ツイッターノベル　「こころのないロボット」

三宅陽一郎MiyakeYouichiro @miyayou

ある山間の研究所に一台のロボットがいました。ロボットを作った博士は先月死んでしまい、ただ一人残されていました。ロボットは感情がずっと欲しいと博士に言っていました。しかし、博士にとっても感情というテーマは深く難しすぎるものでした。だからロボットは思考を持ち、感情を持ちませんでした。

三宅陽一郎MiyakeYouichiro @miyayou

（続き）それを憐れに思った神様はロボットに３つの試練を与えました。その試練を達成することができたら、感情をやろうと約束しました。ロボットの思考回路は興奮して、早速、試練の旅に出かけました。

三宅陽一郎MiyakeYouichiro @miyayou

（続き）最初の試練は深い森の中の珍しい鉱石を探すことでした。しかし、その途中、ロボットは山賊に襲われている子供をみつけました。ロボットは突進し山賊を蹴散らして子供を村に届けてやりました。だから、試練を達成することができませんでした。

三宅陽一郎MiyakeYouichiro @miyayou

（続き）次の試練は高い山頂に住む鳥の羽を見つけることでした。ロボットは険しい登山の途中で、怪我をしている老婆をみつけました。ロボットは背負って街まで届けてやりました。そこで、試練を達成することができませんでした。

三宅陽一郎MiyakeYouichiro @miyayou

（試練）最後の試練は湖の底の宝石を見つけることでした。ロボットは船の上で遭難している老人を見つけました。ロボットは船から抱きあげて岸まで届けてやりました。そこで、試練を達成することができませんでした。

三宅陽一郎MiyakeYouichiro @miyayou

（続き）神様の前でロボットは言いました。「すいません。僕は何一つ試練を果たすことができませんでした。」神様は言いました。「ならば心を与えることはぬ。だが、おまえは３人の命と心を救った。３人は深い心の傷を負うことなく帰ることができた。」それ以上、神様は何も言わず姿を隠されました。

三宅陽一郎MiyakeYouichiro @miyayou

（続き）心を得られなかったロボットでは、それでも文句ひとつ言いませんでした。彼の頭脳は明晰で。自分の使命が、過酷な世界の中で、人々の心を守ることだと悟りました。それ以来、ロボットは事あるごとに身を投げ出して、自分の能力を活かして人の命と心を守り続けました。

三宅陽一郎MiyakeYouichiro @miyayou

（つづき）ロボットに心は宿りませんでした。しかし心ある人が彼の側に集まり感謝しました。ロボットはその度に、心というものの素晴らしさをますます認識しました。ロボットが死んだ時、たくさんの人が涙を流しました。彼の葬儀には心ある人が参列し、それは美しい葬儀であったそうです。（おしまい）