周辺から見る60年安保(3)――「岸さん私たちの意見も聞いて! スターに聞く 三木鮎郎の街頭録音」(1960年)より
[paper] 今日はこのへんをひとつ. / 「岸さん私たちの意見も聞いて! スターに聞く 三木鮎郎の街頭録音」『週刊平凡』1960年6月8日号 http://t.co/XGwaqVwg
2012-08-06 01:06:19「五月二十日。――それは日本の運命を決するといわれる新安保条約が採決された日だ。これに抗議する十数万のデモが連日国会周辺に赤旗をなびかせているが、中でも印象的なのは新劇を中心とする芸能人の静かなデモ。いまや多くの映画スターまでこの政治問題に深い関心を示してきている」(p.46)
2012-08-06 01:07:01「そこで三木鮎郎氏をわずらわし、ふだんは政治に縁遠いといわれた芸能人に、安保問題をめぐる意見をきいてみた。あなたのスターはどんな考えでいるだろうか」(ibid., p.46)
2012-08-06 01:07:23「デモに参加した吉行和子/『二十日、雨の中をデモに参加したら、国会前には警察の輸送車に厚板を何枚もうちつけてバリケードがわりに並べてあるの。そのうしろに警官隊がずらりと――。私は安保条約改定には絶対反対!』」(ibid., p.46)
2012-08-06 01:08:19「五月二十日* 安保改定反対”の叫び声は、昨年秋頃から全国にとどろきわたっているが、いままで、比較的組織の外側にいた学者、文化人達が“安保批判の会”を組織して、積極的に反対運動をおこしたことは安保問題がいかに大きな問題であるかを示した」(ibid., p.46)
2012-08-06 01:09:48「五千人からの会員をもつこの会に、芸能人、特に新劇人の活躍はめざましい。中でもいままで、“意識が低い”といわれていた映画人までが、多数参加しバスから一般都民によびかけたりして、静かなデモに加わった」(ibid., p.46)
2012-08-06 01:10:42「このほか直接行動には加わらないが、反対の資金カンパにと、多くの大スターが色紙をこの会に送っている。/新安保条約可決後六日め〔5月26日〕、おりから国会へ“17万人デモ”がくりこむという日、*三木鮎郎氏に芸能界の人たちをルポしてもらい、その意見を聞いてみた』(p.46)
2012-08-06 01:11:39「デモの歌声をききながらまずフジテレビのスタジオへ。〔有馬稲子さん〕 三木『安保問題でだいぶ世間が騒いでいるけど有馬さんの意見は』 有馬『帰国早々暗いニュースばかりでしょ――。実のところまだ落着かなくてよくわからないのよ』」(ibid., p.47)
2012-08-06 01:13:54「ハナ肇氏を、控え室で――。 三木『ハナさんなんか、番組で社会風刺をやっているわけですが*』 ハナ肇『安保改定を自民党が強行したことにはすごく反対だ。新安保の内容は国民一人一人に不明確にしか理解されていないのに、これじゃコソドロ〔原文傍点強調〕のやり方だ!』」(ibid.)
2012-08-06 01:14:54「三木『全学連のやり方はどう思う?』 ハナ肇『僕はロカビリーに夢中の人より、はるかにりっぱだと思うんだ。若い情熱で純粋に行動するところなんか――』」(ibid., p.47)
2012-08-06 01:15:17「小林〔桂樹さん〕『改定反対の態度は一応はっきりしているんだけど・・僕には安保〔原文傍点強調〕とはいったい何だろうという不安が先にあるんですよ』」「彼は*俳優の一人一人に“反対意見”と“賛成意見”をはっきりきく会をもったらと、俳優クラブに申し出たこともあったという」ibid.
2012-08-06 01:17:07「撮影所の食堂・・・・・若い青年」「『ぼくは新安保に賛成なんだ。まだ一般国民に、新安保がどういうものだかよくわかっていないんじゃないか――それなのに岸さんは疑問の点をうやむやにしたまま通してしまったんだ。それで実際以上の反対意見を誘発してしまったんだ』」(ibid., p.47
2012-08-06 01:18:00「花籠部屋の“花籠チーム”バッター若秩父」 「若秩父『政治の話? 本当はオレ大好きなんだがなアー。安保のことはよう分らんよ。オレ達や、国技館のなかにいたんだからなア、相撲とっている間は読まず聞かず、見ずさ』」(ibid., p.47)
2012-08-06 01:18:35「三木『では岸さんをどう思う?』 若秩父『岸さんがアッという間に可決してしまったとブウブウいっとるな、みんな。オレは世界を平和にしてくれる方の味方になるよ』」(ibid., p.47)
2012-08-06 01:18:52「羽田空港で、大阪ゆきの機を待つ・・・・・永六輔氏 永『いまは、一人でも多くの人がデモに参加することだ。映画スターに“安保改定反対”を話すと“ぼくも同感だ、*しかしファンもあることだし*”といって積極的な活動にはうつらない。彼らに“ほんとうの人気を得てくれ”といいなるさ」ibid
2012-08-06 01:20:34「裕次郎が“ぼくが戦死してもいいですか”とよびかけてみるといい。下手な代議士よりよほど影響は強いはずだよ』。と、彼は映画スターの実行力のまずしさを嘆いていた。しかし一方では、『政治意識と人気は反比例する』という芸能界のジンクスもあり、一概にそうと言いきれないようだ」(ibid.)
2012-08-06 01:21:43「〔コロムビア・トップ、ライト〕 トップ『いやァなにしろ安保問題はむずかしいよ。全学連の学生さんもたいへんだよ。ぼくだって、もし学生だったらやるかもしれないね。国民がこれだけさわいでいるんだから、岸さんは退職すべきだな』」(ibid., p.48)
2012-08-06 01:22:56「リハーサル中のヨネヤマ・ママコ」 「ママコ『困ったなあ、わたしわからないんだ。安全保障っていうけど、自分の安全保障を考えるのだってたいへんなんだ。』 ママコ『私たちだって二年の契約結婚でしょ。国と国で十年の安全保障なんて考えられないよ』」(ibid.,p.48)
2012-08-06 01:24:04「〔大藪春彦〕 『言論は無力だよ。とにかく岸さんは生命の危険を感じないからあんなヒデエことがやれるんだ。嘆願、説得が無力なことはわかったろう。現代を生きるにはただ行動力あるのみだ』」(ibid., p.48)
2012-08-06 01:24:52「あちこち馳け歩いて、最後に三木鮎郎氏は、国会前に行進する全学連の旗の波をみながら、『こうして、じかに皮ふで感じていると、何かしたい、何かしなければ、とせきたてられるような気がする』」(ibid., p.48)
2012-08-06 01:25:33「『岸さんは、*今日会ったこれだけの芸能人達、それも右でも左でもない芸能人達のこれだけの反対の声をきいても、やっぱりそういうだろうか――。”岸さん。””ふだんなにも云わない人達までが、必死になってこれだけ叫んでるんですよ、よく耳を傾けて――”と心からいいたい』」(ibid.)
2012-08-06 01:27:19ちなみにウィキペディアによると、週刊平凡誌は、ちょうど1960年に発行部数100万部を突破したそう。http://t.co/u938MGsL
2012-08-06 01:41:57