記念写真に実は何枚か、幽霊が紛れ込んだ非公開扱いの心霊写真があるのだが、全然怖くはないらしい。 なんでも無重力に慣れていない幽霊が宙でバタバタ手足を振ってみっともない姿で写真に収められており、逆に可愛くて萌えてしまうらしい。 #twnovel

2012-08-02 21:31:34
竹田康一郎 @tahtaunwa

#twnovel お腹を出して寝ていたら、雷の音に起こされた。慌ててお臍を隠したけど遅かった。雷がお臍を盗るなんて嘘。お臍からお腹の中に入るんだ。だって、お腹の中でゴロゴロ暴れてるもん。急いでトイレに飛び込んだ。「今日は、このへんにしといてやる!」と叫びながら雷が流れていった。

2012-08-02 22:05:36
いでゆのまち @ideimachi

#twnovel 「パパ、青空ってどんな色?」この地下都市しか知らない息子。本物を見せてやろうと次の休日、地表へ上った。機密服をつけ車に乗る。「真っ暗だね」星屑に満ちた空も、彼にはそう思えるらしい。この稜線を越えると…見えた。月生まれの息子が歓声をあげる。漆黒に浮かぶ、青い惑星。

2012-08-02 22:09:21
那由多 @lost_story00

天使と契約して、私は時間を遡る能力を手に入れた。能力を駆使して手に入れたものは数知れず、私は充実した毎日を送っていた。ある日、時間を遡れなくなった。慌てて天使を問いつめると、天使は笑った。「最初に言いましたが、対価はアナタの寿命です。ほら、あと三分ですよ、寿命」 #twnovel

2012-08-02 23:24:03
@transmitter01

空耳ならぬ空目をすることがある。綺麗なお店が、一瞬、廃墟に見えたり、黒い霧に包まれていたり。数ヶ月後に、その店が閉店したのを知った時は驚いた。こういうことは実は何回もある。困った体質である。霊は見えないのに。昨日、都内の大きなビルがそんな風に見えて…。 #twnovel

2012-08-02 23:40:25
夢名 七志 @mumei7c

「そう『もはや公衆では無い』高名な社会学者の言葉である。公衆浴場は取り壊され、公衆便所は撤去された。公衆電話は使い方を知る者すら居ない。公衆は終わった。私の公衆演説もこれで最後にしよう」演壇にした空き箱から降りると、風で転がった空き缶がカラカラと拍手を鳴らした。 #twnovel

2012-08-02 23:53:23